11月17日号 数値でみる松下×安米ヒノヒカリの巻
松下×安米ヒノヒカリ2002産が入荷してから1ヶ月が過ぎ、前回レポートしたとおり2年目にして期待を上回る出来ばえが功を奏してお客様の評判も上々です。すでにリピーターも出始めている状況で販売ステージに入っても好調を維持しています。今後もこの調子で美味しさを維持して一部の静岡県産に見受けられるような年明けに質が落ちる現象が出ないことを祈る今日この頃なのであります。
2001年春スタートしたこの「松下×安米プロジェクト」の基本コンセプトとして重要視する事柄が2つありました。一つは、松下くん自身が経験で培ってきた独自の無農薬有機栽培農業を体系化すること。そしてその方法と思想を伝え広げてくこと。そしてもう一つは、品質、味、価格の面で全国区で戦えるだけの米に育てること。とくに後者は安東米店が関わることの中では最重要課題と云ってもよいと考えています。
日頃ホームページをご覧いただいている読者のみなさんは小生が何かにつけてお米の味や食感について触れているのでお分かりであろうと思いますが、お米の評価はそれ自体が人に食べていただくために存在する以上「おいしい、おいしくない」は永遠のテーマだと考えています。それはたとえ無農薬有機栽培米でも例外ではなく、むしろ無農薬有機栽培米を広げるためにも、どうしてもこだわらなくてはならないことだと考えています。
この味や食感について安東米店のではベロメーター(舌で判断すること)を大切しています。大まかな選別こそ食味計と呼ばれる計測機器に頼ることもありますが基本は食べることだと信じています。ですから松下×安米プロジェクト米の判断もまず食べることでその良し悪しを判断してきました。しかし良い悪いだけでは今後の栽培計画の立てようがありません。そこで客観的な判断基準として食味計による数値化を試みています。数値化することで毎年異なる天候などの自然現象の影響を知ることや、そのデータをもとに栽培品種や栽培方法、有機肥料の選定と投入量、田植え時期や出穂期、登熟期など栽培計画の微調整などなど。米の質を数値データとして物理的に捉えいくことで、経験や五感を最大限活用する松下くんならではの農の信頼性を高めることができるのです。
では「松下×安米ヒノヒカリ2002」の数値データとはどんなものでしょうか?
食味計は基本的に5項目の成分を分析することで、おいしさというあいまいな評価を目で見える以下の5項目を数値にすることで客観的に判断する材料と考えています。(以下の数値は近赤外線分析装置を組み入れた食味計において玄米を計測したものです。また計測機種によっても数値は異なります)
- ・水分(含まれる水分割合を示すもので14〜15%が理想の値)
- ・タンパク(粘りに関わるタンパクの含有量を示すもので8.5%以下が理想の値)
- ・アミロース(タンパク同様粘りに関わるデンプンの含有量を示すもので20%以下が理想の値)
- ・脂肪酸度(米に含まれる脂肪の酸化を示すもので玄米の場合20ポイント以下が理想の数値)
- ・老化性(炊いたご飯の冷めても旨いを表すもので80ポイント以下が理想の数値)
「松下×安米ヒノヒカリ2002」の数値データ(玄米)
- ・水分 14.2%
- ・タンパク 7.1%
- ・アミロース 19.0%
- ・脂肪酸度 15
- ・老化性 77
どの項目も理想の数値をクリアしていることがわかります。ちなみに小生がベロメーター(舌で判断する)でテストした中で評価の高かったお米の数値と比較しても似たような数値であったことからもある程度信頼できる値であると考えています。冒頭で述べた一部の静岡県米に見受けられる年明けに質が落ちる現象(脂肪酸の酸化が疑われる)もこの数値データを見る限りでは起きないと思われます。
というわけで安東米店が関わって2年目にして予想以上の品質を成し遂げたプロジェクトは現在、「2002年がまぐれだった!」なんて云われないように、数値を含め資料を整理して「なぜ?あの品質ができたのか?」を検証しています。その結果をもとに来年の栽培計画を翌年早々から検討に入るわけです。
お客様のMさんからこんなメッセージをいただきました。
今年の松下×安米プロジェクト米は、去年のものと比べて、かなり味が丸くなったように感じましたがいかがでしょうか?頑固さが取れて、いい意味でマイルドになった感じです。でも、味の個性は残っていると思います。歯ごたえもしっかりですね。
さすが!米の味には鋭いMさんならではのメッセージ。今年の米はまさにこのとおりです。松下くんの野趣溢れる個性は感じますが、その個性にやさしさが加わったことでさらに磨きがかかった。そんなお米となりました。
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炊きたて
2002年01月14日 [ 3447hit ]