これは、2022年長野県伊那市長谷中尾集落にある再生された古民家につくったご飯炊き専用竈「長谷の竈」の製作記です。
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蛇篭のアイデアを持ってすぐに相談したのは小谷氏。10年以上の付き合いでカミアカリの活動はもちろん、竈づくりには欠かせない存在。というより、この人が居ないとそもそも作ることは到底できない。僕のアイデアを三次元化できる唯一の存在。過大評価のように聞こえるかもしれないが、本当なのだから仕方ない。小谷氏のやりとりはあまりに大量なので割愛するが、最終的にはこんなメッセージが返ってきた。
「作り終えて達成感はあるけど、その道中たるや絶望・・・笑」
結論は「作る」なのだが、その工法は難問だらけ。と、彼はこの段階で覚悟したようだった。事前にどこまで、どんなカタチに作っておくか?それをどのようにして運ぶか?そしてどのように仕上げるか?限られたスケジュールと技術力の中で、未知のものを作るために設計と製作管理全般を、いつものことながら小谷氏が担うこととなった。
この頃の僕は、この竈の製作の困難さを知る由もなく、頭の中だけにある竈を何枚か描くのみだった。しかし何枚描いても、イメージどおりに描けずにいた。それは当たり前のことで、いつもながら、現場で作りながら考え、考えながら作るをしたい人間だからだ。それが小谷氏にとって、とても迷惑なことと知りつつも、何かにつけ「ここにある感」を行動原理としている僕にとっては、もっとも譲れない部分であるから仕方ない。つまり小谷氏と僕は、行動原理が真逆。それが化学反応すると、見たことのないものが生まれる。はずなのだが・・・(つづく)
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画像上:右が小谷氏、左が蛇篭製作のために溶接を担うことになる松下氏。技術系職人の会話は延々と続く。
画像下:初期のデッサン。