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令和三年産を食す。(3)

 

「きぬむすめ」が入荷してから4か月、「ハツシモ」が入荷してから3か月半、「にこまる」が入荷してから3か月と少し、あらためて「カミアカリ」以外の令和3年産の松下×安米プロジェクト米を食べながら、印象などを書いてみることにする。2回目は「ハツシモ」です。

松下×安米プロジェクト米「ハツシモ」

岐阜県のお米というイメージであるハツシモは、大粒でしっかりとした歯ごたえと、一瞬さっぱり味と思いきや、徐々に湧いてくる味わいの変化が作る独自性は、コシヒカリ系や低アミロース系の美味しさとは異なる方向性の美味しさを気づかせてくれます。

じつはこのプロジェクトでは、当初からこの方向性の美味しさも追及すべく「あいちのかおり」「あさひの夢」など「ハツシモ」と同じ系統(朝日系)のお米を栽培していました。じつはこの系統のお米は、東海地域の気候風土に相性が良い品種であり、また東海地域の人々にも馴染みのある食味感を持ったお米として、長年親しまれてきました。

そもそも地域に根差して育成されてきた品種は、本来的にそこに存在する理由があり、またその地域ならではの美味しさも培われてきたはずです。ところが近年の画一的な美味しさ信仰やコスト削減の栽培が、品種が本来持っている魅力を損ない、人気に陰りがあるように思えてなりません。その中にあって「ハツシモ」は、この系統の中ではエース的存在で、なおかつ一般に受け入れやすい食味のポテンシャルを有していることから、栽培してみたいと考えてきた品種でした。

そして令和3年、栽培のチャンスがやってきました。かねてから取引のある飲食店の献立のために「ハツシモ」が必要になったのです。種籾は稲オタク松下さんならではネットワークで品質の良いオリジナル(現行岐阜県で主に栽培されているBLでない)を入手し栽培しました。ところが、登熟(成熟)期後半(9月後半)、真夏のような熱波に襲われたのです。田んぼでの姿は見事なものでしたが「きぬむすめ」同様、収穫時では気づかなかったダメージをわずかに受けていました。

10月12日入荷、わずかなダメージと大粒であることも踏まえ「きぬむすめ」と同じく2段階で精米。翌13日に炊飯器による炊飯を試しました。その質感は残念ながらNG。ハツシモの特徴や魅力はまったく再現できませんでした。じつはこの結果は想定内だったので、翌日から鍋釜によるマニュアル炊飯へシフトしました。じつはこの米を納品先の飲食店は、そもそも炊飯器は使用しないため、当初から最も特徴が出る加熱方法を模索する予定だったのです。

いつもどおり浸漬時間は2時間、加水重量は浸漬米重量×0.9を固定し、沸騰到達時間と蒸し時間を調整していく。通常10分位で沸騰させるところを、これまでの経験値を踏まえ約8分位から30秒刻み位で短くしてみた。(これらの調整は熱源、鍋釜の素材、炊飯量が異なっても一定であるように心がけます)結論から言えば、沸騰到達時間はおよそ7分30秒、蒸し時間は15分でイメージの食感と味わいが再現できました。(なお、炊飯量が多く熱源のパワーが足りない、あるいは寒冷時には加水重量比を0.85や0.8まで下げる工夫も検討)この味わいをマイコン制御の一般的な炊飯器で再現するのは、ちょっと難しい気がします。というわけでマニュアル炊飯大好きの自称スイハニスト達向きのかなりマニアックな米です。しかしコシヒカリ系一辺倒の美味しさの偏重へのアンチテーゼの意味としても面白く、さらに炊飯技術で美味しさを作ると考えれば、手をかけるだけの楽しみの深い米ともいえるのではないかと思います。

 

2022年02月17日 [ 231hit ]
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