
水田徘徊2017 北海道蘭越町宮武さん | |
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北海道のお米は永く扱っていながら、これまで「人」にフォーカスしてこなかった。それが2016年、カミアカリの勉強会メンバーである横浜の同業者、加藤さんから蘭越町の宮武さんを紹介された。彼から預かった米を試食した時に、「北海道にも、こういうお米があるんだ・・・」と改めて再認識したことから、その年から宮武さんの米を扱うようになった。ここでいう「こういう米」とは「工芸的な米」のことをいう。もっとはっきり言えば「工業的でない米」のことだ。 北海道や東北地方北部の熱心な稲作家は、たいがいの場合、大規模化の道を辿る。一枚の田んぼが一町歩(10反:3000坪)なんてのは最低単位。それだけの規模となれば、田んぼを平らにするにも、それなりの設備を必要となるくらい、機械による管理が前提の稲作になる。それはけっして悪いわけではないが、そうやって生まれたお米に、たべものとしての「色気」があるかと問われると、少し立ち止まって考える時間が欲しくなる。そもそも、米に色気が必要であると考えるのは、たぶんマイノリティーだと承知しているので、この話はあくまでも「アンコメ好み」の範疇のこととして聞いてほしい。 藤枝の有機米生産者の松下さんもよく言っているのだが、人と稲の距離感ってものがあって、目がいき届く、気持が通ずるちょうどサイズというものがあるらしい。そのちょうどいいサイズが松下にとっては田んぼ一枚が3反、大きくても4反くらいだという。一枚が一町歩以上あれば作業性は格段に上がるが、稲との距離が遠くなるのだという。まったくもって論理的ではないが、モノづくりの経験が少しある僕のとって、それはとてもよくわかるのだ。職人技が発揮できるサイズ。つまりそれが工芸的という言葉の意味だとわかってほしい。それに相当するような北海道育ちをずっと待ち望んでいたところに昨年、宮武さんを紹介されてのだ。 千歳空港からクルマで約2時間、蘭越町の宮武さんを訪ねた。飛行機から見えていた厚い雲のとおり下界は曇天、気温21度、短パンとTシャツではあきらかに寒い。聞けば昨日は30度以上あったという。そんな天気ゆえに、楽しみにしていた羊蹄山も裾野がちょっぴり見えるくらいの残念なお天気ながら、稲トークはとても盛り上がった。それは今回の旅に藤枝の有機米生産家、松下さんと、宮武さんを紹介してくれた加藤さん、それに最近長野県の伊那で稲作を始めた出口くんが加わったからだ。 北海道の品種といえば「ななつぼし」「ゆめぴりか」の2品種。宮武さんもこの2品種は当然栽培しているが、今回どうしても見たかった稲が2種あった。「Y」と「S」だ。訳あってあえてイニシャルとしたが、アンコメが色気を感じているのがこの2種。(「Y」はすでに店頭のみ販売中)それが、どんな環境でどんな設計で育っているのがどうしても見たかった。そもそも、それらの栽培に取り組む宮武さんという「人」を知りたかった。 中山間地に大規模な土木工事で築かれた田んぼ。棚田というには巨大すぎる法面はさしずめで古代の墳墓のよう。1枚が約5反分が4枚。そこにお目当ての稲があった。「どうです?」と宮武さんから問われたので「品がいいね」と答えると、ニヤっと顔がほころばせながら「そうでしょ!Yは上品なんですよ!」とうれしそうに言った。以前、彼が電話でこんな風なことを話したことを思い出した。「『ななつぼし』や『ゆめぴりか』は、ぼくに言わせたらデジタルなんですよ。そこへいくとYやSはアナログ、関われる余白がたっぷりあるんです。手を掛ければ手を掛けたなりの答えが返ってくるんですよ。だから面白い・・・」。 北海道の品種はどれも耐冷性に優れる。山から直接入るような水温の低い水の水口でも立派に育つ姿を見て松下が驚く。その性質を引き継ぐ品種と良食味米の系譜のルーツと呼ばれるような品種の血を引き継いだ「Y」と「S」。その生い立ちを畦傍で眺めながら聞き、ようやくそれらが持つ「色気」の意味の一端を理解した気がした。29年産は順調に行けば10月中旬には入荷するだろう。秋の楽しみがまたひとつ増えた。
画像上:宮武さんと彼の自慢のYとSが育つ田んぼ。北海道の標準的な田んぼサイズに比べればはるかに小さい。しかし、それが彼らしい稲作、稲と対話をしながら育つ、ちょうどいいサイズだと現場を見て納得した。 |
水田徘徊2017 磐田太田農場 | |
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前回、森町堀内米のつづき。 森町から太田川沿いに南へ移動すること30分、福田と書いてフクデと読む、水田稲作家にとっては縁起いいの町の川上に太田農場さんはある。静岡県内では早い時期に田んぼの基盤整備の進んだ一等地、一枚の田んぼが5反分以上もあるような大きく作業性の良い田んぼで仕事をしている。こんな恵まれた環境でありながら、それに奢れることなく、収量を求めず、むしろセーブして高品質を求める稲作を実践している若手生産家です。 太田さんのお米の品質は見た目からして立派。とくに玄米品質はピカイチ!玄米で購入されるお客様の多いアンコメにとって、この品質はたいへん心強いです。28年産では、コシヒカリとハツシモの2品種を販売。とくにハツシモは本家の岐阜産に劣らない、むしろ「太田さんのハツシモ」と言えるくらいの個性を持った米が表現されていることから、ファンも多いお米です。 29年産については、今のところ生長は順調そのもの。じつはここ2年、太田さん自身はあまり満足のいく仕上がりではなかったとのこと。そこで29年産ではその部分を修正するべく肥料体系を見直したとのこと。「3年連続は許されませんからね~」と自分に厳しいところは、本当に頼もしいです。 太田川を用水とするこの地域では若干の水不足が懸念されていましたが、ここのところのまとまった雨のおかげで、その懸念も払しょくされたようです。早生品種のコシヒカリはちょうど今頃(7/13)出穂が始まった頃、収穫は森町の堀内さん同様、8月お盆休み頃からとのこと。静岡が一年でいちばん暑い時期の登熟(米が熟す期間)は、徹底した水管理で乗り切ることと思います。稲作の基本の「き」のできている太田さん、そんな心配は御無用というところでしょうか。 つづく(次回:北海道蘭越町宮武さん) 画像上:7月4日、コシヒカリの幼穂(ようすい)。小さいながらすでに穂のかたちになっている。 |
水田徘徊2017 森町堀内米 | |
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毎年6月の終わり頃から田んぼへ出かける。 先週(7/4)、静岡県の西部、森町と磐田へ行ってきた。 まずは森町堀内米。 アンコメではここ数年、堀内米は3品種(コシヒカリ、きぬむすめ、にこまる)を販売している。 つづく(次回磐田太田農場さん) 画像上:にこまる、株間の広くとって植えている(疎植)がよくわかります。 |
薪 (も)あります。 | |
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スイハニング(炊飯)には欠かすことのできない薪。 出所のわかる地元の木、わずかとはいえ地元の山を守ることにも貢献できることがうれしいです。 地元の木を地元の人が使う。 株式会社ソマウッド |
旅する羽釜 ハワイ旅 5【最終回】 | |
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2017年5月20~25日、ハワイ州ホノルルにある日本米専門店「The rice factory honolulu」で、巨大胚芽米カミアカリの試食会のため羽釜スイハニング(炊き)してきました。これはそのレポートです。
その前にヒロのパシフィックツナミミュージアムへ。 「津波の発生域が近海ではないからPTWC(太平洋津波警報センター)からの警報で事前に避難できるんだよ。それにハワイは観光の島だからね・・・」 近海で津波が発生する日本ではハワイ島のようにはいかない。 午後からは、いよいよマウナ・ケアとキラウエアボルケーノへ。 麓へ降りると雨が降ってきた。交通量のある片側2車線の街道を通ってキラウエアボルケーノへ。 クレーターを巨大釜戸に見立てて羽釜を撮る! ところがなかなかいい場所が見つからない。それに天気が不安定でクレーターが見えたり隠れたり、思いどおりの絵がなかなか撮れない。あきらめて帰ろうとした時、駐車場の奥に一本のトレイルを見つけた。観光客もほとんど来ない閉鎖中のトレッキングコースの入り口だった。そこには誂えたかのように杭が一本立っていた。その上に羽釜を置くとこれがピッタリ!こうして撮ったのが上の画像。 flying hagama meets grand kamado! 宿舎戻ったのは7時過ぎ、すっかり遅くなってしまった。 こうして5日間のハワイスイハニング旅が終わった。 おしまい 画像上:旅する羽釜、超巨大釜戸に会う!キラウエアボルケーノ。 |
旅する羽釜 ハワイ旅 4 | |
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2017年5月20~25日、ハワイ州ホノルルにある日本米専門店「The rice factory honolulu」で、巨大胚芽米カミアカリの試食会のため羽釜スイハニング(炊き)してきました。これはそのレポートです。 ホノルルthe rice factory honoluluでのミッションが無事終了したあと2日休みをもらいハワイ島へ行った。 クルマで15分ほどの高台の一軒家がこれから数日過ごす家。 ところで、今回の旅の共はおなじみ田中隊員、高部隊員こと、田中夫妻。 備え付けのお米はカリフォルニア米だろうか?大粒だった。 ヒロは雨の多い町と聞いたとおり夕暮れ過ぎからまた雨が降り出した。 つづく 画像上:この一升羽釜は明治生まれの祖母の時代から我が家にあったもの。まさかこんな旅をするとは・・・。 |
旅する羽釜 ハワイ旅 3 | |
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2017年5月20~25日、ハワイ州ホノルルにある日本米専門店「The rice factory honolulu」で、巨大胚芽米カミアカリの試食会のため羽釜スイハニング(炊き)してきました。これはそのレポートです。
5月21日日曜日、今日のスイハニングはお昼からというので、少し寝坊した。 10時過ぎ、今日も日差しが強く蒸し暑い。牛島さんがクルマで迎えにやってきた。 今日はthe rice factory honoluluでスイハニング。 そのまま火加減しながら沸騰維持。ふと周囲を眺める。 そんな感傷に耽っている間に、羽釜からいい香りとあの音が聞こえきた。 how many minutes? how many minutes? how many minutes? how many minutes? カミアカリのおこげから、あのチョコレートを思わせる香ばしい香りがしている。 この後、地元の食関係のメディアの方も数名来られ、 旅する羽釜 ハワイ旅 番外編へつづく
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旅する羽釜 ハワイ旅 2 | |
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2017年5月20~25日、ハワイ州ホノルルにある日本米専門店「The rice factory honolulu」で、巨大胚芽米カミアカリの試食会のため羽釜スイハニング(炊き)してきました。これはそのレポートです。
5月20日土曜日、今日は午前中カカアコ地区で毎週末行われるファーマーズマーケット、 7時半、牛島さんとスタッフ君、僕と田中ペアの5人で設営開始。 スイハニングはいつもアウェイ、毎度のことながら何が起こるかわからない。 ホッとするのもつかの間、珍しがってやって来たギャラリーが炊き上がったばかりの羽釜の周りに集まっている。 pan fry!(おこげを、こう表現していた記憶あり・・・記憶違いしているかもだけど) 午後はthe rice factory honoluluへ移動してもう1ラウンド。 この日は用意した1パウンド(約450グラム)入りお試しパックのカミアカリはみるみるうちに売り切れた。 画像上:ザ、カミアカリ! |
旅する羽釜 ハワイの旅 1 | |
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2017年5月20~25日、ハワイ州ホノルルにある日本米専門店「The rice factory honolulu」で巨大胚芽米カミアカリの試食会のため、羽釜スイハニング(炊き)してきました。これはそのレポートです。
海外で日本の米を専門に販売しているWakka Japanの出口さんが玄米食専用品種カミアカリを販売することになり、 当日のオペレーションや機材などの細かな点はメールのやりとりでほぼ決まった。 5月20日の21時過ぎの便でホノルルへ、5月19日午前中に到着。 準備が終わった後は近所のスーパーで食糧調達。 ※ESI(エクストリーム・スイハニング・インターナショナル)カミアカリの勉強会「カミアカリドリーム勉強会」の炊飯担当部隊。会のスピンアウト企画としてはじまり、独自の炊飯活動を実践中。 画像上:ファーマーズマーケットにて |
200人スイハニング | |
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去る4月14日、200人の大学生相手にスイハニングワークショップを行った。 羽釜は全部で20釜、今まで見たことのない数。。。 炊き上がったご飯は、アツアツのうちに、おむすびを作ってもらった。 米どころ出身の学生さんからも「めっちゃ美味しいです!」と言葉が出るほど会心の出来映え。 <感謝をコメて> |