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長谷の竈 製作記(2)

 

これは、2022年長野県伊那市長谷中尾集落にある再生された古民家につくったご飯炊き専用竈「長谷の竈」の製作記です。
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持ち帰った蛇紋岩を眺めながら、エッジ立つその岩石をどうやって竈にするかを考えながら、ふとこんなことを思った。

「そもそも蛇紋岩って素材としてどうなんだろう?」

こういう時は、スイハニングチームで僕の海外スイハニングに何度なく同行しアシスタント役をやってくれている田中氏に聞くが一番。彼の本業は地質のプロ、石ころ屋なのだ。連絡をしてみたら、即こんな返信が送られてきた。

「蛇紋岩が土木、建築分野では風化に弱くて亀裂がおおい、含水比が高く粘土化しやすい、わずかながらクロムや石綿を含む場合があるなど厄介者扱いされる岩石です。なのでオススメしませんな。。。伊那近辺で採取出来る岩石で使うとしたら片麻岩か玄武岩ですかね?中央構造線沿いだから強度的に良いものが少ないんですよ。。。」

せっかく良い素材だと思ったが「加工」はNGという結論。出鼻をくじかれてしまった。ほぼ引導を渡されたようなものと理解し、蛇紋岩を諦め、南信エリアで素材となる岩石を探す旨、施主の出口さんに連絡すると、きびしい回答が返ってきた。

「他の石はありえませんよ。他の石の調査は徒労です・・・」

稲作と同じで、何かを作ろうとした時、常に足元にあるものに注目し、そこでできる最適解を導くことが、どこにもない、ここにしかないモノを作る手法として信じ実行してきた。けれど今回は壁にぶつかった。そこで、しばらく放置することにした。忘れないくらいの距離感で時間を置けば何かアイデアが浮かぶことを期待したのだ。

梅雨の晴れ間の日曜日、オートバイを駆り河川敷を走っている時、ある物に目が留まった。それは蛇篭に入った岩石だった。堤防を守るために河原の石を網状の金属袋の中へ入れ幾重にも設置してある治水設備だ。それを見、あの方法ならば加工せずに蛇紋岩が使えるのでは?そんなアイデアが浮かんだのだった。(つづく)
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画像上:河川敷をひたすら走って河口まで、梅雨の晴れ間の日曜日のこと。蛇篭の写真はなぜか撮らなかった。
画像下:蛇紋岩を諦め、他の岩石を想定して描いたデッサン。

2022年05月09日 [ 960hit ]
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