錬金術。

 

種まきからたった半年で黄金原。「これはまるで錬金術だな・・・」と、毎年この光景を見るたびに思う。色から感じるイメージもさることながら、一粒が1000倍(栽培方法にもよる)にもなるのだから錬金術と言ってもあながち間違いでもない。半年で1000倍になる金融商品なんて、ちょっとヤバい感じもしなくもないが、この列島で社会ができた原動力はまさしく稲の錬金術的インフレーションに違いない。

昨年のことを思うと今年の出来は申し分ない。昨年は9月の登熟時期に長雨とそれにともなう日照不足と低温に悩まされた。とくに中生品種「きぬむすめ」は、もろにその影響を受けた。収量が減るばかりか食味的にも味がのらなかった。それでもどうにかこうにか商品としての着地点に辿り着いたのは、そもそも収量を求めず、質を最優先に稲の生命生理を何より優先する松下の考えが功を奏したものだった。それと、もうひとつ強い味方になったのが品種のポテンシャルの高さだ。近年開発された「きぬむすめ」や「にこまる」に救われたと言っても過言ではない。とくに高温に強い品種として開発された「にこまる」が低温にも強さを発揮したことは思ってもみない出来事。まさに僥倖だった。ここでも何度となく書いてきたが、気温に関係なく効果が期待できる化成肥料による栽培ならまだしも、有機肥料による栽培は微生物の活性あっての栽培のため、どうしても気温に左右される。それらをダイレクトに受けず、言わばバッファ(干渉、一時保管)機能を持ったかのような「にこまる」は、有機栽培で稲作をしている農業者にとっては救世主のようにも思えたのだった。

昨年(28年産)がこんな調子だったこともあり、29年産のプロジェクトでは「きぬむすめ」「にこまる」2品種を栽培することにした。(永らくご愛顧いただいた「あさひの夢」は残念ならが降板することにしました)この2品種であれば、どう転んでもストライクゾーンを外すことはないと踏んだからだ。ところが今年は7月~8月日照不足に悩まされた。8月のレポートでも書いたように、こんな体制でも弱気になるくらいに真夏のお天道様を見る日がほとんどなかった。ただ救いだったのは、そんな空模様ながら気温は平年並みにあったことだ。そのおかげか微生物の活性もそれなりにあり無事に生長してくれたのだった。先に収穫した「きぬむすめ」はたいへん出来が良く、食感はもちろん味ものっている。過去最高の出来と記憶している27年産を彷彿のする出来映えだった。次は「にこまる」であるが、目の前に広がる姿からすれば、たぶん文句のない出来だと思われる。まあ、食べてみるまでは安心はできないのでありますが・・・。

畦傍の「にこまる」の穂を手にとって穂先を見る。枝粳(しこう)と呼ばれる籾(米)の付く枝、その先端部分の色が抜けつつある。これはもう数日で適期であることを知らせている。天気予報をよれば週末は雨。週末までには収穫することだろう。というわけで僕にとっては今日が今年の黄金原の見納めらしい。
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画像上:「にこまる」の穂の先端部分。枝粳(しこう)から緑色が抜け始めている。
画像中:これが錬金術と言わずして何というべきか!
画像下:美しい仕上がりにうっとりとしてしまう。

2017年10月10日 [ 241hit ]
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