5月5日号 端午の節句は育苗作業の巻
ゴールデンウイーク最終日は日本晴れの素晴らしいお天気、高速道路は帰省ラッシュで混み合い始めたと藤枝へ向かう車中ラジオがそう告げている。いつものルートで田圃へ向かう風景は昨年とちょっと違うような気がする。まだ田圃に水が引かれてないのか?いつもゴールデンウイークには人手が確保しやすいということから早いところでは田植えしている所も見うけられるのだが今年はそれが少ないように思う。人手確保や早く植えて早く収穫すれば高値で売れるというご都合主義の悪癖がようやくなくなったのか?早生品種をさらに急がせ8月15日過ぎには出荷なんてことから、いちばん暑い時期に稲の成熟期にかかり高温障害を起こしてしまうのではないか?という心配も過去のはなしとなるかもしれないと車窓から観る風景からそんなことを考えた。
さて本日の松下くんは育苗づくりの最終日だった。自作の育苗土に一列づつ種籾を並べ薄い酢水をかけその上に上質の山土を厚さ数ミリに均一に被せていく。この一連の作業を専用の機械を使い丹念に進めていく。育苗土の配合、酢水のPH値、山土の選定と厚みなどなど、これらすべてが彼独自の農法を実現するべく長年かけて蓄積してきたノウハウそのものなのだ。これらを見聞きするたびに稲作は理論科学の実践そのものなのだと感心する。以前こんなはなしを聞いて憤慨したことがある。ある子供連れの母親が田圃で作業する人を見て「○○ちゃんもしっかり勉強しないとあんな風になちゃうよ」と云ったそうだ。田圃で稲を育てお米を収穫するということはしっかり勉強しなきゃできない仕事、机の上の理論の積み重ねと現場での実践、これらを頭と体すべてを使い研鑚した結果がお茶碗に盛られることになるご飯なのだ。この母親を責めてもしょうがないが現代社会というのは農という仕事を生活から遠ざけたために無知になり軽んじるようになってしまったのではないだろうか。そんなことだから生産現場にいる当事者さえも目先の利益やご都合主義農業の蔓延を招いてしまったのではないだろうか?5月5日端午の節句そんなことを考えてみた。
「おお今日は何だか怒ってるなー!」と思う読者もいるだろう。たまにはこんなのもありってことで聞き流してくださいませ。
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種籾と酢水
育苗土
専用の機械
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田圃の中のアートギャラリー数日前に作った保温のために苗床の上に被せられたビニールドーム(ドーム内では1センチにも満たない若苗が芽吹いたばかり)建築物はもちろん島や景観までも梱包してしまうアーティストとして有名なクリストをイメージしてしまう。クリスト的に云えば「梱包された若苗以外の全宇宙のプロジェクト」というところか?
2003年01月27日 [ 3846hit ]