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2006年度バックナンバー

1月10日号 緊急警報!

image 1月に入ってから暖かい静岡でも本格的な寒さがやって来ました。この頃になると決まって現れるのが、ご飯が急に美味しくなくなったという症状をおっしゃるお客様からのご相談です。同じお米なのに、ある日を境にどうしてこんなことが起こるのでしょうか?不思議ですよね。

 この症状は多くの場合、お米を水に浸す時間が足りないために起こる症状なのです。
「でもいつもと同じ時間浸しているのに・・・」
  じつはお米が浸水する時間は、水温によって大きく異なるのです。夏場(水温20度)1時間で良かったものが冬場(水温5度)では2時間以上必要なのです。場合によってはこれでも足りないこともあるのです。その例として、皮肉なことですが美味しいお米に人一倍敏感な「お米コダワリ派」の方に起こりやすい症状とも言えるのです。

 その理由は美味しいお米と評判の高い人気銘柄米を選んでいるケースが多いからなのです。とくに裏日本や標高の高い地域、東北地方産のコシヒカリを選ばれている方は要注意です。これらのお米は、細胞が緻密なゆえに水を取り込むための多くの時間が必要なお米なのです。はっきり言うと、美味しいと評判のお米ほど水の取り込みが「下手」な傾向があるのです。

 というわけで、本格的に寒くなり水道水の水が手の切れるような水温になったら、必ず2時間以上浸水してください。
「そんな時間はないよ〜」
そうですよね。忙しい現代社会でそんな悠長なことは言っていられません。そこでアンコメ流では、お客様にこのような緊急事態時に秘策をこっそりとお教えしています。

  • 秘策1 浸漬水にお湯(30度〜40度位)を使う。
    浸漬水を夏の水温にしてしまうという荒技です。この技は季節に関係なく急いで炊きたい時のテクニックでもありますね。
  • 秘策2 冬場の品種は「ひとめぼれ」
    「コシヒカリ」や「あきた小町」は水の取り込みが下手な品種ですが、それとは逆に「ひとめぼれ」は水の取り込みが得意な品種でもあるのです。多忙な方の厳冬期は「ひとめぼれ」という手もありますね。
  • 秘策3 最新のハイテク炊飯器
    最近話題となっている新型の炊飯器の多くは、浸水のための技術にかなり力を入れている傾向があるようです。この際、こういったハイテク炊飯器を購入するという手もありかもしれませんね。
    ※一般的な炊飯器の場合、早炊きボタンを押さなければ、最初の10分程度で温水による強制浸水をしてくれます。

 まあこれら秘策はあくまでも緊急避難的テクニックだと思っていただきたいのがアンコメ流としての本音です。夏は夏なり、冬は冬なり、その季節の自然な流れに逆らわず、ゆっくりと浸水し、できれば土鍋で旨いご飯を楽しんでいただきたいものです。

 

11月23日号 お米日本一コンテスト審査員体験記

 今年で3年目をとなる静岡県が行っている「全国お米まつりINしずおか」。その関連イベントで11月21日と22日の二日間で行われた「お米日本一コンテスト」の審査員のお役目を仰せつかりました。今回はその貴重な体験レポートです。

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リハーサル前に記念撮影。
この時はまだ余裕の表情でした。

 審査員として召集されたのは、全部で15人。日本穀物検定協会から3名、米・食味鑑定士から3名、一般消費者から6名、そして五ツ星お米マイスターとして私を含む3名というメンバーです。
21日14時 15名の審査員は会場のある静岡市駿河区にある静岡県コンベンションアーツセンター「グランシップ」に集合しました。今日は審査のリハーサルと第2次審査(機器測定)の視察です。
今年は全国から応募総数315品という昨年を上回る数の出品がありました。それらは第一次審査の書類審査をへて第2次審査(機器測定)を行い上位30検体に絞られます。機器測定では3メーカーの機器を使いその合計点数の高い順番で順位が決まります。
それらの作業が終了し発表されたのは夕方18時頃、我々が施設内にあるレストランで交流会を行っている最中でした。会場で配られた一覧表を見て皆同じように感じたのか、「山形県勢強いな〜」の声。それもそのはず過去2回の受賞者は圧倒的に山形県勢で、今年もまたその傾向が色濃いものだったからです。

 山形県10品、富山県4品、福島県3品、長野県3品、新潟県3品、静岡県3品、茨城県2品、岐阜県1品、群馬県1品(そのうち28品がコシヒカリ、ひとめぼれ1品、ササニシキ1品という内訳)

 22日9時 いよいよ上位30検体の中からトーナメント方式で予選、準決勝、決勝を行う本番です。審査員15名は3つのグループに別れ官能審査(食べ比べ審査)を行います。予選ではそれぞれのグループが手分けして5品の中から2品、準決勝では4品の中から2品を10分間で選び、決勝の6品を選ぶのです。
昨日のリハーサルの成果か、本番ではそれぞれの違いがはっきり判断することができスムースに審査できました。しかしどれも甲乙つけがたい素晴らしいお米で点数を付けるのがちょっと辛かったです。

 休憩を挟んでいよいよ決勝です。会場に張られたトーナメント表には決勝に残った6種類のお米が発表されています。そのうち、山形県勢が3品、面白いことに残りの3品は茨城県、群馬県、長野県という意外(?)な面々です。
運ばれてきた6つの検体の審査が始まりました。ここまで来ると全く差がないかなと思っていたら、意外にも香りや歯ごたえにはっきりと違いがあるのです。

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2次審査会場。
315品の米を食味評価装置で30品までに絞る。

 私はこのコンテストが始まる前に、自分なりにこんな基準で選ぶことを決めていました。それは、「普段使いのお米」という意識です。たしかに・・・香りが立ち、粘りも強く、旨み甘みを強く、キラキラと輝くようなご飯は、多くの方が美味しいと感じるはずでしょう。しかし、そんなこれでもか!というようなギンギンのご飯を毎日食べ続けられるだろうか?と私は少しだけ思うのです。
普段使いのお米とは、白飯としてお茶碗に盛られるだけでなく、お結びや、カレー、お粥にと日々その姿を変え生活に寄り添って存在しえるものであって、コンペティションのためにあるのではないのです。自動車で例えるなら買い物へ出掛け、子供の送り迎えをし、たまにドライブなんていう使い方するような。
そんな使い方の自動車にはきっとF1カーを使わない(使えない、もっとも買えないけれど)のと同じように、生活に根ざし、汎用性があり、それでいて少しは色気もあるような調和のとれた車を選ぶはずなのです。
私はお米もそうあるべきだと思っているのです。だから突出した何かがあることよりも全体の調和がとれていて自然な感じのするもの、派手ではないけど地味でもない。毎日の生活にそっと寄り添い続けられる。そんなお米が「普段使いもお米」だと思うのです。そんな個人的な基準を心に秘めてコンテストに望んだのでした。

 15分間で個々のお米を官能し評価シートに記入していきます。+1、+2、0、−1、−2・・・外観、香り、旨み、粘り、硬さ、5項目を自分なりに今までやってきた方法で個々のお米のキャラクターの輪郭を明確にしていきます。
キャラクターが明確になったところで、心に秘めた基準とその検体が近いか遠いかを考えます。
「普段使い・・・」
選ばれた検体の容器に貼られたシールの色を確認し、評価シートの項目に書かれている同じ色の最下欄、評価点を書き込む空欄に点数を記入していきます。評価の高いものから6点、5点、4点、3点、2点、1点。すべての点数記入し上位3検体に対するコメントを書き終えたところで、司会進行の女性がタイムアップのアナウンスを告げたのです。
30分後結果発表が行われました。それを聞いて驚きました。最優秀賞と優秀賞は順位こそ違え私が選んだ上位2品だったのです。さらに私が心に秘め「普段使いのお米」として選んだのは、なんと茨城県のお米と長野県のお米で私のとってなじみ深い地域のお米だったのです。もう一つの優秀賞には強豪山形県勢が入りました。

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こんなふうに配置されたご飯を食べ比べ審査する。
(リハーサル時に撮影)

 閉会式が終わり一息ついたところに、最優秀賞を受賞された方のお仲間という方に声を掛けられました。その方は満面の笑顔でこう言いました。
「我々の地域は長いことなかなか評価されない地域でしたから、こうやって評価をされてたいへんうれしいです・・・これから大いに励みになります!」と喜んでいた。
緊張感から開放され瞬間に、こんな声を聞いてこちらのほうがうれしくなってしまった。今まで光の当たらないところに光を当てるチャンスがこのコンテストにはあるのだと、その時にはじめてこのコンテストの意味を実感したのです。
担当者氏によれば、このコンテストは残念なことに予算の関係から今年で最後とのこと。どんな形にせよ、このコンテストの火を消さず何らかの方法で存続させる方法を模索してもらいたいものである。それは他でもない、全国にいる数多無名の稲作生産者達のためである。

 15時30分 会場を出て駐車場に向かって歩き始めると携帯電話が鳴った。電話は店からだった。どうやら配送注文と来店で店の中はショートしているらしい。ああ今日は休日前だったんだ。そんなわけでコンクールの余韻を楽しむこともなく営業現場に走ったのだった。

 

10月10日号 土鍋でご飯を炊く。【保存版】

image 「土鍋でご飯を炊く方法を教えてください・・・」
このところ様々な方からご質問を受けることが多い。過去に何度か書いた覚えがあるけれど、おさらいとしてまとめてみました。

 「炊飯とは、煮る、蒸す、焼く、の複合加熱でお米のベータデンプンをアルファ化することで・・・」炊飯のことを学ぶ時、たぶんこんな文言から始まるのです。
じつは土鍋に限らず、炊飯とは何か?を知ると、熱源が何でも(ガスや電気、あるいは炭、薪)美味しいご飯を炊く約束事はすべて同じだということを知ります。ただし、それぞれの方法にはそれぞれ便利なところと、そうでないところがあります。土鍋には予約タイマーや保温機能はないけれど、飯を炊くということをシンプルに理解でき、難しいテクニックなしに誰にでも美味しいご飯を炊くことができる。そして美味しいご飯が炊けた時、この上もない喜びを実感できる。土鍋炊飯をオススメする理由はここにあるのです。
ただし、土鍋で炊くことも大事ですが、それ以上に下準備がたいへん重要です。ここもしっかり覚えれば、「鬼に金棒!」あなたも今日から飯炊き名人です。

<土鍋炊飯の技>

  1. 米研ぎ(洗い)・・・丁寧は良いが、絶対にお米を割らないこと。(いいかげんが、いい加減)
  2. 水に浸す・・・品種、米質、季節、新米、古米に関わらず2時間以上。デンプン分解酵素(アミラーゼ)の活性を充分に行う。(寒い地方の方の冬季はもう少し長時間)
  3. 水を切る・・・酵素活性し不純物の出た水を捨てるための作業。ただし時間は5分以内(5合くらいの場合)、米粒が割れないように注意。
  4. 水加減・・・浸漬米(水を吸ったお米)重量と同量(1:1)の水が基本。新米、古米の区別なく、あとはお好みで調整。
  5. 炊飯水・・・軟水(硬度100以下)日本の水なら概ね良い。地域によっては硬度の高い地域もあるので要注意。
  6. 沸騰までの時間・・・10分以内、土鍋の場合熱伝導が悪いので最初から強火。カロリーの高い方のバーナーがオススメ。
  7. 沸騰後・・・炊飯容量や土鍋にもよりますが中火で3分から5分で消火。この時間を長くすればおこげができます。少しくらいおこげが出来るくらいが、むらのないアルファ化(デンプン糊化)の証。
  8. むらしまで・・・土鍋の場合、消火後も土鍋蓄熱力で煮る、蒸す、焼くを行い、余熱でむらしまで自動!でやってくれるのです。ここが土鍋炊飯の真骨頂! 消火後約20〜25分で召し上がれ!
  9. 保温・・・・攪拌後、土鍋ごとポットカバー風にバスタオルなどでくるんでおけば、かなりの時間暖かいご飯が食べられます。もっともこのようにちゃんと炊けたご飯なら、冷めても温かみのあるご飯になりますから、保温の必要は皆無ですが。
  • 富士市の小谷商店さんが画像付きでまとめていただきましたので、こちらもぜひご覧ください。
  • 土鍋購入のポイント
    ・肉厚で充分な重さのあるもの
    ・深さのあるもの
    ・炊飯専用で二重蓋のもの
    ・意外や意外!炊飯土鍋だけは、大は小を兼ねます。
    ・格好良いお気に入りを見つけること(さらにやる気が出ます)
  • 当店でも土鍋を販売しています。
    土鍋黒釉炊飯鍋3合用(大きさ約22×17.5cm 重量2800g 容量2300cc)¥5145
    ふっくら炊飯鍋黒大3〜5合用(大きさ約25×22cm 重量4000g 容量3200cc)¥7140

 

9月19日号 掛川での飯炊きワークショップ報告

image アンコメ店主にとって初講師デビューとなったNPOスローライフが主催する掛川ライフスタイルデザインカレッジのワークショップ「うまさ120%のご飯を食べる〜田んぼウォッチング&ごはん炊き」が、9月16日(土)キウイカントリージャパンさんを会場にして行われました。
心配されていた天気も、当日は素晴らしい秋晴れとなり、晴れ男との異名を持つNPOスローライフ代表井村さんのパワーと、鍛え抜かれたスタッフ皆さんの尽力のおかげで、初心者マーク講師(じつは雨男の異名も持つ・・・)のつたないパフォーマンスにも関わらず、なんとか参加者していただいた30人すべての皆さんに、いつも家で炊いているご飯より2割増し美味しい、ちょっとおこげのある香り豊かなご飯を炊いていただくことに成功しました。

 このワークショップの様子を早速ブログでアップロードしていただきましたのでご紹介いたします。

 

9月11日号 この秋、講座を持つことになりました。

image 人前で話すなんて性分でもない私が、どういう巡り会わせか講師なんていうお役目を与えられることになりました。しかもこの秋に5回ほど!正直なところ、かなりビビッてます。そんな依頼話を、講師経験のある先輩諸氏に相談すると、彼らは一様にこう言うのです。
「自分のためにおやんなさい」
よくよく聞いてみると、講師というのは、もちろん聞いてくださる方々のために話すことではあるけれど、じつは今まで溜め込んできた資料を整理し、自分の考え方をまとめる絶好の機会だというのです。また公で話すことは、曖昧だった情報も確認しなければならないし、業界だけにしか通用しない専門的な内容を誰にでも解るように表現すること、その一連の作業がそのものの有様を自らが客観的見つめることができるチャンスだというのです。
私は珍しく素直に「なるほど!」と思いました。そんなわけで以下のスケジュールで講座を担当しますので、お時間のご都合のつく方、お近くの方は冷やかしついでに、ご参加いただきますようよろしくお願いいたします。

  • 9月16日(土)9:30〜14:00 
    ワークショップ「うまさ120%のご飯を食べる〜田んぼウォッチング&ごはん炊き」
    主催 NPOスローライフ掛川
  • 10月28日(土)と11月18日(土)13:00〜16:00
    今日から始まる新ごはん生活(全2回)
    主催 朝日テレビカルチャー
  • 11月25日(土)と26日(日)
    お米の話し&土鍋で炊飯(仮称、各2回、詳細未定)
    主催 静岡ガス

 

6月26日 ラジオで話したこと号最終回

image 2ヶ月間に渡ってお話ししてきたラジオ生出演も今回で最終回、今回はそのまとめのお話し、これからのアンコメをお話ししました。

Q1:
先日、福島の有機栽培について、お話いただきましたが、「ロハス」とか、「食育」とか、最近「食べる」ことをより大切に考える動きがあります。このことについて、どんな感想をお持ちですか?

A1:
たいへん喜ばしいことだと思っています。しかし、いっぽうでこのような動きがあるということは、ロハス(Lifestyle of health and sustainability)に憧れてしまうほど、我々はそうでないラ イフスタイルになっているということだし、食育も同様で、食育しなければならないほど、食が乱れてしまったということなのです。何だか皮肉なことですね。
これはあくまでも私感ですが、たぶん江戸期以降、昭和30年代位までの日本人の生活は半ば「必然的ロハス」だったのではないでしょうか。これは個人生活もそうですが、商売の姿、社会全体がそんな風だったのではないでしょうか。またそうでなければ、列島に降り注いだ過去数年間分の太陽エネルギーの固着物だけで、経済を賄っていたという江戸という文化はありえなかったとも思うのです。
当店はもうじき、この安東で商いを始めて80年になります。創業何百年という老舗には適いませんが、長い期間商いを続けていると必然的にロハス的なものを商いの基本コンセプトに持ちえるような気がしてなりません。店は内的にも外的にも、常に健全かつ永続性を持ちえなければ、いとも簡単に滅びてしまうからです。
私の父は事あるごとにこう言います。「永遠のプログラムで考えろ!」。父は今年75歳になりましたが、近年のロハスというムーブメントを知りません。しかし知らない父が若い頃から口癖のように言う「永遠の〜」はまさに伝統的な商い人から伝わるロハスコンセプトなのです。
たぶん高度成長期以降、多くの日本人が忘れていた生き方を、今日本人は外来語として入ってきた「ロハス」という言葉で、再認識しているのだと思います。

 ロハスの反意語が刹那とするならば・・・。まあ、刹那的に生きる面白さは、それはそれでちょっと魅力ではありますが、刹那はあくまでもスパイス、刹那が日常では、それは野暮な気がします。みなさんはどう思いますか?

Q2:
長坂さんは、これからもいろんなチャレンジをしていかれることと思いますが、どんなおコメ屋さんになりたいとお考えですか?

A2:
単にお米を売るだけのことなら、どんな商売の方でもできるはずです。生産者が直売することや、量販店が販売することもその一つでしょう。しかし、米屋でしかできない仕事があるはずなのです。でなければ、米屋という商いの形は生まれなかったはずです。私はこれを追及したいと思っているのです。それが、「田圃から、お茶碗まで」というコンセプトです。全体を俯瞰してプロデュースするようなイメージでしょうか。分業化されているそれぞれを、米屋という間を取り持つ立場から、より良い流れが生まれるように情報と知識と技術で他にはない価値を創造するのです。これが米屋の米屋にしかできない仕事だと思っているのです。

 「美味しい米」、「安全安心」、これらはよく耳にするキーワードです。現在これらは技術的に(条件にもよるが)ほぼ可能になりました。私が安東米店に入店した17年前にからすると、今のこの状況は夢のようなことです。しかし、いっぽうで米の味が、いつの間にか均質化してしまったような気がしてなりません。たしかに美味しい、しかしそれがどこで栽培されたのかが判らないほど同じ顔して、同じ方向を向いた美味しさなのです。
以前、ある海外のコーヒー専門家がこのように語ったという本を読んで感銘をうけました。

「あるコーヒーは栽培地の周辺にある森の匂いをまとっている。つまり、その根が吸い込んだ水の味、その木の近くになっていた果実の香り・・・・コーヒーは、それを味わう人を、そのコーヒーが育った土地へ連れて行ってくれる」

 米もコーヒーも植物の種子、であれば米もこうでなければならないと思ったのです。 そこで私は、出会う米生産者の方に、必ずこのことを言うことにしました。「この地域の米の味、風味や風合いとはどんなものですか?」さらに、「あなたの田圃の米にしかない個性とは・・・?」「そういう米作りを考えたことがありますか?」と。
生産者は、良い米、美味しい米が栽培できることを望んでいます。それ自体、あたりまえのことですね。だからといって、その土地に縁もゆかりもない肥料資材や微生物が、果たしてその土地ならではの米の味、風味や風合いを奏でてくれるのか?たぶん生産者の方の中には異論のある方もいらっしゃるでしょう。しかし皆が同じ方向を向き、それを良しとする傾向は、生命の多様性という面で、とてもひ弱で、ある意味で危険でもあるように思えるのです。もっと言えば面白みに欠けるとも思えるのです。

 19世紀半ばアイルランドでおきた「ジャガイモ飢饉」をご存知でしょうか?ある多収性の単一品ばかり栽培した結果、ジャガイモの葉や茎についた病原菌によって壊滅的な被害を受けたのです。それによって、アイルランドでは100万人ともいわれる多くの餓死者を出しました。言うまでもなく、アメリカへのアイルランド移民のきっかけとなった出来事です。それ以降もアイルランド移民は絶えることがありませんでした。
大ヒット映画「タイタニック」、そのクライマックスシーン。沈みつつある3等船室の一室で脱出を諦めた一家が、ベッドの上で母親が二人の子供をあやすシーンを覚えていますか。私はあのシーンを見るたびに身につまされるのです。もし自分があの立場だったとしたら・・・。
あの家族は、きっとアイルランド移民にちがいありません。タイタニック号が沈んだのは20世紀初頭ですから、あの家族にとってジャガイモ飢饉が移民の直接の原因ではないはずです。しかしアイルランド移民の歴史には、あのような悲惨な光景が幾度となく繰り返されてきたのであろうと想像されるのです。

 アイルランドにとってジャガイモが主食であるように、日本にとってやっぱり米は主食なのです。私は食の安全保障を語るつもりは毛頭ありません。そういったことは政の専門家にお任せすべきです。ただ、田圃からお茶碗を常に見渡す一軒の米屋として、米にとって、稲作にとって何にも増して多様性が大切だと感じているのです。様々な品種、様々美味しさ、様々な価値、土地ならでは風味、風合い、ひとりひとりの生産者ならではの個性。この田圃にしかない何か。そんなものがとっても大事なのだと思うのです。
どんな米屋になりたいか?という質問にお答えするとすれば、そういう米作りのお手伝いをし、その魅力をお客様に伝え、楽しんでもらう。そういう米屋になりたいのだと思います。

 

6月19日号 ラジオで話したこと

image 今回はワールドカップサッカーにちなんで日本のお米と、世界のお米についてお話しました。米は麦、トウモロコシと並んで世界三大穀物のひとつで、生産量は麦についで多く栽培されています。米は人類、ことにアジアの文明を築いた原動力です。サッカー日本代表も米の飯を食べ、それを原動力に今、戦っているのです。

Q1:
まず、素朴な疑問。日本以外で、お米を作っている国は、どのくらいあるのでしょう?

A1:
中国、朝鮮半島、台湾、東南アジア諸国、インド、バングラディッシュ、スリランカ、マダガスカル、イタリア、スペイン、アメリカ、オーストラリア、アフリカの一部・・・アジアモンスーン地域が主な産地と思いきや、意外に多くの地域で栽培されているようですよ。

Q2:
むかし、冷夏の影響でタイ米を沢山輸入したことがありましたよね。かなり不評だったような気がしたのですが…同じお米なのに、どうしてそんなに味が違うのでしょうか?稲の育て方も違ったりするのですか?

A2:
昔と言っても平成5年、13年前のことです。今でも鮮明に覚えています。忘れもしない寒い夏がありました。翌平成6年の3月には、後に「平成米騒動」なんて呼ばれた米パニックがありました。私はその出来事をきっかけに、米屋の有り様を考え直しました。現在の安東米店を作ったきっかけとなった出来事でした・・・。話しが逸れてしまいましたね。ではご質問にお答えしましょう。

世界には私たち日本人が食べているお米以外に様々なお米があります。世界にあるお米を大きく分けると2種類(研究者によっては3種類という見解もあり)に分けられます。ひとつはジャポニカ種、もう一つはインディカ種です。特徴的にはジャポニカ種が私たちの親しんでいる単粒でモチモチとした食感の米のグループです。いっぽうのインディカ種は長粒でパサパサとした食感の米のグループです。さらに細かく分類するとジャポニカは温帯ジャポニカと熱帯ジャポニカに分けることができます。かつては日本でも熱帯ジャポニカやインディカが栽培されていたようですが、現在日本人が常食としているのが米は温帯ジャポニカの系統だそうです。
じつは、世界の稲作諸国から見ると温帯ジャポニカだけ栽培する日本の稲作は特殊で、他のアジア諸国では食感や味の異なるジャポニカとインディカ両方を栽培するケースが多く、例えば雨季と乾季によっての作り分けや、標高によっての作り分けなど地域によって様々な組み合わせが存在し、その食感や味の多様性そのものが地域の食文化となっているようです。

 このように、ジャポニカとインディカはもともと違うキャラクターのお米なのです。そういうことを知らなかった13年前の日本人にとってタイから緊急輸入されたインディカ米との出会いは、たいへん不幸なものでした。後に私はある稲の遺伝子を研究されている先生の講演会後の余談でこんな面白い話しを聞きました。「ジャポニカとインディカは遺伝子的には大豆と小豆くらい違うものなのです・・・」それを聞いて納得したのです。同じ「米」とは呼ばれているけれど、私たちがお米だと思っているのはジャポニカ的食感や味であって、インディカにそれを求めること自体無理があるというわけです。要するに当時の日本人は、大豆でおしるこを作ろうとしていたわけです。

 あれから13年、ごく一部ですが国内でもインディカ種を栽培する生産者が現れています。つい先日も有機農法で栽培されたインディカ米サリークイーンを入手しました。このサリークイーンは日本で栽培された品種で、いわゆる「香り米」と呼ばれる高級なインディカ米です。このように、ようやく日本でも新たなインディカ米とのお付き合いが始まっているのです。

 

6月12日号 ラジオで話したこと

image 今回は福島県の会津地方、喜多方市の郊外、熱塩加納村(あつしおかのうむら)の管井さんの田圃からお話ししました。喜多方市は安東米店が永くお付き合いしている産地で会津地方の中でも良質なお米が産出される地域の一つです。その中でも熱塩加納村は早くから有機栽培(無農薬無化学肥料栽培)に取り組んでいる地域で、ここ数年当店で販売に力を入れている所なのです。

 「有機栽培」。簡単に言うと農薬は使わない化学肥料も使わないで栽培する方法のことです。日本ではJAS法でよって厳格に定められ、認定されたお米のみ「有機栽培」と表示できる仕組みになっています。今回訪問した熱塩加納村の管井さんもこの認定を受けています。
ただ、有機栽培と一口に言ってもその方法は様々です。一般的によく知られているところでは、「アイガモ農法」が有名ですね。この○○農法という表現は、除草方法や稲の生育に有効な菌類や微生物、またはそういったものが存在する環境からイメージされるようなコトバが、愛称になっているケースが多いですね。

このように様々な有機栽培がありますが、実践されている生産者に会う機会には決まって「除草方法は・・・?」というところから会話が始まります。
除草方法、これは有機栽培にとって永遠のテーマのように語られています。簡単に言えば「どのように草を取るか?」の技術のことです。慣行栽培(農薬と化学肥料を使う一般的な栽培方法)では使うことができる除草剤も有機栽培では使えません。ですから、その代替え方法としてアイガモを放すなど、様々な方法で除草する技術があるのです。

 除草方法には大きく2つの考え方があります。一つは「生えた雑草を取る」もう一つは「雑草を生えにくくする」です。もちろん両者を組み合わせた考え方もあります。
アイガモ農法に代表されるような方法は前者の方法です。いっぽう、5月8日号でお話しした「アンコメ米作りプロジェクト」の生産者、藤枝の松下さんは後者を選択しています。じつはここ熱塩加納村の管井さんも後者を選択しています。しかし後者を選んだ松下さんと管井さんでは考え方は同じでも、そのアプローチの方法は全く異なります。
松下さんの場合は年間を通じて作業のできる静岡という土地柄を最大限生かして、生える雑草一つ一つの発生の仕組みを調べ、その雑草が好まない物理的環境を作ることで雑草の生えにくい田圃を作っています。また熱塩加納村では冬期3メートルともなる積雪のために松下さんのように一年中作業はできません。そこで菅井さんは、「紙マルチ」という方法を用いています。ラジオでお話しした「真っ黒な紙を敷かれた田圃・・・」とはこのことです。田圃全面に黒い紙を敷き詰めながら田植えすることで、苗以外の植物から日光と空気を遮断し、そこに生える雑草の発芽を防ぐ方法なのです。
こんな風に、有機栽培には雑草対策だけでも様々な方法が実践されています。

 ところで、この除草の話題になるといつも思うことがあります。それは日本列島の豊かさです。その理由は、「雑草と」いう言葉がすべてを語っています。
放っておいても生えてくる草、コンクリートやアスファルトの隙までも生えてくる草、少しでも気を抜けばあっという間に繁殖する草、生えてくる様々な野草を「雑草」なんて呼び方をしてしまうほど雑多なものとして認識するのは、高温多湿の日本ならではとも聞きます。草も生えない乾燥した地域では想像もできないことのようです。
草が生えるということは、そこに草の生えるだけの条件(温度、水分、日照、表土など)が整っているということです。稲の栽培には邪魔な存在である雑草ですが、雑草が生えるからこそ同じ植物の仲間である稲も育つというわけです。そういう意味で日本列島は豊かだと感じるのです。

 

6月5日号 ラジオで話したこと

image 今回はアンコメ店主も資格を持っている、お米マイスターのお話しをしました。
お米マイスター認定制度は日米連(日本米穀小売商業組合)が定めたもので、言わばお米屋さんのプロを認定する制度と言えばわかりやすいでしょうか。

 お米マイスターとは、ドイツ語のMEISTER、巨匠、師匠という表現を用いてお米の匠という意味を表しています。また、マイ→米、スター→星の意味を持ち、「米に明るい人」という意味も表しています。具体的には、お米に関する幅広い知識を持ち、米の特性(品種特性、精米特性)、ブレンド特性、炊飯特性を見極めることができ、その米の特長を最大限に活かした「商品づくり」を行い、その米の良さを消費者との対話を通じて伝えることができる者を認定するという制度なのです。

じつはこのお米マイスターは平成14年度から始まったもので、まだ歴史は浅いのですが、三ツ星お米マイスターと五ツ星お米マイスターがあります。三ツ星お米マイスターの認定講座及び認定試験は、知識編ということで受験者の知識的実力を判断しますが、五ツ星お米マイスター認定試験においては、実技試験において技術力を判断しています。すでに全国で3,920名が認定され、そのうち3,700名(平成17年10月末日現在)が三ツ星お米マイスター。220名(平成17年10月末日)が五ツ星お米マイスターとして認定されています。かくゆうアンコメ店主もこの五ツ星お米マイスターなのであります。ちなみに静岡県内には小生を含め11名が五ツ星お米マイスター認定されています。

Q1:
認定試験では、どんなテストが行なわれるのですか?

A1:
面白いところでは、事前にブレンド米を作ってくるという課題や、数種のお米を食べ比べてその特徴を調べる官能試験。試験官と一対一の面接方式で技術的な問答をする試験など、大学受験以来、久々に緊張しました。

Q2:
また、素朴な疑問なのですが、日本には、何種類くらいのお米があるのでしょうか?(おそらく相当な数だと思うのですが)

A2:
現在、日本国内で品種登録されている品種の総数は505種類です。その数は毎年増えています。その中で我々が一般的に口にしているのは約30種くらいではないでしょうか。

Q3:
それらを区別し、おいしさを見極めるには、どんな風に勉強されるのでしょうか??

A3:
どんな品種も品種として固定されたものには、それぞれの特徴というものがあります。単に味だけではなく、例えば寒い地方でもよく育つとか、病気に強い、たくさん採れる・・・など、それらの特徴を踏まえた上で美味しさを考えます。すべての品種がコシヒカリやコシヒカリ一族(ひとめぼれ、あきたこまち、ヒノヒカリなど)に代表されるような味の方向性を持った品種ではないのです。それらを読み解くには、その品種の来歴などを調べたり、どんな地方のどんな場所が主な生産地なのか、栽培時期はいつなのか、またどんな栽培方法なのかを調べることも大事なことです。そしてその品種の、その品種ならではの持ち味が出ている米を見極めるのです。とは言うものの、なかなか難しいことです。様々なお米を食べて経験を積むのが一番大事なように思います。アンコメ店主も勉強中なのであります!

Q4:
じつは、長坂さん9月にワークショップをされるそうですね。

A4:
掛川市のNPO法人、スローライフ掛川が今年度から始めたライフスタイルカレッジで「うまさ120%のご飯を食べる〜田んぼウォッチング&ご飯炊き」という講座を開きます。アンコメ店主がこれまで経験してきた、田んぼからお茶碗までの美味しいお米のお話しと、プロも知らない飯炊きの技で、参加者のみなさんに飯炊きを実践してもらうワークショップです。
詳細は以下のとおり、お問い合わせはNPOスローライフ掛川まで。
>「うまさ120%のご飯を食べる〜田んぼウォッチング&ご飯炊き」
日時:平成18年9月16日(土)9:30〜14:00頃
会場:キウイフルーツカントリーJapan
詳しくはコチラ→http://ldc2006.seesaa.net/

 

5月29日号 ラジオで話したこと

image 今回はコシヒカリBLからブランドとは?また米選びとは?という日頃アンコメ店主が思っていることをお話ししました。

 先日、朝日新聞の一面トップの記事にも取り上げられたことで話題となった。「コシヒカリBL問題」じつは当店でも少々頭を悩ます問題なのです。
では、コシヒカリBL(Blast resistance Lines)とは何か?これから整理しましょう。

もともとコシヒカリという品種は稲の病気、いもち病に対する抵抗力が低く、そのリスクを回避するために15年に及ぶ研究開発をかけ、連続戻し交配法(遺伝子組替えでない)という方法を用いて、いもち病に抵抗性のある稲の遺伝子の性質を持たせた品種を育種したのです。これがコシヒカリBLです。
これによって、いもち病が発病するリスクが軽減されるため、農薬の使用回数や量を削減できることから、環境にやさしい米作りができるというのがJA新潟の意見です。さらに、もとの

2006年01月29日 [ 1654hit ]
第01回〜第11回
 

第11回 僕が思う美味しいゴハンシリーズII 「分づき米の美味しさ」

image 2006年5月から6月の2ヶ月間、FM静岡K−MIXの9:30からオンエアのキャラメルポケット「県人・賢人・ご意見人」(9:42〜9:48頃)で毎週月曜日にアンコメ店主が生出演した時にお話したこと、話し足りなかったことなどを毎回アップする予定です。

「お米を洗ったらお水に2時間浸ける」「2時間つけたら水を替えて炊飯!」
お米の美味しさ、ことに白飯ならではの澄んだ美味しさを100%発揮させるには、このひと手間、ふた手間がとっても大事なのです。どんなに良質なお米を買っても、いや良質なお米ほどその持ち味を100%発揮させるためには、ぜひやってほしい手間なのです。

 お米を水に浸すことは、炊飯中に米粒の中心まで熱を伝えるためです。要するに水は熱を伝える媒体なのです。その水が米の中心に到達するためには、ある一定の時間が必要なのです。これは水温や米質によってかなり時間に幅がありますが、どんな季節でもどんな米質でも間違いのない時間が約2時間なのです。気温の高い夏には30分程度で良い米もありますが、じつは米粒の中ではたんに水が浸透していくだけでなく、水に触れることによって米粒の中の2種類のデンプン分解酵素(αアミラーゼ、βアミラーゼ)が活動を始めるのです。この酵素の活動によってお米がやわらかくなることはもちろん、そのお米が持っている甘みや旨みを引き出す作業をしてくれているのです。とくに品質の良いお米ほどその活性は活発だと言われています。

 さて、こんなに良いことばかりのアミラーゼくんにも一つだけ問題があります。それはアミラーゼくんも活動すれば老廃物が出るのです。人間みたいですね。老廃物という表現はあまり適切ではありませんが、要するに2時間浸漬した水(浸漬水)の中には不純物が排出しています。また活性エネルギーは熱交換されていますから若干の水温上昇があります。そこでは細菌も繁殖しやすいのです。そこで水を捨てる作業(水切り)してほしいのです。これが「水を替えて炊飯!」の意味なのです。ただし、水切りは長くても5分程度まで、それ以上そのままにしておくと、お米がひび割れてしまいます。そうなったお米を炊くと「べちゃべちゃ」になってしまい、せっかくのアミラーゼくんの努力も台無しになってしまうのです。

 ここまで書いて「こんなこと毎日できないよ〜」という声が聞こえてきます。そうですよね。こんなこと毎日できるわけありません。じつはアンコメ店主だって毎日やってるわけではありません。そこで提案です。週に一度、いや月に一度、暇な時に挑戦してみませんか?要するにたまにで良いのです。今、あなたが食べているお米の本当の味とは?あなたが使っている炊飯器のポテンシャルで炊ける最高のご飯とはどんなものなのか?を知ることが大事なのです。知っていてあえてサボる人生と、知らないままの人生、どちらの人生が楽しいか?あなたはどっち?

 

第10回 僕が思う美味しいゴハンシリーズI 「ベーシックとオプション」

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 美味しさは十人十色。人それぞれであることは云うまでもない。しかし僕個人として独断と偏見で感動し美味しいと感じることのできる米の「美味しさ標準」というものをあらためて考えてみた。これから数回にわたってシリーズで書いてみようと思う。今回は「ベーシックとオプション」2段階で美味しさを判断し米選びの基本としている考え方をご紹介します。

 日頃、全国各地からやって来るお米を日々試食して何を売ろうかと判断するのに僕はこの「ベーシックとオプション」という2段階で判断しています。売るか?売らないか?良いか?ダメか?好きか?嫌いか?結果的には二つに一つの判断なのだが、そこの至るプロセスがこの「ベーシックとオプション」なのだ。

  • ベーシックとは・・・

    「甘み、歯応え、滑らかさ、香り、粘り」の事です。この5要素を持ち合わせることがベーシックと云える条件です。しかし持ち合わせているだけではいけません。5要素が絶妙なバランスを持っていることが重要だと思っています。例えば甘みが少ないお米でも、それがプラスに感じられるお米が存在します。これらはバランスの良さが魅力になっている一例だと考えます。すべての要素が満点だとしてもバッドバランスではいけません。目指すところはグッドバランスなのです。そんな米に出会った時には僕は開口一番「この米キレてるねー!」と云うわけです。

  • オプションとは・・・

    すばり「風味風合い」である。ベーシック5要素からなるグッドバランスから作り出されるその米独自の風味風合い、もっと云えばオリジナリティである。食べ物とはそれを食べた時にそのモノが育った場所や雰囲気が想像できることが大事だと思います。風味や風合いとはそういったロジックでは簡単に説明できないような第六感的要素です。それを僕はオプションと呼んでいます。ちなみにそんなイマジネーションをかき立ててくれるようなお米は年に数回しか出会えません。

2005年8月18日

 

第9回 お米が好きななのは、人間だけじゃないんです。

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 蒸し暑い季節がやって来た。この季節、田圃では様々な生き物たちが一年のうちで最も活発に活動を見せる時期である。ことにアンコメ米作りプロジェクトの無農薬有機栽培で米作りが行われている田圃では、その活動が一般の田圃に比べ多様性に富んでいて見る者に感動を与えてくれる。微生物から水棲昆虫、爬虫類や鳥類に至る多様な食物連鎖を見るに度に人間が作った田圃という環境が、人間の食料確保のためだけでないことを実感させてくれる。そんな同じ頃、じつはお米に関係する他の場所でも生き物たちが活発に活動を見せる場所がある。その場所は米屋の倉庫や家庭の米びつの中である。そこで見つかる?かもしれない!虫たちをご紹介しましょう。

  1. ノシメマダラメイガ
    体長1センチ前後の白色の幼虫を見るケースが多くたくさんの糸を吐きながら、食べくずを綴り合わせて白いマユを作ります。米袋さえも食い破って浸入します。家の中で小ぶりな蛾が飛んでいたら米びつを要チェック!
  2. コクゾウ虫/ココクゾウ虫
    米につく代表的な虫です。象のような鼻をもつことからこの名前だとか。生命力が強く約7ヶ月も生息します。成虫は体長3ミリの黒色なのですぐ見つかります。ココクゾウ虫はややスリムで色は褐色です。
  3. コナナガシンクイ虫
    最近大発生している虫です。赤褐色の成虫で体長2〜3ミリの細長い円筒形で硬いボディを持ち空中も舞います。短期間で膨大な数に増え、手で叩いてもなかなか死なないタフな虫です。

 じつは、田圃の生き物が活動している時は米屋の倉庫や家の米びつの中でも生き物が活動する季節なんです。我々人間は田圃の中の生き物には感動するのに米びつに発生する生き物は害虫だとして駆除をする。じつはこれ、少し変なことだと思うのです。本来虫には益虫や害虫の区別はなく人間の都合で仮にそう呼んでいるだけのはなし。我々人間は田圃の生態系は守ろうと農薬を使わないことを求めるいっぽうで、米びつの中の生態系は許せない。なんともエゴイスティックな生き物なのです。こんなことを書いている僕でも米につく虫は気持ち悪い。だから害虫だと思っている。しかし有機無農薬米や減農薬米を扱う以上は薬を使いような駆除はしない。倉庫の温度管理や精米工場内をこまめに掃除するなど、できるだけ発生しないようにするだけだ。それでも虫は発生する。僕ら人間同様に彼らもお米が好きで。生きようと必死なのだ。この季節、生命豊かな田圃を見、米につく虫たちを見る時こんなふうに考えるのである。

  • お米につく虫の発生、侵入を防ぐ保存方法
  1. お米をフタのしっかり閉まる密閉できる容器に入れる。水などが入っていたペットボトルがオススメです。
  2. 密閉容器に入れた状態で冷蔵庫に入れれば味も落ちず、カビの発生も防ぐことができる最強の保存方法です。

2005年7月4日

 

第8回 僕にもできたハイブリット玄米食のススメ。

image 玄米とは収穫された稲から実の部分(籾)を脱穀したものから籾摺り(籾を取り去る)をしたお米の状態をこう呼びます。そんな玄米はビタミン、ミネラル、食物繊維、また血流を良くするリノール酸などの脂質も含んでいるまさにスーパーフード。そんな玄米を毎日食べたいと思っている人は多いのでは?米屋でありながら白米のテイスティングがあるといういい訳で玄米食がなかなか続かない三日坊主の僕が苦肉に末に編み出したハイブリット玄米食(僕が勝手にそう呼んでいるだけ)をご提案します!

 まず炊飯は簡単に玄米を炊くことができる玄米モード付IH式電気炊飯器(僕はM社製を愛用しています)がゼッタイオススメ。もちろん圧力鍋や炊飯土鍋、カムカム鍋でも美味しく炊くことができますが僕のような手抜き派には玄米モード付IH式電気炊飯器が強い味方なんです。そいつで週1回5〜6合炊き、アツアツ炊き立て玄米をラップか密閉容器に小分けし湯気(水分)が逃げないように急いで密閉、あら熱をとってから冷凍保存します。食べる時はレンジでチンして先に盛っておいた白米ご飯の横にポンと置いて「いただきまーす。」こうすれば玄米を食べたくない家族やパートナーとも平和共存できます。しかも食べたい時にいつでも食べられ、毎日炊く手間も省けます。白米の美味しさと玄米の美味しさ、両方のいいとこどりが長く付き合える秘訣です。玄米食というと、ついつい真面目に「毎日三食食べないといかん!」なんて思い込んでしまうケースが多いようです。しかしこれでは長続きしません。簡単かつ気軽に食べられる環境をつくることが大事です。この環境づくりこそ僕がオススメする「ハイブリット玄米食」なのです。ぜひお試しあれ!

2005年3月2日

 

第7回 米研ぎの時間

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 アンチ無洗米というわけではないけれど米を研ぐ(洗う)時間が僕ら人間の感性をも研いでくれているということを再認識してみてはどうだろうか?

 米は収穫された後、精米されおなじみの姿となって家庭にやってくる。米を炊く人間は必要量を測りその測ったお米を研ぐ。考えてみるとその数分間こそ人間が米と対話ができる唯一無二の時間なのである。春から夏そして秋の収穫までの約半年以上に及ぶ生長の記録を人間が持つすべての感性で理解し美味しいご飯に昇華するべく適切なサポートしなくてはならない時間なのである。

 サッと水を差し軽く濯いで水を切る。この時、平均14.5%の水分を持つ米は「待ってました!」とばかりに水を吸い込もうとする。しかしそれをこの段階で許してはいけない。雑味の原因である糠の溶け出た水を吸い込んでしまうからだ。水を切ったら即、米と米を擦り合わせるように掌(たなごごろ)で研ぐのだ。この時、物云わぬ米がほんの少しだけその重い口を開くのだ。「・・・・」五感でしか感じることのできない言語である。自らの生まれや育ちはもちろんのこと育ってきた田圃の様子、その年の夏の暑さ、寒さ、関わってきた人間の情熱、そして今何をしてもらいたいかを・・・。人間はそれらを感じつつ、すばやく、強くなく優しくない力加減で作業を進めていく。

 同じ米でもその日の天気やコンディションよって彼らの要求は変化するのだ。そんな厄介な要求をこともなげに日々こなすのが「あなた」という人間の存在だ。人間が存在することによって米もご飯になり、美味しいご飯を食べたいと望む人間の感性もまた米を研ぐことで磨かれる。こんな身近な生活の中に五感を総動員して挑まなければならないことを僕ら人間は日々やっている。今、そんな米研ぎの時間さえも「忙しい」という理由で省かれつつある。ますます感性の乏しい人間が増えていく。生活の中で感性を磨くなんてとてもカッコイイと思うのだがちょっと残念である。

 米との対話がうまくいき研ぎあがった米はようやく水と交わることを許され澄んだ水の中でゆっくりと乳白に変化していく。その有様はたとえようのないくらい美しい。米の感性と人間の感性がコラボレートして生まれたゲージツ作品と云ってさしつかえないくらい美しい風景です。

2004年12月6日

 

第6回 シンマイかコマイか、トオクかチカクか?

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 新米シーズンが始まる秋は米屋にとって喜びの季節とともに大いに悩む季節でもある。とくに7月下旬から9月中旬にかけての早期の新米が入荷する時期はことのほか神経を使う。それは一般的に思われているらしい「新米=美味しい」という図式が全くあてはまらないからだ。もっとも僕ら米のプロにしてみればこんな図式はもともと信用していない。あえて信用できそうなことを図式化するとしたら「良い米=美味しい」というところだろうか。今年(平成16年)のように新米がスタート時から安値の時はさらに神経を使う条件が増える。例えば美味しさがほぼ同じお米が2種類あるとしよう。そのお米の一方がで5000円もう一方が4000円だったらあなたはどちらを選ぶだろうか?しかも前者が古米、後者が新米だとしたらどうだろうか?よほど物好きな人でなければ、ほとんど人は4000円のお米を選ぶに違いない。今はまさにそんな時なのだ。

 だからといって古米がすべて魅力がないと云えば、それは間違いである。新入社員のようなフレッシュさはないものの、いい仕事している熟練の味を持つお米もある。こんなお米を「新米じゃないから」という理由で評価しないのはフェアではない。古米だとか新米だとかということを云々する前に、そのお米はどんなポテンシャルを持っているのか?という点に率直に向き合うべきではないだろうか。これをさらに進めて行くと、産地や銘柄のことも同様である。有名産地の有名銘柄でなくてはならない理由などどこにもなく、ただ良いお米で美味しいお米であれば良いのだ。もう少しはっきりとした云いかたをすれば「良いお米ならば氏素性は問わない」というわけだ。

 僕は以前から「日本一のお米は日本中にあり足元にもある」と実感してきた。よく人は良いものは遠くにあるような錯覚をする。離れているせいで細かい粗が見えにくいからなのだろう。しかしこう考えてはどうだろうか?「遠くを求める自分という存在は遠くに居る人にとっては遠くの存在」なのだということを。要するに「遠く=足元」なのだ。だからと云って足元のものがすべて日本一ではない。そこには一つだけ条件がある。「ちゃんとした目と確かな技術を持ち、人一倍稲が好きな人」という人の存在だ。そんな人の育てる稲は裏切らない。どんな場所でもその土地に最適な生長をし良いお米ができる。人が稲を育て、稲は米が作るのである。そんなお米ならば新米だろうが古米だろうが何処の誰であろうが美味しい良いお米に違いないはずである。

2004年9月20日

 

第5回 静岡市で買うお米って。

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 だいぶん前のことだがお米をテーマにしたクイズ番組を観てビックリしたことがある。「全国で市民一人あたりで最も高級なお米を食べている市町村はどこでしょう?」という質問だったように思う。その答えがナント!静岡市だったのである。もともと静岡県は県内産のお米を県民全員で食べるとわずか2ヶ月分程度の生産量しかないと云われるとおり残り10ヶ月分の消費量は他県から買っているということは知っていたのだが、その静岡県の県庁所在地である我が愛する静岡市の市民が全国一の高級米消費者とは思いもよらなかったのである。

 確かにこの地で長年商売をやっていて気が付くことだが良い意味で「米にうるさい人」が多いように思う。それは山海の食材が新鮮なうちに食べられるという立地ということから舌にきびしい人が多いということもあるだろうし、地方都市としてはそこそこ豊かな土地柄ということもあるだろう。そんなことからいい米を食べたい、米の味にもこだわる人間が多い=高級米消費者という図式なのだろう。

 そこで小生はこんな風に考えたのである。日本一クラスの旨い米は静岡市で探したほうがどこの街で探すより見つかる確率が高いのではないだろうかと、もっとひいき目に云えば、もしかすると我が安東米店に入荷しているお米の中にそういったお米が存在しているということじゃないだろうかと。かなり身勝手な解釈だがそう考えたのである。そんなことを思いつつ平成15年産の中で出来の良かったと評価をされた産地のお米を調べてみると、そのどれもが倉庫に入ってるなじみのある村や町から産出されたお米なのである。それを知った時、小生の仮説はまんざら間違っていないと確信したのである。

 日本一旨い米を売る町!なんて野暮ことを云うつもりはないけれど静岡市とそこに住む住人がその可能性を育んでいることは間違いないはずだ。一見地味で魅力が無さそうな、住んでる市民でさえ不満に思うことの多い静岡だけど、水道水が美味しい、日照時間が長く空が青い、美味しいお米が買える、などなど、こういう生活のベーシックな部分で充実していることこそ静岡の魅力そのものだと思うのである。旨い米を探すなら静岡、住むなら静岡ですよ。これホント。

 

第4回 絶滅危惧種

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 今や釜戸でご飯を炊いているというご家庭を街中で見かけることはなくなった。云わば絶滅危惧種と云ったところではないだろうか?その絶滅危惧種と云われる類のモノが我が家には存在する。「蒸し竃」(ムシカマド)と呼ばれる高さ60センチ直径40センチ、中央部分が膨らんだずんぐりとしたいでたちの陶器製。昔話で登場するおなじみの釜戸とは似ても似つかない姿である。店の入り口付近に鎮座するそれを見ても釜戸と思う人は皆無で大方の人は「これ何ですか?」という方ばかりである。そんな時には「これは釜戸なんですよ」と上部の蓋を開け中に据えられたお釜を見せる。すると皆一様に「オオーッ!」と感激しながら納得してくれるのである。こうして小生の蒸し竃ウンチクはスタートするのである。

 「炊飯とは煮る、蒸す、焼くという複合加熱によってお米のβデンプンをα化することを云うんです・・・」お米をご飯に変身させるためには釜内の温度をそれぞれある一定の時間に一定の温度に推移させる必要がある。現代の炊飯器ではその作業を熱源の違いによりそれぞれの特性を生かしつつ様々の方法で制御され今やほとんどマイコンで制御するようになっている。一方、「蒸し竃」はそんなマイコンはおろか電気でご飯を炊くなどという発想もない時代に生まれ、熱源は火。燃料は炭によるもので少ないエネルギーで理想の炊飯を実現するためにシンプルな方法を用いて釜内の温度を理想的な温度に推移させる細工がほどこされているのである。蒸し竃で美味しいご飯を炊くには電気炊飯器のようにボタン一つというわけにはいかないが何度か経験し湯気の出かた色、匂いの変化を見分けられるようになればびっくりするほど美味しくてちょっぴりおこげのある旨いご飯が炊くことができる。大手家電メーカーが巨額な研究開発費と膨大な時間を掛けて作ったハイテク炊飯器がたどりついた世界に蒸し竃はあたり前のようにそれ以上の世界をあっさりこなしてしまうあたりはさすが!と云うほかない。

 火を熾し釜を据え蓋をする。湯気の加減と匂いを見ながら釜の中を想像し頃合い見て蓋をする。手間ではあるが絶滅させるにはもったいない。こんなすばらしい道具を絶滅から救いたいと思うのは米屋だけではないはずである。

 

第3回 食ってみなけりゃ売らないんだよ。

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 昨今ではだんだんと珍しい商売になりつつある米屋という商売のスタイル。そのスタイルの基本は製造小売であること。

産地から生産者や卸会社を通して原料米を仕入れ、自前の精米工場で精米製造し販売する。パン屋で例えるなら自分でパン生地を作り自前の釜でパンを焼くホームベーカリーといったところであろうか。パン同様、その味の決め手は職人の技術はもちろんのことその原料の素材にあることは云うまでもない。

米は農作物である宿命でその品質は同じ産地同じ銘柄果ては同じ生産者であろうと均一ではなく常に不安定である。不安定であるが故にその原料の仕入れには慎重の上にも慎重を期す。そのために日々産地から送られてくるサンプルで仕入れた原料米を片っ端から食べてチェックするのである。ネバリはどうか?甘みは?舌触りは?香りは?そして価格対しての価値はあるかないか?というようにその米の持つ実力を舌で確認していく。去年良かった場所だから今年も良いだろうと思うのはご法度である。生産者には申し訳ないが案外裏切られることがあるからだ。

昨今では食味計という米の味を客観的に数値化する便利な道具もあるにはあるのだがその能力は人に勝るものではなく大雑把には判断できても自分にとって魅力ある米かそうでないか?あるいは店の味をどう表現するか?という店のアイデンティティに関わる微妙な判断はやはり自らの舌で確認するほかない。またそうでなくては製造小売の米屋のプロとは云えない。食ってみるまでわからないのがお米。だからこそ「食ってみなけりゃ売らないんだよ」と声を大にして云いたい。米屋という珍しい部類になった商売のスタイルとはこんなことを日々やっていることを知っていただけたであろうか?

 

第2回 ただ白くすりゃいいってもんじゃないんだよ。

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ほとんどの人は日々なんらかのかたちでご飯を食べていて、それも銀シャリと呼ばれる白米を炊飯したものを食べている。一般に米は玄米の姿で流通、貯蔵され消費されるごとに、あのなじみある白米の姿に搗精し選別された後に袋詰めされお米をお買い求めいただいているというわけだ。米屋のしごととは大雑把に云うとこの部分のを担っている。こうして文字にしてみるとさして難しそうに感じないのだが、その中に奥深い精米技術の妙があるってことをご存知だろうか?

 玄米を白米にする搗精技術には摩擦作用による方法と研削作用による方法を利用した2種類あり、また両者の長所を生かした方法もある。そしてこれらの技術を応用して様々な精米機が開発され美味しいお米の製品づくりに切磋琢磨しているのだ。ちなみに当店の場合は摩擦作用を応用した精米機によって製品づくりをしている。これらの搗精方式のすべては、米本来の持ち味を損なうことなく美味しさを追求した結果で、方式こそ違え米の美味しさに関わるある共通の要素を追求するがための技術といっていい。それを簡単に云うと「糠の残し方」にある。

 精白米とは玄米の胚芽と糠層(註)を取り去ったものいうのだが、この取り去り加減が美味しさに関わる重要な点なのである。胚芽と糠層を取り過ぎた米は味が淡白になり、いっぽう胚芽と糠層の多く残った米は雑味を感じる。美味しさのいい加減というのがあるのだ。しかもこの工程をできるだけ低温で行わなければならない。摩擦熱による熱変性も米の味を落とすからだ。これを機械が勝手にやってくれているかと云えばそうではない。多くの部分が自動化されたとはいえ、産地や銘柄など米それぞれによって硬い軟らかい水分の多い少ない、またその日の気温や湿度などによって微調整が必要なのだ。この作業は熟練した人間の感に頼ることが多く当店にはこの勘どころともいうべき技術を今年72歳になる父が頑固に守っている。

(註)胚芽と糠層:これらを総称して米糠と呼び、胚芽は玄米に対し重量比で2〜3%米糠全体では約9%にあたる。

 

第1回 夏でも倉庫は13℃なんだなー。

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最高気温35℃。聞いただけでもきびしい夏の日の午後、米屋の倉庫は夏休み受験生御用達の図書館より涼しいってことをご存知か?年間通して摂氏13℃を維持し最大二千俵(註)を在庫できる能力も持つこの蔵のことを「低温倉庫」と僕らは味もそっけもない名で呼ぶ。

 お米は収穫直後から老化の道を歩む。悲しいかな有名産地有名銘柄米であろうとそれは例外ではない。しかしその老化現象のスピードを緩めることのできる方法がある。それが低温による貯蔵なのである。米の老化の主な原因はお米の中にある酵素の活性や脂質の酸化そして微生物の繁殖などである。それらの老化現象を低温にすることで云わば休眠状態にすることができるのである。その適温が摂氏13℃湿度70%の環境なのである。湿度70%は意外に高いと思われるだろうが、これはお米の乾燥を防いでいるためで、平均14.5%の米の水分量を一定するために加湿は欠かせないのである。

 暑い夏の午後、低温倉庫に涼みに入る。汗は瞬時に引き、楽園気分を数分味う。長袖が欲しくなる頃にはまた35℃の世界へ舞い戻る。美味しいお米を売るには外に出かけなきゃいかんのである。

(註)1俵=60・お米は玄米で流通保管されている。

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