東北ロード1700キロ 8月6日 新潟県加茂市知野さんの田んぼ | |
十日町市中里を出て関越自動車道を北上、加茂市を目指す。
しろくまコシヒカリでおなじみ、新潟しろくま会特別栽培米研究会を訪ねる。
田んぼではこの会の中心的存在である知野さんが待っていてくれた。
ここを毎年訪ねるようになってから知野さんに会う時はいつもここの田んぼだ。
知野さんは稲作だけでなく桃などの果実の栽培も手がけている。
じつは稲作の肥料設計にはこの果実栽培で培ってきたノウハウがそのまま活かされている。
使用する有機肥料も元来は梨や桃の玉を大きくし甘みを増すために使っていたものを米に応用したもの。
これが新潟しろくま会特別栽培米研究会の稲作の「らしさ」なのだ。
さっそく中村くんが知野さんに質問をはじめる。
施肥のこと、とくに窒素以外のミネラルなどの微量要素について。
どのミネラルがどんな役割を果たしているのか?
まるで試験管の中で実験している化学反応、その出来事ひとつひとつを延々と話しをしている。
知野さんをはじめとするこの会の稲作とはこのような緻密な実験とそこで得たデータの集積が身上と言える。
田んぼと、どう関わるか?どう見るか?
これは生産者ごといろいろあるし、正解は一つではない。
とくに有機肥料を主体とした栽培方法を選んだ生産者の中には様々な考え方や関わり方に人数分のタイプがある。
つまり、ひとりひとりに思いや哲学、それに生活があるのだ。
ここがわかると稲作とは米とはとても面白い世界なのだ。
西に日本海。
東に越後山脈。
その間に広がる大蒲原平野の一角、
今日はようやく涼しくなったよ・・・と、知野さん。
心地よい風に吹かれながら、田んぼの薄暮をゆっくりと過ごした。
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画像上:大蒲原平野。
画像中:知野さんのコシヒカリ。出穂がはじまったばかり。
画像下:知野さん。
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東北ロード1700キロ 8月6日 十日町市中里 | |
毎年6月から8月には産地へ行く。
アンコメで販売している米の故郷をできるだけひとつひとつ訪ねることにしている。
田んぼを見、生産者とゆっくりと話しをするために行く。
とくに、それぞれが持っているそのままを感じとることを大切しているつもりだ。
8月6日〜9日の4日間東北を中心に周った。
今回は一人旅ではなく、南伊豆の若き稲作生産者中村くんも同行した。
米どころの稲作を勉強したい・・・。
自らの稲作に手ごたえを感じつつある今、そんな気持ちになったらしい。
そこで今回はタイプの異なる生産者、生産者団体を6ヶ所訪ねた。
初日は新潟からスタート。
魚沼コシヒカリの産地のひとつ十日町市中里地区。アンコメでは新潟魚沼中里コシヒカリの名前で販売しているお米。
アンコメではこれまでカントリーエレベーターから出荷されたお米についてやや懐疑的な感覚を持っていました。
しかし、ここのお米を扱いようになってからは、その考えを改めました。
なぜなら品質が半端なくいいこと。もちろん食味が素晴らしいこと。
なにより収穫されてから2年近く経過している22年産(当店の在庫)であっても、その品質にまったく変化(低下)を感じないからです。
ここのお米はこの中里地区で栽培されたお米の中で基準を満たしたお米だけが
カントリーエレベーターに集められるそうです。
そのためにすべての生産者のお米の品質を個別に検査するシステムもあります。
その選ばれたお米をDAG(Dry Air Generator)というシステムで乾燥しています。
これは従来の火力乾燥ではなくエアコンのような機械によって瓶と呼ばれる米乾燥用タンク内に空気中の水分を除去し乾いた空気を送り、ゆるやかに乾燥する方法です。
こんな風にいうとDAGがいいように思えますが、
現場の担当者曰く、DAGがお米の品質を良くし、美味しくしてくれるわけではないこと・・・。
あくまでも栽培段階で良質なお米が生まれ、その品質と美味しさを守るのがこの仕組みなのだと・・・。
そこでさっそく田んぼへ。
田んぼを見る時は、まず最初に全体感を見る。
風景の中に違和感がなければ概ね良好。
とくに畦周りがきちっとしていると緊張感がある。
ここの田んぼはまさにそんな風。
反収で7〜8俵。理想的。
こんな棚田地帯ながら水周りはすべて一枚一枚管理できるように蛇口式。
しかも水位も自動でコントロールできるハイテク装置付き。
さすが魚沼!まさに「田園」調布でありました。
稲(コシヒカリ)はちょうど出穂しはじめたところ。揃うのは14日頃。
そこから約45日で収穫とのこと。
栽培から調整乾燥、出荷までの産地にできるすべてのことがハイレベルだとこんなにも品質がいい。
中村くんにとってどんな風に感じただろうか?
農協という組織だからできる生産システム。それを最大限活かして勝負しているこの感じ。
いわば中村くんのようなインディーズ的農家の対極にある稲作の姿の典型。
きっと刺激的なひと時だったにちがいない。
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画像上:中里地区のコシヒカリ。ちょうど出穂しはじめたところ。
画像中:田んぼの水位を自動でコントロールするハイテク装置もあった!
画像下:これがDAG(Dry Air Generator)の内部。まるでSF。秋にはこの中がお米(籾)でいっぱいになる!
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鋳物の釜 | |
南部鉄器のごはん釜、入荷。
分厚い鋳物製(南部鉄器:及源鋳造製)故に蓄熱力もある。
及源鋳造 南部ごはん釜
スイハニング=アンコメ的炊飯道楽の意 |
夜明け前。 | |
炊飯とは煮る、蒸す、焼くの複合加熱・・・。そう学んだ。
ものの本によれば現在の炊飯方法、すなわち「炊き干し法」が定着したのは江戸の中期。
それ以前は姫飯(ひめいい)さらにそのルーツを辿ると奈良時代の固がゆ(かたがゆ)であったという。
つまり、水分の少ないおかゆ状のものが、現在のご飯のルーツである。
今日は登呂で米の煮炊きを行うと聞き勉強しに行ってきた。
蓋のない台付甕型土器の周辺に薪を設え米をゆっくり煮ていく。
ぶくぶくと気泡が土器に満ちていく。
それらがだんだんと落ち着いてきたら完成。
煮炊き担当の方の説明によれば、
赤米ベースにほんのわずか白米をブレンドした米をきちんと水に浸し下準備をした後に塩を入れて調理されたとのこと。
これは、ごはんというより「固がゆ」だ。
しかしたいへん風味も良く、美味しくいただいた。
さて、問題はここからだ。
はたして炊飯夜明け前、いやそれよりはるか以前の登呂の住民はどんな下準備をしていたのか?
いや搗く以外の下準備なんてなかったかもしれない。
ここから、またもや空想がはじまる。
湯の煮立った土器に生米を放り込む・・・パスタみたいに。
あるいは少し炒ってから水を入れて煮込む・・・パエリアみたいに。
技術が洗練される以前の黎明期、つまり夜明け前の試行錯誤を知りたい。
9月にはいよいよ実験が待っている。
まさに気分は夜明け前なのです。
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画像上:台付甕型土器による煮炊き。
画像中:こんな飯となる。筆者的に表現するなら「赤米三分搗き固がゆ」である。
画像下:籾の状態の米を臼と杵で搗く。籾は箕で振るって選別する。作業しているのは筆者です。 |
満月の前の晩。 | |
夕餉の後、風呂に入り、新聞を読み、
カッターで鉛筆を削る。
明日の準備をやってから水を飲む。
寝ようと思ったけどMacの電源を入れる。
デスクトップにはお月様。
窓の外にも満月。
いや、満月は明日の晩か。
来週月曜日から泊まりで産地を巡る。
毎年恒例の東北ロード。
初日は新潟、そして山形庄内、山形内陸を経て福島会津へ至る。
貴重な情報交換の時間。
今回は先週土曜日に行った南伊豆の若き稲作生産家と一緒にこのロードに出ることになった。
いろんな地域のいろんな稲作を見たいのだそうだ。
全部で6〜7カ所の田んぼを一気に巡る。
来週も天気にな〜れ。
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南伊豆の田んぼへ。 | |
南伊豆の中村くんの田んぼへ藤枝の有機稲作生産家松下さんと行ってきた。
昨年から販売をはじめた南伊豆中村さんのお米、その24年産の稲の生育状況を見るのが目的。
じつは昨年、稲作の師匠である松下さんにその作りをこっぴどく酷評されたこともあり、
今年は春先から松下さんにアドバイスしてもらいながらここまでやってきたのだ。
午前9時現地到着。早速中村さんの案内で田んぼ一枚一枚見て歩く。
最初は無農薬の3枚の田んぼ、ここでは3枚とも異なる抑草の実験がなされていた。
代掻きの回数とタイミング、糠を蒔くタイミング、等々。
それによって3枚とも雑草の状況が異なる。つまり繁殖具合が異なる。奥側の一枚はかなり抑えられていた。
早速師匠が「なぜこうなったのか?」について分析していく。それが来年のための一手となるからだ。
最後に一番見晴らしのいい中村くん自慢の田んぼへ行った。昨年とは雲泥の差だった。
昨年は葉色は斑で草も多く、何もかもがスッキリしない混沌とした風景だった。
それが今年は葉色もよく揃っている。草もあるけど邪魔になるほどの量ではなく、
なにより一見してスッキリとした風景は心地良かった。
— まずは無農薬とかいう前に、この田んぼで今ある道具と技でできる「ちゃんと」をやってみました。
松下さんも僕もその言葉を聞いてホッとした。
なぜなら、まず足下の田んぼを見て徹底的に観察すること。
そこで色々な実験(除草剤を使うことも含め)をやりながら、この田んぼの性質や力量をきちんと把握すること。
それがわかると何をどうしたらいいのかが自ずとわかってくる。
じつはその積み重ねを続けていくとで最後には農薬がいらなくなってしまうのだ。
最初から「無農薬ありき」を否定するわけではないが、農薬の力を知ることもじつは大きな学びになる。
それを知ることで「使わなくても同じ作用をする何か」の発見がある。それも「この田んぼ」限定の方法が。
その気づきが何よりも大切で、そのためにまず標準的な方法で「ちゃんと」をやってみることはスタートラインにつく作業だと感じている。
収穫前にもう一度行くつもり。
楽しみがまたひとつ増えました。
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画像上:ちゃんと、をやってみた田んぼ。ちょうど出穂。
画像中:師匠と延々と会話する。
画像下:実験田、ほぼ草を抑えている。
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低温倉庫の片隅で | |
長期貯蔵実験している巨大胚芽米カミアカリ。じつは平成19年産。 たまに食べてその変化を確かめている。 長期貯蔵の米については僕が知ってる限りでは85年という籾貯蔵米のことを書いた昭和11年に農学博士近藤寿太郎氏が新聞に寄稿した論文を持っているのでご紹介しよう。
<以下抜粋>
余は八十五年、六十三年、四十九年、四十六年前の四種の古籾米を持って居る、もとより備荒貯蓄米の寄贈である、是等の古籾米を精細に研究したが、脂肪、ヴィタミンB、酵素が減少し、或は皆無となり飯は淡褐色粗慥で食味良好では無かったが、非常時の食用には勿論何等の差支なきを見た之は籾殻の御蔭であるが一歩進みて若し乾燥密封籾米であったなら八十年後の今日も恐らく大なる変化は無かったであろう、同時に三十年前の玄米も試験したが、之は乾燥密封せられて居った為めに変質が極めて少なかった。
かすかな期待をしながら遊んでいるというわけ。
安堵・・・。
この実験、いつまでやるのかは未定ですが、低温倉庫の片隅でできるだけ長く続けてみようと思っています。
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それぞれのコシヒカリ。 | |
今週から田んぼ周り再開。 午前は森町の堀内さんの田んぼ。
駐車場にクルマを置いて田んぼまで歩く。
堀内さんによれば8月18日頃に稲刈り。
午後は磐田の太田さんの田んぼへ。
株と株の間が広い、いわゆる疎植の稲だからすぐわかる。
これから残り一ヶ月、はてさてどんな米が実るのか?
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画像上:森町堀内さんのコシヒカリの田んぼ |
親子で土鍋スイハニング。 | |
今日はお店の前で土鍋スイハニング(ごはん炊き)のワークショップをやった。
たべくらべの後に参加された皆さんからこんな感想をいただきました。
・つや姫は甘くてやわらかい。 _
水加減データ:浸漬米重量比
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カミアカリパエリア | |
連休の日曜日、仲間が集まってカミアカリパエリアを囲む。
作ってくれたのは伊豆の森嶋さん。
モッフルで有名なあの森嶋さんの奥様だ。
スペイン料理店修行で培った技とカミアカリを熟知した森嶋さんならでは作品。
カミアカリは魚介風味にピッタリあうことを知る。
またひとつカミアカリの可能性を体感。
この米の可能性は無限だとまたしても知ることとなった。
森嶋さん、ありがとうございました!
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