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GAKKOPROJECT in 南伊豆中村さん

 

今年伊豆を舞台に行われているにGAKKOPROJECT。2回目の今回は南伊豆町でカミアカリ栽培をしている中村さんの農を学ぶプログラムが企画された。主催者の田邊さんが元カミアカリドリーム勉強会メンバーということで、松下さんも僕も全面的に協力することになった。なにより中村さんの成長を誰よりも楽しみにしてきた松下さんにとって、愛弟子の晴れ舞台は自分事のようにうれしいに違いない。田んぼも気になるが、中村さんのプレゼンをフォローしなくちゃ・・・なんて思ってるはず。かく言う僕も同じような思いで、この梅雨の晴れ間の素晴らしい一日を過ごしたことは言うまでもない。

かれこれ15年くらい前、中村さんが松下さんのところへ訪ねてきた日、ちょうど僕も松下さんの田んぼに居た。有機稲作に興味を持ち足繫くやって来る若者のひとりだった。当時すでにカミアカリドリーム勉強会は始動したばかり、情報に飢えていた彼は、我々から誘うまでもなく、会にやって来ては貪るようにして交流していた。以来、彼は勉強会が主宰するすべてのプログラムに参加している。つまり皆勤賞なのである。

だからといって、彼の農をもろ手を挙げて評価してきたわけではなかった。非農家ゆえに農業のほぼすべてのことに知見が足りず、そのことが大きなハンディキャップとなっていた。それに加え、南伊豆の環境(土壌や水など)が現代に求められる米質を実現するには、いくつかの問題解決への手立てが必要なのだが、それがなぜ問題なのか?その問題の意味すら気づくことができず、混沌した数年を過ごしているように見えた。

2017年(平成29年)秋、その年も中村さんから新米のサンプル米が送られてきた。品種は「あいちのかおり」さっそく試食すると、これまで試食してきな中でもっとも出来が良かった。その時、直感的に何かが変わったことを察した。そして平成から令和へ変わる2018年2月、松下さんが中村さんへカミアカリの種籾2キロを半ば強制的に渡す出来事があった。「おまえ何年勉強会に参加してんだ!いいかげん挑戦しろ!」松下さんの言いぶりは、たしかこんな感じだった。直後、中村さんは「作っていいでしょうか?」と伺いの電話を僕にしてきたので、こんな風なことを答えたと記憶している。「親分にやれと言われたんだろ、やるしかないだろ・・・賛成だよ。それに、あの『あいちのかおり』の出来映えなら、挑戦すべきじゃないか・・・」こうして中村さんのカミアカリの挑戦は始まった。

それから3年後、2020年8月25日夏の勉強会ツアーで南伊豆中村さんのカミアカリを見て回ることになった。「晒し者になる」と揶揄されるくらい目の肥えた勉強会メンバーが栽培中の田んぼに見入るのだ。そこで中村さんは、南伊豆の田んぼの良い点と悪い点を明確に説明し始めた。そして悪い点を改善するための手立てを皆の前で披露したのだ。後に僕はそれを「肉を切って骨を断つ戦略」と評し、そのアイデアに感銘され、この話題に触れる度に涙腺を緩ませている。

現代求められる質の米を生み出す上で水のコントロールは必須。必要な時は水を張り、必要でなければ水を抜く。水深も設計どおりコントロールできること。そのためには乾田化は基本のキなのだが、中村さんの田んぼは良くも悪くも水持ちがよく、肥料成分となる有機物も豊富。米でありさえすれば価値のある時代であれば、無肥料でもそこそこ収穫できる良いことだらけなのだが、求められる米質を狙おうと思うと、にっちもさっちもいかない。そこで考えたのが、田んぼの中に堀を築き排水機能を持たすこと。つまりそれは田んぼの面積が減ることを意味する。通常、暗渠を入れるなど、大掛かりな公共工事的な事業として行うような土木工事だが、中村さんは身を切ることを選んだ。彼らしい選択だ。

南伊豆という縁あって根付いた土地。その土地で自らができる方法で改善を試み、この土地ならではの最適解を導き出す。いつしかそれは本人が意図しないところで、お米の中に中村さんならではオリジナリティが醸される。稲作生産家なら誰しもが思う稲作一等地を羨むことや、最大公約数的な美味しさを羨むことではなく、足元にある田んぼで考え、そこにしかない答えを見出す。松下さんがそうであったように、中村さんもまた南伊豆で実践している。僕はこういう稲作を夢見てきた。それは今、目の前に現実のものとしてあるのだ。
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画像上:南伊豆中村さんのカミアカリの田んぼ。川の流れに沿って弧を描く姿はいつ見ても格好いい。
画像中:真打登場!左から中村さん、筆者、松下さん
画像下:僕はスイハニング(炊飯ing)担当。カミアカリ二升と、あいちのかおり二升を炊く。点火直前、ふと思い立ちカミアカリの水加減を手元にあったコップで三分の二カップ分減らした。なぜと言われて答えにくいがそう思ったのだ。その感は見事に功を奏し、仕上がったカミアカリは小気味いい食感となった。

 

2023年07月07日 [ 509hit ]
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