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田んぼからお茶碗まで、理想の一片。

 

平成13年(2001年)松下と僕が取り組み始めたこの有機米栽培プロジェクトは今年、平成31年で19作目の作付けとなる。その平成31年産は秋がやって来て、米が収穫されると令和元年産米と呼ばれることとなる。そんな時代の節目に、ある料理人が田んぼにやって来た。

後藤しおりさん。

後藤さんとは4年ほど前、このプロジェクト米を愛用している友人の小さな定食屋「一汁三菜(東京南青山)」からご縁をいただき、以来ご贔屓いただいているお客さまです。こうした料理人さんとの関係は、僕が目指している「田んぼからお茶碗まで」つまり、稲を栽培し米を生み、その米をご飯に仕立てるまでの「稲米飯」全てのことを、繋がった一つの事として仕事をすること。それが現実となってる理想形のひとつです。

後藤さんはこの4月、イタリアで行われた家具の祭典ミラノサローネで、あるメーカーのレセプションで巨大胚芽米カミアカリを献立に加え提供するなど、熱心なカミアカリファンの一人でもあるのです。そんなことから彼女の田んぼ訪問は、この何年かの念願で、ようやく今日その願いが叶ったわけです。この時期、松下は、田んぼの整備とぼかし肥料の製造、加えて種まきの準備、それら作付けの下準備を同時並行的にやっている最中ですが、今日は午後から用事とかで午前中はオフ。そのタイミングでの訪問となりました。

 

「これは焼津にある鰯節や鯖節を作る工場から買ってくるんだよ。製造過程で出てくるカスの部分ね、つまり産業廃棄物なんだけどね。それに玄米茶を製造する工場からも煎った米のカス、それにこれは抹茶工場から出たカス、緑色でしょ。それら有機物に生糠と糖蜜、それに複合菌類を加え攪拌器に入れて混ぜ込むわけ。できたものをこの船状の囲いの中に入れ、電熱線で少しだけ加熱しながら密閉状態で10日、これをぼかし肥料っていうんです。」(松下)

後藤さんにとっては、初めて聞くことばかり。さぞや困惑するかと思いきや、理系の彼女は面白がって聞いています。

「なんで密閉するんですか?」(後藤)

「うん、菌には空気を好むヤツと好まないヤツがいてね。田んぼは水を貼ると土壌は空気が届かない密閉状態になるでしょ。その環境でも菌類に活動してもらわなきゃならない。そこで空気を好まない菌、それを嫌気性菌っていうだけど、こうして密閉し空気に触れさせない環境で育てているわけよ・・・」(松下)

 

わずか3時間ほどの滞在だったが松下の稲作の一片に触れた後藤さんは、すっかり松下とその栽培の奥深さ緻密さに感化された様子だった。この後、静岡に戻りアンコメで稲米飯について夜までじっくり語らいました。続きも見たい知りたいというわけで、これから時々田んぼにやって来ることなりそうです。


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画像上:カミアカリ発見の田んぼにて
画像中:土壌のこと、稲の生命生理のこと、話は尽きることがない。作業場にて
画像下:緑肥となるレンゲは花盛り。マメ科植物レンゲは、根に寄生する根粒菌によって空気中の窒素を固定する。花盛りの今頃もっとも窒素量が多くなることから、田んぼごとに必要な窒素量をイメージしつつ鋤き込むタイミングを微調整している。

2019年04月21日 [ 3367hit ]
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