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6月30日号 小さな世界と大きな世界を結ぶもの。の巻
今夜の決勝戦で2002ワールドカップサッカーが終わる。朝のニュースはブラジル、ドイツどちらがどう勝つかを、くり返し伝えている。世界中の人々がこの大勝負に夢中になっている頃、田圃の中でも生物たちの大勝負が繰り広げられている。

土曜日の夕方から降り続いた雨は早朝には止み、久しぶりにまぶしい太陽の差す日曜日の朝、水生生物観察希望のIさんファミリーとともに田圃へ出かけた。・さんファミリーの小学生の息子さんが大の生物好き、とくに水生生物がお気に入りというわけで、その手の生物の宝庫である松下くんの田圃にお連れしたというわけなのである。じつは息子さん以上にお母さんこそが生粋の生物オタクだったことが後になってわかるのであるが・・・・・。
田植え後の数週間が水生生物にとって最も躍動する時期、昨年もレポートした豊年エビが今年も現れた。SF的な姿のこの小さなエビはこの一瞬現れそして消えていく。彼らが生まれ消えていく田圃の中ではこんなことがおきているのである。

田圃に水が張られ苗を植えるころ微生物達によってゆっくり分解された有機物が稲にとって重要な栄養素となって少しづつ水に溶け稲の根からゆっくりと吸収され成長していく。すると成長していく稲のやわらかい部分を狙ってタニシが食べ始める。成長したタニシはタマゴを生み来年また水が張られる頃に生まれ世代交代を繰り返していく。
一方、分解された有機物を餌にしてミジンコなどの小型生物たちも大発生する。するとそれらを餌とするゲンゴロウや豊年エビ、おたまじゃくしなどが繁殖をはじめる。するとまたそれらを捕食しようと大型の動物が集まってくる。今はツバメが多く現れ低く旋回したかと思うと急降下して水生昆虫を捕まえている。よく見ていると松下くんの田圃の上ばかり飛んでくる。彼らもこの田圃が他のどの田圃より餌の宝庫だということを知っているのである。あるいは鳥の世界でもオーガニックブームなのであろうか・・・・・?

はなしを戻して、タニシが食べきることができず残った?(残っているというよりタニシによってちょうどいい数に間引きされたといったほうが正しいような感じ))稲は順調に育ち秋を迎える頃、空気中の炭酸ガスと水を原料に光合成によって製造したデンプンを大量に蓄積した籾と呼ばれる実をつける。(後に我々はこれをコメと呼んでいる)たわわに実った籾は、そのほとんどをホモサピエンスなる二足歩行する大型の動物に捕食されるのである。

ホモサピエンスにとり込まれたコメは体内にある酵素などの体内生態系によって分解され糖や脂肪酸などのエネルギー源となり、例えば脳内で思考するエネルギーとなってこうして文字というメディアにその姿を変え他のホモサピエンスにも同じ思考を伝えたり、脂肪酸となって蓄えられたエネルギーは空気中の酸素と結合してさらに莫大なエネルギー源となって例えば22人のホモサピエンスによって芝生の上の1個の球体を右へ左へと転がしたり。またその様子を見て泣いたり笑ったり怒ったり悔しがったりするエネルギーの一部もまた分解されたコメのそのものなのである。

こうして田圃の稲は小さな田圃の中の世界と大きな我々の世界とを姿を変えて結んでいるのである。だからこそ田圃に顔を近づけて見入ってしまうのは、どこか自分の生きる世界そのものを俯瞰しているかのように思えるからなのではないだろうか?


豊年エビ


田圃宇宙を手に採る

親子観察
親子観察
2002年01月14日 [ 3439hit ]
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