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梅雨の始まり
 
 
かつては梅雨が嫌いだった。
大好きな5月の後のじめじめした雨。
オートバイに乗っていた頃はもっとも苦手な季節だった。
そんな気分を梅雨も察するのか、バイクに跨る頭上にはいつも雨雲が寄り添っているような気さえした。
 
ところが最近は悪くないと思えるようになっている。
むしろ好きかもしれない。
毛穴が開き、皮膚が周りの空気と溶けるような感覚。
梅雨と自分の区別があいまいになっていくことの心地よさ。
 
憂鬱だったグレーの空が悪くないと思えるようになった。
降るか降らないかはっきりしない曖昧な感じ。
そのグレーの空を眺めながら、いずれやってくるだろう青空を想うこと。
うっかりして傘を忘れて出掛け、びしょ濡れで帰る時の、あの何ともいえない開放感。
今は雨の季節の到来を満喫できるようになった。
 
そんな僕も、いちおう大人の年齢なので数年前に折りたたみの傘を手に入れた。
オリーブグリーンのそれはなかなかのお気に入りで、とてもコンパクト。
ところが、いざ出番となった時もやっぱりコンパクト。
梅雨の始まりに早速さしてみたものの、思いも寄らないたっぷりの雨で見事に濡れた。
 
そんなびしょ濡れの夜道を歩くのもなかなかいい。
そんな気分を梅雨も察するのか、夜道を歩く頭上にはいつも雨雲が寄り添っているような気がした。
 
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Donald fagen - Walk between raindrops
 
2012年06月14日 [ 3488hit ]
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