これは、2022年長野県伊那市長谷中尾集落にある再生された古民家につくったご飯炊き専用竈「長谷の竈」の製作記です。
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2021年の冬、取引先のWakkajapan出口さんから来春できるというグループ会社Wakkaagriの新拠点に、竈(かまど)が製作できないかと相談をされた。聞けばそれは改修される古民家とのこと。そこで、その年の春、桜が満開の頃、長野県伊那市長谷中尾集落にある古民家へ現地調査へ赴いた。
築130年という伊那谷特有の切妻屋根の民家は、想像以上に大規模なものだった。ただ昭和期の改修もあって、オリジナルの姿は一見するとわかりにくく、説明をうけながら、ところどころに見え隠れする柱や梁、炉の配置などから、創建当初の姿を想像したのだった。
「ここが広い土間になる予定で、そこに竈を置きたいのです・・・」
130年の古民家、広い土間、人が集まる場、自然栽培による稲作、そしてこの人たち・・・ここで起きている様々な活動のことを想像しながら、この場にとってふさわしい竈とは何か?即座には導けない答えを、ぼんやりと考える。いつものことながら「答えは足元にある」を、信じつつ辺りを歩き廻ったのだった。
じつは長谷には、カミアカリの勉強会などで過去に何度か訪問した経験があった、その際に見た蛇紋岩の露岩を穿って作られた隧道(用水路用)を見たことがった。その隧道もさることながら、掘り出された蛇紋岩の緑色に光る独特の色合いがとても印象的で、小石をひとつ持ち帰ったことを思い出した。
蛇紋岩はどうかな?
2020年、伊豆で製作した御神火竈の時の手法ならば、この岩石はふさわしい素材になりうることを、容易に想像できたのだった。(つづく)
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画像上:2019年、用水路のための隧道脇で拾った蛇紋岩。
画像中:改修前の古民家の玄関。扉の向こう側が広い土間になる予定。
画像下:伊那谷の特有の切妻の大屋根。