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アイガモロボ登場

 

草(雑草)が、ほとんど生えない田んぼづくり。つまり抑草技術において松下さんの腕前は多くの人が認めるところだ。春先から行う緻密な土木作業では、田んぼを徹底的に平らにすることと、安定した水深が得られるよう、しっかりとした畔を作ること。田んぼに水を入れてからは複数回行う代掻き等々・・・有機栽培に切り替えた30年前に嫌というほど苦しめられた草を、生えてから取り除く除草ではなく、草が生えるメカニズムを研究し、そもそも生えないようにするための抑草技術を磨いてきた。ところが10年ほど前、草が抑えきれない田んぼが現れはじめたのだ。原因は長年にわたり敵だと思っていた通称ジャンボタニシ(学名:スクミリンゴガイ)の減少だった。

養殖業者が持ち込んだと言われている南米原産のこの貝が、かつて用水路を経由して田んぼに広がった。当時、田植えしたばかり苗を食い荒らす被害を各地で起こしたのだ。松下さんの無農薬の田んぼも例外ではなかった。そこで松下さんは、苗を大きく育ててから田植えすること、喰われることを前提に厚めに植えること、水深の細かな調整をすることなどの方法で対処してきた。それらの工夫が功を奏しジャンボタニシの食害抑止ができたのだ。そればかりか代搔き後に、わずかに残った草をジャンボタニシが食べることで、敵だと思っていたこの貝が、思わぬ除草の担い手にもなっていた。松下さんの田んぼでは、この絶妙なバランスの上に彼のいう「抑草」が完成していたのだ。それに気づいたのは、彼の著作「ロジカルな田んぼ」が発表された2013年のことだった。

そしてこの年、異変が起きた。かつて大量にいたジャンボタニシが激減したのだ。ショッキングピンク色の卵もめっきり減り、景観も回復し良い傾向かと思うのも束の間、完璧に抑えていたはずだった草が、ところどころで見かけるようになったのだ。それは除草の担い手としてのジャンボタニシが減ったことで、絶妙と思えた抑草のバランスが崩れたことを意味していた。それでも持ち前の工夫と技術で、ある程度の草を抑えこれまでやってきた。しかしこの10年、田んぼの面積が徐々に増えいくにつれ、抑草の条件が整わない田んぼでは、草が抑えられない田んぼも増えていった。そんな時、ネットでも見たことのあるアイガモロボの実証実験の依頼があった。

6月4日実証実験がはじまった。2日前に田植えしたばかりの田んぼで実験をはじめた。じつはこのロボット、エンジニア氏の説明によれば除草ではなく抑草とのこと。田んぼを隅から隅まで移動しながら泥をかき回して光を遮断したり、発芽したばかりの草の定着を阻害したりして、草の発生を抑える「抑草ロボ」だという。しかもこのロボが仕事しやすいような田んぼの環境整備があってこその、アイガモロボだということも分かった。それは水田稲作にとっては「いろは」の「い」である、田んぼを平らにすることや、水を漏らさない畔を作ることや、指定された水深に管理すること・・・などであった。僕はそれを聞きエンジニア氏にこう聞いたのだ。

それらができていれば、雑草問題のほとんどは解決したようなものですよね。つまり基本となるこれらのことができた上でアイガモロボが最後の仕上げをするってこと?ですよね?

とかく草のことを他人にとやかく言われると素直に聞けないものだが、ロボが気持ち良く働いてもらえるように田んぼを整えることなら素直になれる。アイガモロボの肝はここなのだ。エンジニア氏曰く「ロボが働きやすい田んぼに仕立てることが生産者のインセンティブになっているみたいです。。。」じつはこのことで雑草問題の解決の道筋ができる。アイガモロボは、存在することだけで一定の効果を発揮するというわけだ。逆にこれらができない人にとっては、そもそも無農薬栽培の資格がないということも意味する。

これから3週間、アイガモロボは日がある限りこの田んぼで活動をする。はてさてどんな結果になるだあろうか?

2022年07月28日 [ 545hit ]
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