
水田徘徊2017 森、磐田再訪 | |
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毎年、世の中がお盆休みのこの時期、静岡では早生品種コシヒカリが収穫時期となる。かつてはお盆が明けてからが恒例だったものだが、昨年28年産は10日から収穫が始まった。30℃を軽く超えるような気温の日が連続したためだ。アンコメにとっては毎年ここから新米キックオフ、出来が気になってしかたない。そこで毎年、お盆休み中の1日はドライブがてら森と磐田を訪ねることにしている。仕事気分が抜けた気ままドライブのため生産者さんにはアポなし。田んぼに行って会えればラッキーという具合でフラッと訪ねるのだ。 森の堀内さんを訪ねると、田んぼにはまだ稲があった。まだ収穫していなかった。堀内さんが米の工場(調整乾燥、籾擦り、袋詰めをする施設)から出て来た。「この天気じゃ稲刈りできんな~これじゃまるで梅雨だもんな~こまったもんだや~」その言葉どおり、ここのところ真夏のギラギラ太陽を見たことがない。考えてみれば梅雨明け以降、夏らしい青空はほとんどなく梅雨のようなお天気が続いていた。おかげで例年よりもややゆっくりとした生長を具合だという。それでも稲は今すぐに収穫しても差し支えない色に仕上がっている。「晴れてくれればすぐにでも刈るんだけんど・・・」と堀内さん。どうやら明日、明後日も雨の予報。気温が低いのは人間にとっては楽だが、稲にとってはこの日照不足、我慢の時なのだろう。 堀内さんのところを後にし磐田の太田農場さんへ向った。太田さんは休業中だったため田んぼだけ見てきた。周辺とは明らかに違う色あい。そもそも薄めに移植しているから株間に余裕があることも「スカッと」見える原因でもあるが、実に良い色の抜け方をしていた。こちらも森町同様に、いつ刈っても良い状態だった。お盆休み明けの天気はどうなることやら?「カラッと晴れる夏の青空よ早く来~い!」 画像上:こうべを垂れる森町堀内米コシヒカリ
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水田徘徊2017 長野県伊那谷ザライスファーム | |
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伊那谷の東、南アルプスの仙丈岳の麓、伊那市長谷村南非持地区で今年から稲作を始めた農業法人「the rice farm nagano ina」へ行った。ザ ライス ファーム ナガノイナ?と聞いて勘のいい方は気付いた方もあろうと思うが、5月後半にカミアカリスイハニングのために出向いたハワイの米屋「the rice factory honolulu」と同じグループ会社で、稲作を担うチームがこの農業法人だ。社長の出口氏が肝入りで始めた新事業で出口氏本人と彼の学生時代の友人の二人で現場を取り仕切っている。じつは今年2017年(29年産)から巨大胚芽米カミアカリを実験レベルながら栽培を開始したこともあり、カミアカリの育成者である松下さんと視察に出向いたというわけだ。文字にすると、やけに堅苦しく見えるが、稲作を始めたばかりの後輩たちがカミアカリ栽培というビックチャレンジに、オッサン2人が心配で世話を焼きに行った・・・という風だとご理解いただきたい。(苦笑) 彼らが通称「天神の田んぼ」と呼ぶ棚田にカミアカリがあった。天神の田んぼと呼ぶには理由がある。じつは田んぼのある棚田の上段に小さな祠があり、近所の方の信仰の場として古くから「天神さん」と呼び、親しまれてきた歴史ある場所だった。そんな地域のカミサマの懐に、カミアカリが育つことになったことに縁を感じつつ、まずは彼らと彼らのカミアカリの無事をお祈りさせていただいた。 ここで栽培されるお米は、同じグループ会社が海外で経営する米屋で販売することになっている。じつはそれが無農薬無肥料で栽培されている大きな理由である。国によって使用できる農薬や肥料の基準が異なるために、同じお米であっても販売が容易にできる国と、そうでない国があり、各店舗で共有しずらい点を払拭するために「いっそ農薬や肥料(化学、有機)などを何も使わないことで、どの国でも販売できるようにする!」という大胆な発想のもとに計画されたのだった。 長年耕作放棄地だったこともあり、地力は充分に回復している。その証拠にカミアカリの葉色(ようしょく)は青々としていた。青々とした葉色は、その田んぼに窒素分など稲の生命生理に必要な成分が充分にあることを示唆している。それも化学合成によって精製された「それ」ではなく、長年に渡りここで繁殖してきた植物や動物が分解と再生によって蓄積されてきた「それ」である。こうやって自然に蓄積されたエネルギーや微量要素を「地力」という。お米などの収穫物にして人が収奪しなければ土地は肥沃になっていく。出口さんらは、その営みの中での稲作を考えているのだ。 実験栽培とはいえ、この田んぼのカミアカリは思いのほか立派に育っている。一株で尺植だから株間は充分、スッカスカだから除草もまめにできていることから他の草に栄養を収奪されることはほぼない。ただし問題はこれからだ。受粉から収穫までの期間のことを登熟期というが、標高800mで谷あいのこの土地で、充分な日照と温度が今後一ヶ月間で充分に確保できるだろうか?満足な登熟をしてくれるだろうか?高温障害の心配をしなくていい分、そのことが気がかりではある。こうゆう栽培であれば窒素過多による稲の倒伏はないが、目標収量が下回れば「人」が倒伏してしまう。農とは土地の持つ地力、その年の日照や気温、その上で選ばれた稲品種、それらの組み合わせの妙が、人が生き抜くための知恵として研鑽されてきた。考えてみれば、彼らのそれは今始まったばかりなのである。 画像上:標高800m、眺めの良い田んぼで育つカミアカリ。 |
水田徘徊2017 北海道蘭越町宮武さん | |
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北海道のお米は永く扱っていながら、これまで「人」にフォーカスしてこなかった。それが2016年、カミアカリの勉強会メンバーである横浜の同業者、加藤さんから蘭越町の宮武さんを紹介された。彼から預かった米を試食した時に、「北海道にも、こういうお米があるんだ・・・」と改めて再認識したことから、その年から宮武さんの米を扱うようになった。ここでいう「こういう米」とは「工芸的な米」のことをいう。もっとはっきり言えば「工業的でない米」のことだ。 北海道や東北地方北部の熱心な稲作家は、たいがいの場合、大規模化の道を辿る。一枚の田んぼが一町歩(10反:3000坪)なんてのは最低単位。それだけの規模となれば、田んぼを平らにするにも、それなりの設備を必要となるくらい、機械による管理が前提の稲作になる。それはけっして悪いわけではないが、そうやって生まれたお米に、たべものとしての「色気」があるかと問われると、少し立ち止まって考える時間が欲しくなる。そもそも、米に色気が必要であると考えるのは、たぶんマイノリティーだと承知しているので、この話はあくまでも「アンコメ好み」の範疇のこととして聞いてほしい。 藤枝の有機米生産者の松下さんもよく言っているのだが、人と稲の距離感ってものがあって、目がいき届く、気持が通ずるちょうどサイズというものがあるらしい。そのちょうどいいサイズが松下にとっては田んぼ一枚が3反、大きくても4反くらいだという。一枚が一町歩以上あれば作業性は格段に上がるが、稲との距離が遠くなるのだという。まったくもって論理的ではないが、モノづくりの経験が少しある僕のとって、それはとてもよくわかるのだ。職人技が発揮できるサイズ。つまりそれが工芸的という言葉の意味だとわかってほしい。それに相当するような北海道育ちをずっと待ち望んでいたところに昨年、宮武さんを紹介されてのだ。 千歳空港からクルマで約2時間、蘭越町の宮武さんを訪ねた。飛行機から見えていた厚い雲のとおり下界は曇天、気温21度、短パンとTシャツではあきらかに寒い。聞けば昨日は30度以上あったという。そんな天気ゆえに、楽しみにしていた羊蹄山も裾野がちょっぴり見えるくらいの残念なお天気ながら、稲トークはとても盛り上がった。それは今回の旅に藤枝の有機米生産家、松下さんと、宮武さんを紹介してくれた加藤さん、それに最近長野県の伊那で稲作を始めた出口くんが加わったからだ。 北海道の品種といえば「ななつぼし」「ゆめぴりか」の2品種。宮武さんもこの2品種は当然栽培しているが、今回どうしても見たかった稲が2種あった。「Y」と「S」だ。訳あってあえてイニシャルとしたが、アンコメが色気を感じているのがこの2種。(「Y」はすでに店頭のみ販売中)それが、どんな環境でどんな設計で育っているのがどうしても見たかった。そもそも、それらの栽培に取り組む宮武さんという「人」を知りたかった。 中山間地に大規模な土木工事で築かれた田んぼ。棚田というには巨大すぎる法面はさしずめで古代の墳墓のよう。1枚が約5反分が4枚。そこにお目当ての稲があった。「どうです?」と宮武さんから問われたので「品がいいね」と答えると、ニヤっと顔がほころばせながら「そうでしょ!Yは上品なんですよ!」とうれしそうに言った。以前、彼が電話でこんな風なことを話したことを思い出した。「『ななつぼし』や『ゆめぴりか』は、ぼくに言わせたらデジタルなんですよ。そこへいくとYやSはアナログ、関われる余白がたっぷりあるんです。手を掛ければ手を掛けたなりの答えが返ってくるんですよ。だから面白い・・・」。 北海道の品種はどれも耐冷性に優れる。山から直接入るような水温の低い水の水口でも立派に育つ姿を見て松下が驚く。その性質を引き継ぐ品種と良食味米の系譜のルーツと呼ばれるような品種の血を引き継いだ「Y」と「S」。その生い立ちを畦傍で眺めながら聞き、ようやくそれらが持つ「色気」の意味の一端を理解した気がした。29年産は順調に行けば10月中旬には入荷するだろう。秋の楽しみがまたひとつ増えた。
画像上:宮武さんと彼の自慢のYとSが育つ田んぼ。北海道の標準的な田んぼサイズに比べればはるかに小さい。しかし、それが彼らしい稲作、稲と対話をしながら育つ、ちょうどいいサイズだと現場を見て納得した。 |
水田徘徊2017 磐田太田農場 | |
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前回、森町堀内米のつづき。 森町から太田川沿いに南へ移動すること30分、福田と書いてフクデと読む、水田稲作家にとっては縁起いいの町の川上に太田農場さんはある。静岡県内では早い時期に田んぼの基盤整備の進んだ一等地、一枚の田んぼが5反分以上もあるような大きく作業性の良い田んぼで仕事をしている。こんな恵まれた環境でありながら、それに奢れることなく、収量を求めず、むしろセーブして高品質を求める稲作を実践している若手生産家です。 太田さんのお米の品質は見た目からして立派。とくに玄米品質はピカイチ!玄米で購入されるお客様の多いアンコメにとって、この品質はたいへん心強いです。28年産では、コシヒカリとハツシモの2品種を販売。とくにハツシモは本家の岐阜産に劣らない、むしろ「太田さんのハツシモ」と言えるくらいの個性を持った米が表現されていることから、ファンも多いお米です。 29年産については、今のところ生長は順調そのもの。じつはここ2年、太田さん自身はあまり満足のいく仕上がりではなかったとのこと。そこで29年産ではその部分を修正するべく肥料体系を見直したとのこと。「3年連続は許されませんからね~」と自分に厳しいところは、本当に頼もしいです。 太田川を用水とするこの地域では若干の水不足が懸念されていましたが、ここのところのまとまった雨のおかげで、その懸念も払しょくされたようです。早生品種のコシヒカリはちょうど今頃(7/13)出穂が始まった頃、収穫は森町の堀内さん同様、8月お盆休み頃からとのこと。静岡が一年でいちばん暑い時期の登熟(米が熟す期間)は、徹底した水管理で乗り切ることと思います。稲作の基本の「き」のできている太田さん、そんな心配は御無用というところでしょうか。 つづく(次回:北海道蘭越町宮武さん) 画像上:7月4日、コシヒカリの幼穂(ようすい)。小さいながらすでに穂のかたちになっている。 |
水田徘徊2017 森町堀内米 | |
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毎年6月の終わり頃から田んぼへ出かける。 先週(7/4)、静岡県の西部、森町と磐田へ行ってきた。 まずは森町堀内米。 アンコメではここ数年、堀内米は3品種(コシヒカリ、きぬむすめ、にこまる)を販売している。 つづく(次回磐田太田農場さん) 画像上:にこまる、株間の広くとって植えている(疎植)がよくわかります。 |
薪 (も)あります。 | |
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スイハニング(炊飯)には欠かすことのできない薪。 出所のわかる地元の木、わずかとはいえ地元の山を守ることにも貢献できることがうれしいです。 地元の木を地元の人が使う。 株式会社ソマウッド |
旅する羽釜 ハワイ旅 5【最終回】 | |
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2017年5月20~25日、ハワイ州ホノルルにある日本米専門店「The rice factory honolulu」で、巨大胚芽米カミアカリの試食会のため羽釜スイハニング(炊き)してきました。これはそのレポートです。
その前にヒロのパシフィックツナミミュージアムへ。 「津波の発生域が近海ではないからPTWC(太平洋津波警報センター)からの警報で事前に避難できるんだよ。それにハワイは観光の島だからね・・・」 近海で津波が発生する日本ではハワイ島のようにはいかない。 午後からは、いよいよマウナ・ケアとキラウエアボルケーノへ。 麓へ降りると雨が降ってきた。交通量のある片側2車線の街道を通ってキラウエアボルケーノへ。 クレーターを巨大釜戸に見立てて羽釜を撮る! ところがなかなかいい場所が見つからない。それに天気が不安定でクレーターが見えたり隠れたり、思いどおりの絵がなかなか撮れない。あきらめて帰ろうとした時、駐車場の奥に一本のトレイルを見つけた。観光客もほとんど来ない閉鎖中のトレッキングコースの入り口だった。そこには誂えたかのように杭が一本立っていた。その上に羽釜を置くとこれがピッタリ!こうして撮ったのが上の画像。 flying hagama meets grand kamado! 宿舎戻ったのは7時過ぎ、すっかり遅くなってしまった。 こうして5日間のハワイスイハニング旅が終わった。 おしまい 画像上:旅する羽釜、超巨大釜戸に会う!キラウエアボルケーノ。 |
旅する羽釜 ハワイ旅 4 | |
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2017年5月20~25日、ハワイ州ホノルルにある日本米専門店「The rice factory honolulu」で、巨大胚芽米カミアカリの試食会のため羽釜スイハニング(炊き)してきました。これはそのレポートです。 ホノルルthe rice factory honoluluでのミッションが無事終了したあと2日休みをもらいハワイ島へ行った。 クルマで15分ほどの高台の一軒家がこれから数日過ごす家。 ところで、今回の旅の共はおなじみ田中隊員、高部隊員こと、田中夫妻。 備え付けのお米はカリフォルニア米だろうか?大粒だった。 ヒロは雨の多い町と聞いたとおり夕暮れ過ぎからまた雨が降り出した。 つづく 画像上:この一升羽釜は明治生まれの祖母の時代から我が家にあったもの。まさかこんな旅をするとは・・・。 |
旅する羽釜 ハワイ旅 3 | |
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2017年5月20~25日、ハワイ州ホノルルにある日本米専門店「The rice factory honolulu」で、巨大胚芽米カミアカリの試食会のため羽釜スイハニング(炊き)してきました。これはそのレポートです。
5月21日日曜日、今日のスイハニングはお昼からというので、少し寝坊した。 10時過ぎ、今日も日差しが強く蒸し暑い。牛島さんがクルマで迎えにやってきた。 今日はthe rice factory honoluluでスイハニング。 そのまま火加減しながら沸騰維持。ふと周囲を眺める。 そんな感傷に耽っている間に、羽釜からいい香りとあの音が聞こえきた。 how many minutes? how many minutes? how many minutes? how many minutes? カミアカリのおこげから、あのチョコレートを思わせる香ばしい香りがしている。 この後、地元の食関係のメディアの方も数名来られ、 旅する羽釜 ハワイ旅 番外編へつづく
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旅する羽釜 ハワイ旅 2 | |
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2017年5月20~25日、ハワイ州ホノルルにある日本米専門店「The rice factory honolulu」で、巨大胚芽米カミアカリの試食会のため羽釜スイハニング(炊き)してきました。これはそのレポートです。
5月20日土曜日、今日は午前中カカアコ地区で毎週末行われるファーマーズマーケット、 7時半、牛島さんとスタッフ君、僕と田中ペアの5人で設営開始。 スイハニングはいつもアウェイ、毎度のことながら何が起こるかわからない。 ホッとするのもつかの間、珍しがってやって来たギャラリーが炊き上がったばかりの羽釜の周りに集まっている。 pan fry!(おこげを、こう表現していた記憶あり・・・記憶違いしているかもだけど) 午後はthe rice factory honoluluへ移動してもう1ラウンド。 この日は用意した1パウンド(約450グラム)入りお試しパックのカミアカリはみるみるうちに売り切れた。 画像上:ザ、カミアカリ! |