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長谷の竈 製作記(6)

 

これは、2022年長野県伊那市長谷中尾集落にある再生された古民家につくったご飯炊き専用竈「長谷の竈」の製作記です。
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小谷氏が設計製作した燃焼の核となる竈本体に目途がついた後、11月14日、蛇紋岩の採取のため長谷に赴いた。この日は、僕と小谷氏のほかにwakkaagriの面々、地元行政の方、長谷地区の関係者の皆さんが多数集まる予定で、午前中に蛇紋岩採取、午後に改修中の古民家見学が予定されていた。ところがである。早朝静岡から走らせてきた当社軽バンが走行中にトラブルに見舞われ、静岡へ引き返すという失態をやらかした。しかし小谷氏の状況判断と途中借りた車での「走れメロス」ばりの走行のおかげで、お昼過ぎには現場入りができ、事なきを得た。

この日、長谷の竈製作においてもう一人、重要な人間を呼んでいた。それが「長谷の竈 製作記(2)」でも登場した田中氏その人である。彼の本業は土木関連のコンサルティングで、おもに土砂崩れなどの災害や防災が専門、そんなわけで地質学にめっぽう詳しく、蛇紋岩について聞いたのもそんな理由からだった。そこで今回、中央構造線のど真ん中、長谷という土地の地質学的な考察や蛇紋岩そのものについて、参加者に話してもらった。

「この石は深緑色で蛇の皮に似ていることが名前の由来なんです。光沢があって鏡みたいになっていたりとても綺麗な石ですね。ただし割れやすくて脆い一面もあり、ハンマーで叩くと剥がれるように割れるでしょ。つまり風化しやすくて、それが山崩れの原因にもなるんです。じつは地球表面にあるプレート運動によって、マントルの岩石が変化してできた岩石で、深い場所からここまで浮き上がってきた。そういう特徴から断層などの限られた場所でしか見られないわけです。ここ伊那の長谷もそのひとつで、地表面に現れているのは、この区間の約100mぐらいなんです。また保温効果があって、昔この地域では温石(おんじゃく)と言って炉で温めて布に包んでカイロにも使われていたこともあったそうです・・・」

南アルプスの眺望が美しい林道沿いに関係者が集まり、大きな手、小さな手で思い思いの蛇紋岩を拾うこと。じつはこういう過程も今回の釜戸作りには重要な要素として考えていた。それは単に蛇紋岩が美しい岩肌である理由や熱を蓄える性質が釜戸をつくる上で有利であることなどを知るだけでなく、この土地にある、彼らにとっての日常の中にある「ここにあるもの」を改めて知り、考えるきっかけとなってもらうためだった。(つづく)
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画像上:蛇紋岩と中央構造線の話をする田中氏。お腰の物は石ころ屋の証、マイ岩石ハンマー。
画像中:この山全部蛇紋岩!こんな露岩が林道沿いにある場所は、国内でも珍しいとのこと。
画像下:採取した蛇紋岩がコンテナ10杯、計算上ではこれをほとんど使うことになる。

2022年05月15日 [ 366hit ]
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