3月になってすぐの日曜日、久々にヤツに会った。言うまでもないね。このコンテンツの中心人物、松下くんのことだ。
出会ってから10年、お互いにいいオジサン年齢になったので「くん」付けで表現するのはもうやめようと思う。じゃあなんて呼ぶべきなのだろうか?「松下さん」って感じでもないし、「松ちゃん」というほど「超」が付くほどの仲良しでもない。
そこであいつが小生のことをなんて呼んでいるのか考えてみる。「あんた」だ。「あんたがったどっこさ肥後さ肥後どこさ・・・」のあんただ。面と向かって「長坂さん」とか「長坂くん」なんて呼ばれた記憶はほとんどない。ただ人前では「ナガサカがどうしたこうした・・・」と言っているのを耳にしたことがあるね。じゃあ小生もこのコンテンツではこれからヤツのことを「松下」と呼ぶことにしようかな。「いいよね、松下・・・」
その松下が3月3日の日曜日アンコメにやって来た。毎年恒例の今年の作付けプランを作るためにだ。
「田植えは6月からというのに、いやに早いね〜」そう思われる人もいらっしゃると思いますが、遅くとも3月初旬にはその年の大方の栽培計画、グランドデザインだけは決めておきたいのです。
そのグランドデザインが決まり次第、種籾の注文、どこの田圃でどのくらい、いつ頃に田植えしていつ頃稲刈りをするか、まず机上で綿密な計画を立てるのです。と同時に、田圃での作業も始まります。
約半年間休んでいた田圃は、モグラに穴を開けられたり、水の出入り口が破損していたり、畔が崩れていたり、デコボコだったりと、「新しいシーズンになったら、すぐに水を入れてすぐに田植えする・・・」というほど単純ではないのです。
とくに松下がこれまで培ってきた、この土地ならではの有機栽培技術の核心部は、田植え前のこの時期の整備の良し悪しが最も重要なのです。ですから、早い段階できちんとした計画を立て、それに伴って田圃の整備をきちんと段取ることが大事なのです。
しかしこれは、雪の降らない静岡だけの話しでしょうね。松下が来た日の前日に当店がお付き合いしている福島県喜多方市熱塩加納町(会津)の菅井さんに電話を入れたところ、「今日も、雪降ってますよ・・・今年は積雪が、まだ1メートルもあるんですよ・・・」
福島県内でも比較的暖かいと言われる会津でも、標高の高い熱塩加納町ではこんな様子で、じっさいに田圃の作業を始められるのは、4月下旬とのこと。
地球温暖化が進み、稲作の北限が北上していると言われている現在でも、これだけの違いがあるのだ。まあ早く作業できることが、けっして良いことと言っているわけではない。事実、一見厄介と思われる1メートルの積雪も、窒素肥料として微量ながら計算できる要素の一つでもあり、会津の、いや熱塩加納町の、いや菅井さんの田圃の稲が奏でる米の味、米の風味風合いを作るであろう重要な要素の一つに他ならないのだから。
松下は言った。
「会津にあって志太にないもの、志太にあって会津にないもの」
「菅井さんの田圃にあって俺の田圃にあるもの、俺の田圃にあって菅井さんの田圃にないもの」
「これにちゃんと目を向け、それがちゃんと解ると、何をすべきかが見えてくるんだ」
「足元の田圃が教科書なんだ・・・」
一年間ご愛読いただきましてありがとうございました。
今回で「アンコメ米作りプロジェクト2007版」は最終回とします。次回からまた新しいページにて「アンコメ米作りプロジェクト2008版」をスタートします。2008年の米作りもどうぞご期待ください。あッ!そうそう!2007年平成19年産のプロジェクト米は現在も好評販売中です。今シーズンは一年間切らさず販売できるくらいの在庫量ですので、どうぞたくさん食べてください。