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6月3日号 稲オタク

 田植えが始まった。
  この時期、その作業を手伝うわけでもないのだけれど、なんとなく気になって落ち着かない。そんなわけで5月27日と6月3日の日曜日、2週続けて田圃通いをした。

 「田植えの手伝いをしないんですか?」と、よく人に聞かれる。そんな時には、冗談まじりにこう言うことにしている。
「僕、泥の中入るのが嫌いだから・・・」
そう言うと、ほとんどの人が驚いた顔をする。本当は、もちろんそうではない。では、なぜ田植えを手伝わないのか?
じつは、松下くんの仕事の中身を知れば知るほど、手伝うことなんかできなくなるのだ。彼を見ていると、稲を育てる仕事は中途半端興味本位では通用しないことを知るのです。たとえ、そんな気持ちがなくても、週末だけやって来る人間が、このF1レースマシンのごときチューニングされた田圃に入るのは、彼の仕事の邪魔以外の何ものもないと感じるのです。あるいは素人が、そこに入るには、かなり無謀すぎるとも感じるのです。
例えば小生が松下くんの立場だったら、きっとこう言うでしょう。
見ているだけにしてくれ」
何年も通って解ったことは、小生の仕事は彼の仕事を直接手伝うのではなく、その仕事をよく理解し、それを伝えることが、もっとも大切な手伝い(仕事)なのだということが。

 松下くんの農場では、毎年5月の後半から6月中旬位かけての3週間くらいの間、ほぼ毎日田植えを行う。早生中生晩生の順番に品種を変え、タイミングをずらして行う。これは、ひとつにまとまっていない多くの散らばる田圃を、たった一人で作業するために、松下くんがこれまでやって来たスタイルで、今年の場合は、早生ではカミアカリ、中生ではヒノヒカリ、あさひの夢、晩生では山田錦。主にこんな流れで田植えをしていく予定でいる。

 こんな風に書くと、松下くんが眉間に皺をよせ、テンション高くして作業しているように見えてきますが、じつはそうばっかりではないのです。じつは、彼にも道楽はあるのです。だだしそれは、小生のような自転車ツーリングなんてことじゃなくて、やっぱり稲なのですが、こちらの稲は、眉間に皺を寄せない至って和やかな稲作、まさに稲道楽です。

 彼の稲道楽とは、簡単に言うと品種コレクションと言えばわかりやすいでしょう。これまで生まれた数多の稲品種をコレクションし、毎年それらを栽培しているのです。その中には江戸時代に生まれた観賞用の品種や、はたまた丈の長い品種、丈の短い品種、様々な色をした品種、早生や晩生の珍品種などなど・・・その多くは現代ではもう見かけることのない古い時代の品種が多いようです。また巨大胚芽米カミアカリのように彼自身が発見した突然変異から選抜したものまで、彼の稲コレクションはいったいどれくらいあるのか、じつは小生にも見当がつきません。(これらの一部は、店内に展示してありますのでごらんください)
それらの稲もこの時期に合間を見て、道楽用に用意した田圃の端に一列ずつ数本程度田植えをするのです。その時の彼の表情は、とてもにこやかでテンションを上げて田植え機を操作している表情とはまったく別物です。

 「あんたみたいな人、なんて言うか知ってるかい?」
稲オタクって言うんだよ」
小生はそう彼に言い残して、邪魔にならぬよう今日も早々に退散した。

 


この男、稲オタク。松下明弘。
この男、稲オタク。松下明弘。
2007年01月28日 [ 2339hit ]
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