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記憶の地平【15】

 

人前でお話しをする機会が、今月と来月そして年明けにある。お話しする内容はカミアカリをはじめ、これまでアンコメや僕自身が考えてきたアイデアやプラン、そして実際にやってきた活動のことなど。今それらを毎晩整理している最中なのだけど、整理していたら、その話しの源泉は過去の記憶にあることに気づいた。そこで、その整理がてら、このコンテンツで少し書いていこうと思う。ご迷惑かな?まあちょっとお付き合いくださいな。

 

記憶の地平【15】蜜月の関係。Courante

 

色んな場所でやるワークショップや講演で、参加される方に必ず聞く質問がある。
コメとは何ですか?
多くの人は、この最もシンプルな答えがなかなか出ない。
何だと思いますか?
その答えは、「種子」。
ここがイネを捉える上での松下と僕の起点であり、消失点でもある。

 

人類が野生稲、その種子を数多ある植物の中から「選んだこと」が、今に続く稲と人の歴史です。
たぶん教科書的には、そうに違いありません。

 

しかし僕は逆から見て見ました。
それはイネの視点です。
イネがヒトを選んだ。という風にね。

 

イネは他の植物との争いに人を利用した。
イネの争いとは、子孫を残すための争いのことです。
そのためにヒトにとって都合の良い植物になることを、イネは選んだ。
子孫である種子そのものを、ヒトのエネルギー供給源として他のどんな植物よりも魅力に感じるようにね。

かなり大きな賭けだったけど。

 

ヒトもまたそれに答えた。
ヒトにとってより都合の良いイネを選ぶことを。
その選ばれたイネのためにヒトは空間も作った。イネ以外の草が侵入してこないようにするために。

 

それに答えるかのように、イネもヒトのエネルギー供給源という役目だけでなく、
ヒトの感性に触れる何かをも持つようになる。
いつしか稲と人は、飼われているのか?飼っているのか?それを超越する蜜月の関係となった。
それが今というわけです。
まあこれは僕の空想ですかね。

 

イネは生きるために強かです。過激な云い方をすると、節操がない。
どんなところでも生きるため、子孫を残すために、ありとあらゆる可能性を、けっして否定しない。
「こんな場所で?」と思われる所でも、子孫を残すことを怠ることはない。
それが、暑い夏だろうが、寒い夏だろうが、標高が高い所だろうが、低くかろうが。
工場や住宅脇の日当たりの悪いところだろうが、高圧電線の直下だろうが、
夜中こうこうと、水銀灯やイルミネーションに照らされることも、
まったく関係ない。
彼らは与えられた条件の中で、毎年粛々と使命を果たす。
それが彼らの流儀。
猛烈なポジティブシンキング。
だから、僕らはこの小さな列島で文化を作ることができた。
その文化創造の源の60%位は、きっとイネが作ったブドウ糖の鎖、そうデンプンそのものだったかもしれない。

 

ある時、こう考えた。
ここにあるモノ、コト、時間、すべてを強かに利用しているんじゃないかとね。
つまり、イネはどんな条件であっても生きるために必死な時、
ヒトにとって、一見ネガティブに見えてしまうモノやコトだらけであっても、
そのすべてのモノやコトの中からポジティブに捉える何かを見出し、自らの力にする。
そのいっぽう、
ヒトがイネを、飼い慣らした瞬間に、それがすべて逆転するんじゃないかとね。

 

松下の田圃空間にあるモノ、コト、時間のほとんどが、一見ネガティブに感じてしまうにも関わらず、
生まれた「種子」に、そのネガティブさが一切感じられないこと。
それどころか、「野趣」なるものが充実している様を見る時、こういうアイデアが生まれたのです。

 

「この場にあるもの全部、ここにしかないの種子を生み出す素材そのもの」。

 

それを生かすことができるか。そうでないかは、ヒトの関わりにあるとね。
蜜月の関係なればこそ、こうに違いないと考えたわけです。

だとすれば、この列島にある数多すべての田圃に、そこにしかないの種子、いや、米ですね。
米を生み出す何かが備わっているということの証明となりうるはずです。


じつはその証明のために、素晴らしい道具があることにある日、気づいたのです。

それが、巨大胚芽米カミアカリです。

この素晴らしい道具を使って、「その何か」を雄弁に語ることができると想像しています。

これが僕らが今、拙いながらも使命と感じている目指す地平の始まりであり、

僕が求め続けている「美しい状態」であると確信している地平の風景なのです。

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地平を読んでくれているアナタへ。ようやくここまでやって来たよ。ありがとう。
Bach cello suite No.6 Courante

 

 

2010年10月24日 [ 4104hit ]
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