さえない髭オジサンの、さえたはなし。
いつもフラッとやってくる髭オジサン。
この方、有名人なので、たぶん名前を云えば、「ああ知ってるよ」いう方もあろう。
じつは、昨日と今日、二日に渡ってやってきた。
ニコニコ笑いながらアンコメサロンに入ってきて、筆を取り、ササっと描く。
昨日のそれは、じつに見事で、僕が目撃した中では傑作と云っていい具合だった。
ところがどうだろう。
今日のそれは、じつにさえない。
何度も何度も描き直すのだが、どうにもならないらしい。
いいかげんあきらめたと思う頃、コーヒーをお出しした。
これが世に言う、「カフェアンコメ」というヤツである。
「ああ〜おいしい」。髭オジサンはため息のような声を吐く。
その声というか息というか、判別のできない音声から、さえたはなしのはじまりである。
「アンコメさん知ってるかな・・・中島敦の『名人伝』」。
「いや、知りませんよ」
「きっと好きだよ」
「で、どんな話し?」
「弓の名人になろうとする人のはなしでね・・・」
窓の水滴を眺めながら、髭オジサンは、僕の好きそうなはなしをしてくれた。
求道者の美学。
土曜日の深夜、Sさんの語る「エア茶会」。あれも、えらくさえていたけれど、
さえない髭オジサンの「名人伝」も、Higher Groundな感じで、さえにさえまくってた。
髭オジサンへ、
またお越しください。
今日はこれかいね。Stevie Wonder Higher Ground
( 米屋のいい訳 )
2010年09月30日 [ 3748hit ]