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1月11日号 人の暮らしの日常。
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トンネルを抜けるとそこは焼津。静岡駅から普通列車でたったの20分で田圃のある藤枝到着。そこから自転車散歩で数ヶ所に散らばる田圃を一枚一枚見て廻る。一見退屈な日常風景の中にあるけれど、「太陽エネルギーの固着物としての米」という視点だと世界が変わって見えるから面白い。鉄道、自転車、田圃、人、すべてが有機的に繋がって見えてくる。

 2009年、平成21年になりました。アンコメ米作りプロジェクト、今年もどうぞよろしくお願いします。

 さて新年早々ちょっとしたニュースが入ってきました。今年から有機農業を科学の力で解き明かす研究が始まるようです。それもが。詳細はまだ聞いていませんが、全国各地で実践されている有機農業生産者を数年掛けて調査するらしいのです。
これもたぶん平成18年以降の「有機農業の推進に関する法律」平成19年の「有機農業の推進に関する基本的な方針」がもとで始まった開発、普及、教育の一環かと想像されます。
松下からの電話によると、静岡県内では松下圃場もその調査対象になる旨の打診を受けているらしく、具体的には雑草対策の研究だとか。松下方式の抑草技術(取るのではなく、生えないようにする技術)について、如何にして雑草だらけの田圃を、除草剤を使わず草の生えにくい田圃に仕向けて行くか?個々の草はどんな条件で生えるのか、生えないのか?そのメカニズムを調査研究するらしいのです。
民間レベルでは個々に研究されていたことを、統一的に調査するという試みは始めてのような気がします。も具体的な形で有機農業の未来に関わり始めるということなのでしょうか。
そんな話しを聞いたら、急に田圃が見たくなった。連休の日曜日、ふらっと出掛けることにした。久しぶりに自転車で。

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半島型の畦。そこには立派な松、そしてお墓。

 「西高東低、典型的な冬型の気圧配置。その中を自転車で田圃まで走った。」と書きたいところだけど、あまりの強風で気持ちが萎えてしまい同じ自転車だけど輪行(鉄道+自転車)で出掛けることにした。
藤枝駅に降り立つと、風は静岡よりもさらに強く、変速ギアのない16インチの小径車は吹き飛ばされそうになりながら田圃を目指す
直線ルートだと風に対して直交するので、風に対してトラバース気味で前進する。そんなわけでいつも通らないルートを通ることで、面白いモノが見えてくる。畦に大ぶりな松の木と、お墓のある田圃。しかもその畦の形は、まるで半島のよう。
基盤整備される前の、かつての志太の風景なのか?「この土地に生まれ、この土地の土に還る」
字面を見るとえらくカッコイイですが、はそれがごく日常だったに違いありません。そんな人の暮らしの日常が、時空を超えて垣間見えてきます。

 「有機農業」
これからの時代の農業にとって間違いなく、その一握を担っていくに違いありません。しかし、有機農業日常の農だった頃、そこには人の暮らしの日常こそが、有機的な関係を持って営まれていたに違いなく、その繋がりの中できる最も無理や無駄のない選択の集積が有機農業だったはずです。さらに言えば、人はこの繋がりの中でしか生きることのできない不自由な有機体の一部だったのかもしれません。
最近ふと思うのです。そういう部分を置き去りにして、「無農薬無化学肥料栽培の看板が有機農業なのか?」と。私にとって、この点がちょっと腑に落ちないのです。
変えたくても変えられないような、その土地の有機体たちの暮らしの日常が、じつは「その土地ならでは」、あるいはその「土地らしさ」を生む、最も大きな要素ではないかと。それをあえて言葉した時、それを「有機農業」と呼ぶのではないかと。
こうして向かい風に吹かれながら自転車田圃へ行ってみると、そういうことをリアルに感じることができるのです。

 2009年、平成21年、どんな一年になろうとも、今を生きる人の暮らしの日常は止まることなく粛々と続くのだろう。

「松下×安米ヒノヒカリ」の田圃。刈り株から生えた「ひこばえ」もすっかり枯れ、白化したその姿が強い西風に吹かれている。周辺では春草の尖兵たちがすでに覇権を争い侵入を試みている。そのひとつひとつの草がいつ、どんなタイミングで発生し他の草とどんな勢力関係なのか?それら兵どもの覇権争いによって積み上げられた累々たる遺骸が作り出す土壌とはどんなものなのか?その土壌によって育つ稲とは?有機体たちの意図なき暮らしの日常が作り出す米の味、風味、触感とは・・・。知りたいことは山ほどある。「松下×安米ヒノヒカリ」の田圃。刈り株から生えた「ひこばえ」もすっかり枯れ、白化したその姿が強い西風に吹かれている。周辺では春草の尖兵たちがすでに覇権を争い侵入を試みている。そのひとつひとつの草がいつ、どんなタイミングで発生し他の草とどんな勢力関係なのか?それら兵どもの覇権争いによって積み上げられた累々たる遺骸が作り出す土壌とはどんなものなのか?その土壌によって育つ稲とは?有機体たちの意図なき暮らしの日常が作り出す米の味、風味、触感とは・・・。知りたいことは山ほどある。

2008年01月28日 [ 3780hit ]
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