日曜日の夕刻、松下から電話が入る。
「糠、何本ある?明日は雨らしいから、これから取りに行っていいか?」
たっぷりとは云いがたいが、ここ2週間ほどで貯めた分の糠はある。聞けば自家製造する肥料の一回分で使用する分くらいにはなりそうなので、取りに来ることになった。
電話を切ってから1時間もしないうちにディーゼルエンジンの音が聞こえた。あたりはすっかり暗くなっていた。
糠タンクから30キロほど捻り出して、全部で300キロほどを15キロづつに詰めて松下のトラックの荷台に積んだ。
「ここんとこ雨ばっかりで、しょうがね〜。例年よりも3日遅れてるよ・・・」
半年に及ぶ稲栽培の中で、仕事量がもっとも多く、同時に精度も求められるこの時期に、天候で思うように外仕事できないのは、少し辛い。ただそんな時こそ屋内でできる仕事を段取り良くやってしまうことが、天候回復後のアドバンテージとなる。
必要な時に、必要な資材と道具がすべて揃っていれば、どんな事態に遭遇しようと、慌てず対応できる。だから常に先の先をイメージしながら、今何をすべきかを考えるのだ。
以前、野球のイチローか誰かが、こんなニュアンスのことを云っていたことを思い出す。
「次にどんな打球が飛んで来るのか?ありとあらゆる可能性をイメージする。そこでイメージしておくと初期動作がコンマ何秒早くなる。だけどイメージし過ぎて気持ちが悪くなることがある・・・」
どんな仕事も同じかもしれない。引き出しの中のイメージ量が良い仕事を実現する上でのアドバンテージとなるのだ。まあ気持ち悪くならない程度で良いとは思うけれど。
画像上:トラックに整然と15キロ入った糠袋を積む。ただ積むのではなく、下ろす時をイメージして積む。
画像下:コーヒーを飲み、ひと休みしてから帰っていった。20時だった。