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6月20日号 田圃の生命を見て米びつを考えるの巻

 田植え体験会から3週間が経過した。その後、松下くんの田圃では予定していたすべての品種の田植えを完了し今ホッと一息ついたところだ。そんなノンビリ気分の日曜日に今年も豊年エビウォッチングをしようと恒例の水棲生物観察会を開催した。季節はずれの台風6号が迫る中、集まっていただいたのは大人子供あわせて15名の皆さん。悪天候にも関わらず参加していただき感謝申し上げます。

田圃に入るなり感じたのは豊年エビが多いことだ。今年は開催日を昨年より1週間早めたせいなのか?あるいはさらに栄養万点微生物豊かな田圃に進化したのか?原因は定かではないが昨年よりも多くの豊年エビを観察することができた。「豊年エビが多いのは豊年満作の兆しけっこう!けっこう!」と勝手な理解をしつつさらなる水棲昆虫を探すべく子供達に混ざって畔をにしゃがみこんで目をこらす、目が慣れてくると水中に浮遊する埃のように見えていたものがじつは無数と思われる微生物なのだと解るのである。手にとったその何千何万というミジンコやイトミミズ、ゾウリムシなどの微生物達の攻防に目を奪われていると畔の向こう側から「ヘビを捕まえた〜」との声、横綱ばりの体格の小学5年生のNくんがヘビをぶる下げてこちらに向かってくるのである。ヤマカガシと思われる体長1メートル弱のそれは、きっとカエルやオタマジャクシを狙っている最中にNくんに捕まったのだろう。田圃における食物連鎖の頂点、最強の大型動物のはずのこのヤマカガシくん、今日だけはその役回りをNくんに奪われてしまった格好のようだ。

雑草研究者であり田圃の生態系にも詳しい稲垣栄洋さんも参加されていたのでにわかレクチャーをしていただいた。「みんな何を捕まえたかな〜?」と子供達の捕まえた生物の入った容器を手に取りながらひとつずつ解説していく。「これはアマガエルですね・・・手と足に吸盤があったことが生き残った理由なんですよ・・・田圃の基盤整備などで畦や水路などがコンクリート化されたせいで吸盤のないトノサマガエルは昇り降りできず見かけなくなりましたが、その一方でアマガエルは吸盤があったためにコンクリートを昇り降りできたため生き残れたんです・・・。」田圃に入り稲を軽く叩くと落ちる虫があった。「これはウンカといいます。じつはこのウンカはジェット気流に乗ってこの時期低気圧とともに大陸からやって来るのです・・・」別のビンに入っていたクモもを見せて「このクモはコモリグモといいます・・・じつはこのコモリグモはウンカをエサにしているんですよ・・・カエルはそのコモリグモをエサにしているんですね・・・そんなふうにこの田圃の中は食う食われるという食物連鎖の生態系が作られているんですね・・・今はそれが最も活発な季節なんですよ。」といった感じでたいへん興味深いお話しをしていただいた。

僕はその話しの最後にこうも付け加えさせていただいた。「このように田圃の生物が大繁殖している時は家の米びつの中も生物が繁殖する季節なんです・・・我々は田圃の中の生物はこうやって観察しにはるばる見に来るのに米びつに発生する生物は害虫だとして駆除をする・・・じつはこれ変なことなんですよね・・・本来虫には益虫も害虫の区別はないんです・・・」我々は田圃の生態系は守ろうと農薬を使わないことを求めるいっぽうで米びつの中の生態系は許せない。なんともエゴイスティックな動物なのである。米につく虫は確かに気持ちのいいものではないから害虫呼ばわれするのも仕方ないが、このあたりのことについてもう少し理解を深め、できることなら虫たちに対してもう少し寛容であればなと、この生命豊かな田圃を見、米びつを思う時こんなふうに考えるのである。

●この時期、お家で観察できる!?大発生するかもしれない?お米につく虫について。
1)ノシメマダラメイガ
体長1センチ前後の白色の幼虫を見るケースが多くたくさんの糸を吐きながら、食べくずを綴り合わせて白いマユを作ります。しかも米袋さえも食い破って浸入します。家の中で小ぶりな蛾が飛んでいたら米びつを要チェック!

2)コクゾウ虫/ココクゾウ虫
米につく代表的な虫です。象のような鼻をもつことからこの名前だとか。生命力が強く約7ヶ月も生息します。成虫は体長3ミリの黒色なのですぐ見つかります。ココクゾウ虫はややスリムで色は褐色です。

4)コナナガシンクイ虫
最近大発生している虫です。赤褐色の成虫で体長2〜3ミリの細長い円筒形で硬いボディを持ち空中も舞います。短期間で膨大な数に増え、手で叩いてもなかなか死なないタフな虫です。

※これらお米につく虫の侵入を防ぐにはお米を密閉できる容器(ペットボトルなど)に入れるのをオススメします。その状態で冷蔵庫に入れれば最強の保存方法となりますョ。お試しあれ!

 

 


ひと


微生物

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豊年エビ

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レクチャー

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おけら

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メイガ

今回のNOISY(ノイジー)

※ノイジーとは・・・
このコンテンツ2004のテーマは「この風味を作るもの」松下くんの手掛けるお米の持つ独自の風味の謎を探るキーワードです。くわしくは4月25日号「この風味を作るものは何か?の巻」をごらんください。

無数の生命である。最初は単なるドロの中に浮遊する埃のように見えていたものが、じつは無数と思われる微生物だったことを知るのである。ハッブル宇宙望遠鏡が捕らえた無数の銀河のようでもある。広大無辺の宇宙を感じるのである。それがあの風味のエッセンスとなっていることを想像するだけで楽しいではないか!(緑色の島宇宙のごときものが豊年エビ)
無数の生命である。最初は単なるドロの中に浮遊する埃のように見えていたものが、じつは無数と思われる微生物だったことを知るのである。ハッブル宇宙望遠鏡が捕らえた無数の銀河のようでもある。広大無辺の宇宙を感じるのである。それがあの風味のエッセンスとなっていることを想像するだけで楽しいではないか!(緑色の島宇宙のごときものが豊年エビ)
2004年01月27日 [ 4330hit ]
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