37℃、予想した以上に今日は危険さも感じるほどに猛烈な暑さ。
その中、先日の新潟出張で知り合った妙高市の農家Yさんが松下の田んぼを見たいと訪ねてきた。
Yさんはロジカルな田んぼの熟読者、ゆえに聞きたいこと確認したいことが山ほどある。
ゆえに、かなりの「熱」を帯びての訪問なのだが
標高2~300メートルの高原地帯からやって来たYさんにしてみれば、
藤枝の、この信じられないほどの暑さに、思わず出た言葉が「あっついですね~」だった。
― いいな~ちょうどいいな~
すかさずその標高を聞いて、松下が羨ましいそうにこう返した。
暑過ぎのニッポン列島で、コシヒカリを栽培するにはに理想的な標高だからだ。
思えば15年前、コシヒカリの栽培を止めた理由はここにあった。
気温によって効く効かないかが、計算しずらい有機肥料での早生品種コシヒカリ栽培、
食味と品質向上を目指す上で高温との駆け引きはあまりにもリスキーだった。
現在栽培している「きぬむすめ」「にこまる」に続くことになる中生、晩生系品種(暑さのピークを過ぎてから9月以降に成熟期を迎える品種)の栽培はそれゆえの選択だった。
― ここは草が完璧に抑えられている田んぼなんだけどね・・・
Yさんを最初に案内したのはカミアカリの田んぼ。
抑草とジャンボタニシの食草のバランスが調和している。
言われなければ除草剤が入っているかのように、雑草がほぼ完ぺきに抑えられいるこの状態は、そうどこにもある光景じゃない。
それ以上に稲の姿がいい。芸術品と言ってもいいほど、田んぼ全体が放つそれがじつに神々しい。
じつは僕がYさんの田んぼを訪ねた時に、Yさんに訊ねられた理想とする稲の姿の話しをした時に
この田んぼと、会津の菅井さんの田んぼの話をした。
― あたりまえのこと(田んぼを平らにする)をするってこういうことか・・・
目の当たりにしたYさんが目を光らせながら言った。
なぜ平らでなくなるのか?どうやって平らにするのか?
Yさんと松下の畦傍談義は気温以上にどんどんと白熱していった。
― それじゃあダメな田んぼ見に行こうか・・・
工場裏と呼んでいる田んぼへ行った。
松下が偉いと思うのはダメ田んぼもちゃんと見せるところ。
格好いいところだけ見せるだけでなく、失敗作も見せてその原因と今後の戦略を語り訪問者と一緒に考える。
言葉にすれば簡単そうだけど、案外できないものだ。
もちろん、訪問者の「熱」あってこそ、つまりYさんの「熱」は、相当のものだったというわけだ。
別れ際、となりのコンビニへ行き、皆でソフトクリームでクールダウンをした。
夕暮れ時とはいえ、外気温はゆうに30℃超え。
とはいえ、満たされたような表情のYさんの「熱」は幾分揺るんだ様子だった。
松下の田んぼもYさん同様、夜温はしっかり25℃以下に下がってほしいところ。
早生品種はこれから登熟(成熟)本番、まだまだ目の離せない日が続く。
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画像上:カミアカリの田んぼ、真夏の日差しを浴びて立つ姿は凛として美しい。
画像中:カミアカリは9月中旬に収穫予定。
画像下:抑草技術の実験田。コナギ(田んぼに生える雑草の一種)は芽を出したが根の生長を抑えることができた。