8月25日(火)第25回カミアカリドリーム勉強会in南伊豆を開催しました。コロナ禍の今、開催を中止することにためらいもありましたが田んぼ見学と日帰りのみの企画とし内容を大幅縮小することで実施しました。なお、このレポートは勉強会最年少メンバー、目下稲作農家を目指し修行中の松浦直矢さんによるものです。
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今年が初参加のカミアカリ勉強会は、静岡県伊豆半島の最南端、南伊豆町のカミアカリ生産者である㈱アグリビジネスリーディング中村さんのもとで行われた。こういうご時世にも関わらず、開放的な田んぼを巡り行われるこの勉強会には、十数名の参加者が集まった。
勉強会はまず、中村さんの作業場見学から始まり、毎回恒例の地元神社へのお参りを済ませ、川下の晩成品種の圃場から、川上の早生品種の圃場へと遡上していく。にこまる、きぬむすめ、コシヒカリ、カミアカリ、そして愛国の順に田んぼをめぐれば、それぞれが少しずつ異なる条件の中で栽培されていることがわかる。南伊豆に特有の鉄分の多い田んぼ、排水不良ぎみの田んぼ、川の水とともに生活排水が流れ込む田んぼなど、様々である。
田んぼ同様に、稲もそれぞれ異なる顔色をしている。開花期に悪天候を受け稔りの少ない稲、生育にばらつきが出て種取りをやり直す必要のある稲、隣り合うが一方は無肥料で一方は施肥済みだが生育がバッチリ揃う田んぼ。田んぼ巡りの途中、中村さんの10数年前からの師匠にあたるカミアカリ生みの親、松下さんから厳しい指摘が飛ぶ場面もありつつ、中村さんの田んぼが認められる場面もあった。もともと「こんなところのコメは食えたもんじゃない・・・」と言われた南伊豆地域で、中村さんは師匠たちに見守られながら目の前の問題をひとつひとつ解決しながら稲作を続けてきたのだろう。
田んぼ巡りの後は、地主さんのご自宅バルコニーで田んぼを見下ろしながらの休憩。地主さんの温かいおもてなしからは、中村さんが南伊豆で積み上げてきた信頼が垣間見えた。そして、源流を目指して青野川ダムへ向かい、最後は一気に青野川が注ぎ込む弓ヶ浜に到着したところで会はお開きとなった。
一人の生産者だけでも、様々な田んぼがあり、多くの品種の稲が少しずつ異なる管理の中で、少しでも稲の力を引き出せるよう栽培されている。それを網羅的に見させてもらえた勉強会はとても濃密なものだった。中村さんは今、自分たちで田んぼを整備し作付けするだけでなく、自分で作れる人に少しずつ譲り渡しているという。縁もゆかりもない南伊豆に移住してきた中村さんが、地域の人たちに認められ、さらに地域に貢献する側に回っている姿を見て、僕も早く先輩たちと同じ土俵に立ちたいと強く思った。
南伊豆からの帰り際、松下さんと長坂さんに出会ってすぐに言われた言葉を思い出した。「僕たちが30年かけてやってきたことを全部教えるから、君はそれを10年でできるようになればいい」。土俵に立てばそれを支えてくれる、ありがたい環境がここにはあるのだ。今回の勉強会の主役の中村さんは、まさにそれを体現したような人だった。
レポート:松浦直矢