旅する羽釜 8
2013年7月8、9日、フランスのシャンパーニュ地方にある中世の古城、フェール城で行われた能フェスティバルに参加し、羽釜スイハニング(炊き)、おむすびをつくってきました。これはそのレポートです。
旅する羽釜 8
一釜目、結びの神(白米)は無事スイハニング、そしておむすびができた。のんびりする間もなく、即羽釜洗い。
洗い方、田中隊員にその指示をする間もなく、すでに彼は水場で洗いに入っていた。
釜洗いが終われば即、二釜目巨大胚芽米カミアカリスイハニングの準備。
カミアカリ(玄米)が完全浸漬したかを米粒をひとつつまんで割ってみる。芯まで給水されていることを確認。
気温は30度以上(体感)であるから7時間近く浸漬しているから問題ないはず、
むしろ爆発的な酵素活性で食べた時の強い風味を期待した。
気がかりなのは炊き上りのタイミングをいつにすべきか?これが最後の課題だった。
Kさんが交渉し段取りしてくれたレセプション会場でのおむすびブース設営。
せっかくいただいたチャンス、ベストコンディションで食べていただきたい。
カミアカリスイハニングには蒸らしも含め50分、おむすびつくるのに20〜30分・・・。ちょっと時間が掛かり過ぎる。
そこで、おむすびをつくりながらサーブすることを考えた。
そのほうが、おむすびやごはん、カミアカリそのものにも興味持ってもらえるような気がしたからだ。
それはいつなのか?
能の舞台は19時スタート、21時頃にすべての演目が終了する(らしい?)。
そこで20時点火と決めた。
一釜目、結びの神(白米)スイハニング時に点火後の火のまわり方が若干もたついたこともあり、
薪を松のみに変更するべく田中隊員と二人、松林を歩きながら枯れ枝を拾った。
何せ35分間燃やし続けなくてはならない。足りなくなる憂いを払拭すべく集めに集めた。
点火までの間、始まったばかりの能の舞台を眺めた。
「羽衣」
鼓と笛の音が古城に響き渡る。
白夜の舞は時間と空間を超えて過去や現在、あの世かこの世かもさえも曖昧になっていく。
そんな印象をいだく不思議なひと時、これを幽玄というのか・・・。
国内でもこれだけの能楽師たちの共演はないとのこと。
もう少し見ていたいと思ったがすでに点火10分前、田中隊員と僕は幽玄から釜戸のある現場へ向かった。
飛行機の搭乗口で手にしたニッポンの新聞に点火、
その火が松の小枝をパチパチと音をたてながらコンクリートブロックでつくった釜戸全体に広がっていく。
火の勢いにあわせて少しづつ太い枝をくべていく。
むやみに火力をあげないで抑えながらパワーアップしていく感じ。
数回攪拌しながら9分で沸騰。
そこから六掛けくらいの火力で水がなくなり香ばしい香りが立つ時まで火力を維持しひたすら待つ。
20時35分、時間どおりにいい香りといい音がしてきた。
同時に火を引き、置き火で蒸らす、約5分後に集めておいた松葉を釜戸に放り込む。
松葉が一瞬燃え上がったらあとは待つのみ。
舞台から聞こえてくる「土蜘蛛」のお囃子をBGMに我々だけの薪能スイハニングを楽しんだ。
蒸らし時間に釜を持ってレセプション会場のおむすびブースへ移動。
20時50分、蓋を開け速攻で攪拌、カミアカリが空気に触れた瞬間、明るみを帯びた。
準備万全のむすすび方二人が熱々のカミアカリを塩でむすんでいく。
ひと口大の塩むすびが竹の器の上に並んでいく様が美しい。
舞台が終わると同時に大勢のお客様がレセプション会場にやってきた。
シャンパンを呑みながらおみすびをほうばるムッシュ、
セボンッ!と、にこやかにお友だちの分までテーブルに運ぶマダム。
イギリスから来てくれた日本人小学生は無言で6個食べたてくれた。
シャトーのシェフからは調理法を事細かく聞かれ、あたふたしながら相変わらずのブロークン英語で答えた。(たぶん伝わってないな)
そんなこんなであっという間に一升五合(2キロ)のカミアカリは消え去った。
ひと段落してみんなで記念撮影していたら
となりのブースにいたシャトーのスタッフの方から泡のお酒を手渡された。
シャンパーニュに来てはじめてのシャンパン。
ミッションコンプリート!ささやかな祝杯をあげた。
つづく
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画像上:カミアカリおむすび@フェール城。
画像下:白夜の舞「羽衣」
画像中:レセプション会場。
2013年08月03日 [ 5652hit ]