その名を「星空おはぎ」と呼ぼう。 | |
巨大胚芽米カミアカリで新しい何かをつくる。
カミアカリドリーム勉強会でも日本料理の角度で様々にトライしてきてきれた村松大樹さん。 うるち米、しかも玄米でつくるおはぎ、さぞカタチにするのに苦労したことだろう。
初回販売は2月6日(木) 楽しみに待っててください!
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ワイルド!?アーモンド入り玄米餅 | |
アンコメFBページで頻繁にアップしているのでご存知の方いらっしゃるかな? すっかりアンコメの人気商品となったアーモンド入り玄米餅。
アーモンド入り玄米餅が生まれたのが2013年1月。
じつは当初、食べやすさ加工しやすさを考慮して、原料のもち玄米の表層をほんのわずかだけ精米機で削っていました。 もち玄米の粒は、ほぼそのまま。これで餅といえるのか・・・?
まだ未体験の方、これをたべなきゃモグリですよ。 ぜひたべてみてください。
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玄米もちプレーン
※ほぼ毎週水曜日に作ってます。ご予約も承りま〜す。
画像上:炙ったら塩でいただく。
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能イベント@アトサキ7 | |
12月1日(日)の18:00から鼓花の会(華道家 辻雄貴、能楽師 大倉慶乃助 他)主催の能イベントが行われます。
森と水の能楽祭-日本の七十二候をいけばなと能楽から考える
フランスで行われた能イベントに続き今回もスイハニングを担当させていただくことになりました。今回スイハニングするのも今年7月フランスのフェール城で行った能イベントで当日レセプション会場でお出ししたのと同じお米、静岡生まれの品種、玄米食専用品種巨大胚芽米カミアカリです。このお米は通常の3倍余りある大きな胚芽を持つことから巨大胚芽米と呼ばれ、その特徴ゆえに玄米で食べることが宿命付けられた稀有なお米です。しかしその宿命ゆえに、お米が育った気候や風土、栽培者の技などが履歴書のように風味の中に感じることが最大の魅力でもあります。その風味は瑞穂の国と呼ばれるこの島国の今を表しているかのようにも思えてなりません。 そもそもニッポン人が瑞穂の国といわれるアイデンティティを共有するようになったのは、渡来人たちが水田稲作をこの列島に持ち込んでからのこと。能の起源のひとつでもある田楽は稲作労働のためのお囃子であったともいわれ、能と稲作(米)は密接な関わりを持って現代まで続いています。しかし今、分業化専門家された社会においては、これらを一体として感じる機会は皆無です。私は常々、これらは一体となってはじめて完成する景色だと考えていました。今回はそんなひと時を感じていただけける数少ない機会だと思っています。
<イベント詳細> 日時:2013年12月1日(日) 18:00〜20:30
<タイムスケジュール> 18:50〜19:05:いけばな空間演出 19:10〜19:25:能楽組曲 19:30〜19:45:囃子解説 19:50〜19:55:獅子演奏 20:00〜20:25:トークショー 20:30:終演
鼓花の会 辻 雄貴:華道家 辻雄貴空間研究所代表 草月流師範 飯冨孔明:能楽師 能楽大倉流小鼓方 <ゲスト> 長坂潔暁:アンコメ安東米店店主 ESI隊長 竹市 学:能楽師 藤田流笛方 林雄一郎:能楽師 観世流太鼓方
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住所 | 静岡県静岡市葵区七間町15 |
担ぎ | |
松下さんの25年産米の第一陣、巨大胚芽米カミアカリ入荷。
数量40俵、2400kg
毎年、一年間販売する分をすべてこの日に倉庫に積む。
一段5本で16段。
アンコメの倉庫は狭く段差もあるのですべて手積み。
腰にウェストベルト、一気に積み上げる。
今五十、もうすぐ五十のおじさん二人、
これができなくなったら引退だな・・・と同時につぶやく。
今年も無事に積めました。
このあと、松下さんの25年産米は9月後半から10月中旬にかけて入荷予定。
いよいよ本格的にはじまりました。
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画像:恒例の記念撮影。右、松下さん 左、アンコメスタッフの山崎 |
カミアカリとワインのマリアージュパーティ | |
9月5日(木)ビオファームまつき×アンコメのコラボで行った「カミアカリとワインのマリアージュパーティ」 会場のル・コントワール・ド・ビオス(静岡市葵区紺屋町)には40人ものご来場、大盛況のパーティーとなりました。
このパーティーは7月に行った「旅する羽釜、フランススイハニングミッション」の報告も兼ねた企画だったので
かの地でお出ししたものと同じフランスの天然塩、ゲランドの塩で結んだ塩むすびを再現しました。
19時からおむすびが作れるように、18時ごろから厨房にて羽釜でスイハニング。
食感やや硬、ちょっぴりおこげのカミアカリごはんを炊きました。
カミアカリはチーズとの相性がよいことから、クリームチーズやブルーチーズをトッピングしたおむすびもつくりました。
カミアカリ×ブルーチーズおむすびにはバルサミコもちょっぴりオン。
またもや新たなマリアージュが生まれました。
このほか、まつき野菜とカミアカリを使ったファルシやリゾットなど、
ル・コントワール・ド・ビオスの奥村シェフが魅力的なお料理をたくさん作っていただきました。
また、画像をお見せしながらのフランススイハニングミッションの報告も少しだけ・・・。
おむすび方として参加し、現地で奮闘された高部さんにも
当地でお客様から様々な質問をされたエピソードのお話しもしていただきました。
19時からスタートしてあっという間の2時間、
美味しい、楽しい、おなかいっぱい、大盛況のうちにパーティーは無事閉会となりました。
ご来場いただいた皆様、ビオファームまつき、松木さんはじめ、ル・コントワール・ド・ビオス、スタッフの皆々さまへ、
この場を使って感謝申し上げます。
ありがとうございました。
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画像上:左からクリームチーズ添え、塩むすびプレーン、ブルーチーズonバルサミコ。
画像中:松木さん、松下さん、長坂の三人でカミアカリおむすびをむすぶ。竹皿はGroomしずおかの寺尾さん作。
画像下:フランスでおむすびを結んでくれた高部さんのお話し。
画像提供:岡村さん、須永さん
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再現、旅する羽釜@ル・コントワール・ド・ビオス | |
9月5日(木)ビオファームまつき×アンコメのコラボでパーティやります! ル・コントワール・ド・ビオス(静岡市葵区紺屋町)でアンコメがカミアカリを羽釜で炊き、おむすびをつくります。
そうです!「旅する羽釜、フランススイハニングミッション」の再現です!
それだけじゃありません!
カミアカリとチーズそしてワインの意外なマリアージュも体験。
もちろんシェフ奥村氏の新作「米と野菜の一品」など、ビオファームまつきの野菜とカミアカリとワインで
たっぷり食べて飲んで楽しんでいただきます!
また当日はビオファームの野菜、アンコメのお米も販売もあります。
7月に行ったフランススイハニングミッションの報告会も兼ねたパーティーです。
ふるってご参加ください。
カミアカリとワインのマリアージュパーティ
9月5日(木)19:00〜21:00(開場18:30)
お一人さま5000円
※先着35名様限定 予約制 立食パーティ
お問い合わせ、お申し込みは
ル・コントワール・ド・ビオス
担当・伊藤
〒420-0852 静岡県静岡市葵区紺屋町12-8 1F
TEL:054-221-5250 FAX:054-221-5250
イベントフライヤーはこちら
↓
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電話番号 | 054-221-5250 |
郵便番号 | 420-0852 |
住所 | 静岡県静岡市葵区紺屋町12-8 |
私が思う理想的な玄米炊飯。 | |
玄米は初めてなので炊き方を教えていただけますか?炊飯器が一昨年に故障してから、ステンレスの厚手鍋を使って炊いています。土鍋はありません・・・。というメールのご質問にこんな返信をした。 私としては、米粒の表皮をできるだけ破壊しないでそのままの姿で膨潤する炊飯方法を理想としています。
それは食感を含め、個々のお米の個性を感じたいからです。(とくにカミアカリにとっては)
しかし、玄米を食べる多くの方が私と同じ嗜好でなく、
人によっては「簡単で手間かけずに炊きたい・・・」というニーズもあろうかと思います。
そういう意味では「正しい方法」は玄米を食べる人の数だけある。と言えるのではないでしょうか?
では、私が思う理想的な炊飯方法をお伝えしますね。
↓
ステンレスの厚手鍋で問題ありません。
というか鍋であれば素材を問わず何でも炊けますのでご安心ください。
ただし、鍋の素材によって火加減や炊くことができる量が変化するだけで、
玄米がα化(米デンプンが糊化する=ごはんになる)するルールはみな同じです。
<下準備>
1)浸漬時間 6〜7時間 →このお米のことを「浸漬米」と呼びます。
2)水加減(炊飯水の量) 浸漬米の重さ×1.3〜1.35 ※重量でコントロールします。
<炊飯>
1)8〜10分くらいで沸騰させます。
金属の鍋は熱伝導がいいので最初は弱火からはじめ徐々に強くしていく感じで火加減するといいです。
※早すぎるとアルデンテ、遅すぎるとお粥になります。沸騰までの到達時間が炊飯の肝なのです。
※沸騰するまでに鍋内の熱ムラをとるため、蓋を開け一度撹拌するとよりいいです。
2)沸騰後
中弱火~中火にして沸騰を維持します。このまま煮ていきます。
20〜25分ほどすると、香ばしい香りや、鍋の中からブツブツ、プチプチという感じの小さな音がします。
ここで火を消します。
3)再加熱
消火後5分ほどしたらもう一度強火で20〜30秒ほど再加熱します。
4)蒸らし
15~20分ほど蒸らします。
5)撹拌
蒸らしが終わったら蓋をあけ、しゃもじで撹拌しご飯に空気に触れさ表面をコートします。
上記の炊飯方法は江戸時代中期に完成されたとされる羽釜による炊飯方法(炊き干し法)・・・
「はじめチョロチョロ、なかパッパ、ブツブツいうころ火をひいて、さいごにひとつかみの藁燃やし、赤子泣いても蓋とるな」
を踏襲し、現代風にチューニングした方法です。ご参考にしてください。
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画像:羽釜によるスイハニング(炊飯)@アンコメ
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旅する羽釜 9 最終回 | |
2013年7月8、9日、フランスのシャンパーニュ地方にある中世の古城、フェール城で行われた能フェスティバルに参加し、羽釜スイハニング(炊き)し、おむすびをつくってきました。これはそのレポートです。
旅する羽釜 9 最終回
22時、日が暮れてきた。
辻くんら舞台製作チームらと美酒に酔い、このまま朝まで・・・
と、行きたいところだが今晩中にランスへ戻らなければならない。
タクシーが来るまでにダッシュで撤収しなくてはならなかった。
釜洗いを洗い方、田中隊員に任せ、僕は釜戸の片付けをした。
集め過ぎた薪(笑)を、もとの場所へ運び、ブロックももとの場所へ運ぶ。
23時すっかり暗くなり、ポケットから懐中電灯を取り出し口にくわえて
釜戸のあった場所の灰の上に砂をかけ元通りに整地した。
立つ鳥跡を濁さず。
ESI隊員としてスイハニストとしてちゃんとせにゃ!
と、ブツクサ言いながらヘロヘロになりながら片付けをした。
羽釜としゃもじ、ボールとザル、計りをスーツケースしまい撤退の準備完了。
気づいたらものすごくお腹が減っていた。
スタッフ用の食事がシャトーから運ばれるやいなや、とにかく喰った。
何を食べたか覚えていないがあの軟水のペットボトル片手に喰ったことは覚えている。
タクシーがやって来て、荷物を積み、辻くんら舞台製作スタッフやKさんに手を振って別れた。
朝来た道はすっかり暗くなっていてフランスに来てはじめて星空を眺めた。
タクシードライバーはおじさんで、何も言わずにラジオの深夜放送を聴いていた。
フランス語でもあの雰囲気はニッポンのそれと同じに聞こえた。
我々4人はいろんな話しをしていたはずなのだが、僕にはこれもまた何も記憶がない。
興奮は一瞬のうちに過ぎたが、その余韻に酔ってる感じがした。
そして深い眠りに落ちた。
翌朝、あの美味しい朝食を済ませたあとにノートルダム大聖堂へ行った。
そしてミッション成功の報告をした。
学生の聖歌隊が歌うポピュラーミュージックが成功を祝福してくれてるようだった。
こうしてESI初の海外ミッション、フェール城スイハニングは、紆余曲折しながらもなんとか無事やり遂げることができた。
何のために羽釜持ってまでフランスまで行くんだ?と言う友の問いには、まだしっかりと答えることができない。
しかし、なんとなくだが、新たな何かを生み出すための旅になる予感がしている。
それがどんな景色なのかは今はまだはっきりしていないだけだ。
けれども、僕のテーマである「田んぼからお茶碗まで、その先へ」
つまり、「稲を育て、米を商い、飯を喰い、そして人となる」
このとても素晴らしい営みを言葉や文字を使わず説明できるとすれば、
酔狂とはいえこれは粋で楽しい作業であったと自負したいのだ。
きっとまた羽釜が世界を旅するだろう予感とともに。
おしまい。
このミッションの成功にご協力いただいた多くの関係者の皆さまへ。
この場を使って感謝申し上げます。
本当にありがとうございました。
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画像:旅する羽釜、フェール城にて。
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旅する羽釜 8 | |
2013年7月8、9日、フランスのシャンパーニュ地方にある中世の古城、フェール城で行われた能フェスティバルに参加し、羽釜スイハニング(炊き)、おむすびをつくってきました。これはそのレポートです。
旅する羽釜 8
一釜目、結びの神(白米)は無事スイハニング、そしておむすびができた。のんびりする間もなく、即羽釜洗い。 洗い方、田中隊員にその指示をする間もなく、すでに彼は水場で洗いに入っていた。
釜洗いが終われば即、二釜目巨大胚芽米カミアカリスイハニングの準備。
カミアカリ(玄米)が完全浸漬したかを米粒をひとつつまんで割ってみる。芯まで給水されていることを確認。
気温は30度以上(体感)であるから7時間近く浸漬しているから問題ないはず、
むしろ爆発的な酵素活性で食べた時の強い風味を期待した。
気がかりなのは炊き上りのタイミングをいつにすべきか?これが最後の課題だった。
Kさんが交渉し段取りしてくれたレセプション会場でのおむすびブース設営。
せっかくいただいたチャンス、ベストコンディションで食べていただきたい。
カミアカリスイハニングには蒸らしも含め50分、おむすびつくるのに20〜30分・・・。ちょっと時間が掛かり過ぎる。
そこで、おむすびをつくりながらサーブすることを考えた。
そのほうが、おむすびやごはん、カミアカリそのものにも興味持ってもらえるような気がしたからだ。
それはいつなのか?
能の舞台は19時スタート、21時頃にすべての演目が終了する(らしい?)。
そこで20時点火と決めた。
一釜目、結びの神(白米)スイハニング時に点火後の火のまわり方が若干もたついたこともあり、
薪を松のみに変更するべく田中隊員と二人、松林を歩きながら枯れ枝を拾った。
何せ35分間燃やし続けなくてはならない。足りなくなる憂いを払拭すべく集めに集めた。
点火までの間、始まったばかりの能の舞台を眺めた。
「羽衣」
鼓と笛の音が古城に響き渡る。
白夜の舞は時間と空間を超えて過去や現在、あの世かこの世かもさえも曖昧になっていく。
そんな印象をいだく不思議なひと時、これを幽玄というのか・・・。
国内でもこれだけの能楽師たちの共演はないとのこと。
もう少し見ていたいと思ったがすでに点火10分前、田中隊員と僕は幽玄から釜戸のある現場へ向かった。
飛行機の搭乗口で手にしたニッポンの新聞に点火、
その火が松の小枝をパチパチと音をたてながらコンクリートブロックでつくった釜戸全体に広がっていく。
火の勢いにあわせて少しづつ太い枝をくべていく。
むやみに火力をあげないで抑えながらパワーアップしていく感じ。
数回攪拌しながら9分で沸騰。
そこから六掛けくらいの火力で水がなくなり香ばしい香りが立つ時まで火力を維持しひたすら待つ。
20時35分、時間どおりにいい香りといい音がしてきた。
同時に火を引き、置き火で蒸らす、約5分後に集めておいた松葉を釜戸に放り込む。
松葉が一瞬燃え上がったらあとは待つのみ。
舞台から聞こえてくる「土蜘蛛」のお囃子をBGMに我々だけの薪能スイハニングを楽しんだ。
蒸らし時間に釜を持ってレセプション会場のおむすびブースへ移動。
20時50分、蓋を開け速攻で攪拌、カミアカリが空気に触れた瞬間、明るみを帯びた。
準備万全のむすすび方二人が熱々のカミアカリを塩でむすんでいく。
ひと口大の塩むすびが竹の器の上に並んでいく様が美しい。
舞台が終わると同時に大勢のお客様がレセプション会場にやってきた。
シャンパンを呑みながらおみすびをほうばるムッシュ、
セボンッ!と、にこやかにお友だちの分までテーブルに運ぶマダム。
イギリスから来てくれた日本人小学生は無言で6個食べたてくれた。
シャトーのシェフからは調理法を事細かく聞かれ、あたふたしながら相変わらずのブロークン英語で答えた。(たぶん伝わってないな)
そんなこんなであっという間に一升五合(2キロ)のカミアカリは消え去った。
ひと段落してみんなで記念撮影していたら
となりのブースにいたシャトーのスタッフの方から泡のお酒を手渡された。
シャンパーニュに来てはじめてのシャンパン。
ミッションコンプリート!ささやかな祝杯をあげた。
つづく
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画像上:カミアカリおむすび@フェール城。
画像下:白夜の舞「羽衣」
画像中:レセプション会場。
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旅する羽釜 7 | |
2013年7月8、9日、フランスのシャンパーニュ地方にある中世の古城、フェール城で行われた能フェスティバルに参加し、羽釜スイハニング(炊き)、おむすびをつくってきました。これはそのレポートです。 旅する羽釜 7
忙しい辻くんをつかまえ、スイハニングとおむすび作りの許可をイベントのトップの方に掛け合ってもらうことを頼んだ。いくらなんでも無許可で火を焚いたり、食べものを出すわけにはいかない。何せフランスの政府関係者などVIPと呼ばれるゲストが150人位集まるというのだから・・・。辺りにはゆるい感じながらも、そろそろセキュリティチームが展開しはじめている時だった。
辻くんら2週間前に現場に入った舞台製作チームは、これまで様々な苦労を乗り越えてやっとこさ舞台を作ってきた経緯から、一筋縄ではいかないと思ったらしく、その日焼けた顔を一瞬曇らせた。すると通訳のKさんがその交渉にも同行してくれることになり、二人はメイン会場へ歩いて行った。僕が勝手にミッションと称しフェール城に羽釜を持ち込んでまでスイハニングできるか否か?その是非が決まるまで従業員宿舎横の椅子に腰掛けて待った。
いつも舞台の前には必ず「おむすび」たべるんだよ・・・。渡仏前、大倉源次郎さんと対話した時に、こんな風におっしゃっていたことを思い出し、いつもの空想をした。
米が炎のチカラででアルファ化(糊化)し、ごはんになる。ごはんは、人の手によって「おむすび」になり、その「おむすび」をたべた人の中で糖に姿を変えていく。その糖が体内のあちらこちらで燃えはじめる。筋肉を動かし、拍子を刻む。こうして米粒は鼓の響きになる・・・。
クルマで出かけていた大倉さんが帰ってくるやいなや僕にこう言った。長坂さん、舞台の前に能楽師全員分の「おむすび」よろしく頼みます・・・。承知しました!まだスイハニング許可は下りてなかったが張り切ってそう答えた・・・笑。それから待つこと30分、辻くんが戻ってきた。
結果が良ければいい・・・。それが回答だった。
結果はいいに決まっている。ここまで来て良くない結果のイメージなど微塵もない。疑う余地など何もないのだ。これでようやくスイハニングができることになった。次は薪の調達と釜戸づくり。するとKさんがそれも段取りしてくれて庭師風の感じの方と薪と釜戸に使うコンクリートブロックの在りかまで連れて行ってくれた。そこには暖炉に使うために積まれた大量の薪、奥の作業小屋にはコンクリートブロックが10個ほど置いてあった。田中隊員とふたり、薪を割り、ブロックを運び釜戸を作った。アウェイから一気にホームなったような気分。30分もかからないうちに薪と釜戸の準備ができ、いつスイハニングしてもいいような状態まで準備した。
その時だった。背の高いシャトーの支配人が大またでやって来た。威圧感バンバンで・・・。どれくらいかかるのか?とマジ顔で言った。最初はクレームかと思ったが、すぐにそうじゃないことがわかった。よくよく聞くと、「あと何時間後におむすびを出せるのか?」という質問だった。どうやらフランス政府の要人6人のためにダッシュでおむすび作ってくれ。という指示だった。僕は「40分後」と答え、すかさず釜戸に火を入れた。支配人は相変わらずのマジ顔でサムアップしてから、大またでシャトーに戻って行った。
一升五合(2キロ)の白米(結びの神)に昨日苦労して調達したピレネーの軟水、焚きつけ用には周辺に自生していた松の枯れ枝がちょうどいい燃え方をした。沸騰前に一度攪拌をし8分強で沸騰。いい調子だ。ここから火を弱め沸騰維持。「ブツブツいう頃火を引いて」のとおり置き火にする。それから数分後、枯れた松葉や小枝を釜戸に放り込み「最後に一束の藁燃やし、赤子泣いても蓋取るな」から待つこと10分後、蓋を開け一気に攪拌。空気に触れたごはん粒はピカピカと光り始めた。
その一部始終を見ていたのがこのシャトーの厨房で見習いとして働きはじめたというウィリアムくん17歳。さっそく炊き立てを食べさせた。どうだ?セボンか?セボンだろ!とセボン攻撃すると、ニヤニヤしながらひとことセボンと言った。
炊けたご飯をボールに移すと同時に、おむすび方として今回のミッションに同行した2人がピンポン球大のおむすびを結んでいく。手水はピレネーの軟水、塩は水を調達した店で買ったちょっとくすんだ色のゲランド。完成した塩むすびは舞台と同じ足久保の竹で作った器にそなえ、薪に使った松林に敬意を評し松葉を設えた。
ウィリアムくんには、初めてつくったおむすびは、自分で食べなくてはならない!これはニッポンの風習なのだ!とホラを吹き、ほぼ強引に食べさせてしまった。すると彼の口から自然に「セボン」のひとことが出た。やったね!それから彼にも手伝ってもらいながら、たくさんの塩むすびをつくり、大倉さんはじめ能楽師全員分の「おむすび」はもちろん、フランス政府の要人6人のための「おむすび」も予定どおりに納品できた。
さてと次はいよいよカミアカリスイハニング。まずは羽釜を洗うところから・・・。
つづく
Kさんへ
この度は本当にありがとうございました。当日はあっという間に時間が過ぎ、ゆっくりと歓談する間もなくフェール城を去り、ちゃんとお礼を言えずたいへん失礼しました。帰国後このレポートを書きながら、あの時のKさんの瞬発的判断と交渉が、このミッション成功の決め手でした。当日はそれがとても自然な流れのように感じていましたが、今思うととても幸運だったと感じています。本当にありがとうございました。 (ESI長坂潔曉)
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画像上:従業員宿舎横に釜戸完成、薪も準備よし!
画像中:フランス政府の要人のための塩むすび。竹紙の上に竹の器、そして竹紙でつくった折づるも添えて。
画像下:ウィリアム君と結び方のみなさん。
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