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第32回 カミアカリ産地レポート(3)茨城奥久慈さんのカミアカリ
左が大久保さん、右が松下さん。すばらしい出来ばえのカミアカリに、松下さん上機嫌。
左が大久保さん、右が松下さん。すばらしい出来ばえのカミアカリに、松下さん上機嫌。

 今年カミアカリの栽培を担当する3人の生産者をレポートする第三弾は茨城県久慈郡大子町で、特別栽培米(減農薬減化学肥料)で稲作を実践している大久保さんです。大久保さんは2006年静岡県で行われたお米日本一コンテストで最優秀賞を受賞した経験もあります。

 8月2日と3日にかけ行った「カミアカリドリーム見学旅行」の2日目に大久保さんを訪ねました。前日の会津同様に気温33度、この夏一番の暑さの中「となりのトトロ」に出てくるような風景の中を走る水郡線に乗り、最寄り駅常陸大子に降り立ちました。

 今年大久保さんはある実験しています。それは第3回勉強会の時にその年(19年産)栽培された4種のカミアカリの中で自らが栽培したカミアカリの味が最も平凡で無個性に感じたことから、奥久慈らしさ、自分の田圃らしさ、を追求する実験を開始したのです。
最初に取り掛かったのは肥料素材。2ヶ所あるカミアカリの田圃のうち1ケ所は従来どおりの肥料成分のもの、もう一方を魚系に由来する肥料成分のもので栽培することで、この2つの田圃のカミアカリに、味と風味、食感にどんな変化が出るかを確かめるためです。
向かい合う2つの田圃のカミアカリを眺めながら様々な話しをしました。それは栽培技術の話しだけでなく、稲の構造や仕組み、その生長に関わるすべてのことを時系列で話し合ったのです。その中で大久保さんが一番注目しているのが、そういう様々な要素によって、どのようにして味や風味、食感に影響するのか?単に品質の良さを追求するだけでなく、それらが醸し出す「らしさ」という抽象的でありながら実際に感じる具体的な感触が、どんなプロセスで生まれるのか?
これは大久保さんに限らず、この勉強会に関わる人みんなが最も知りたいこと、だけど最も解らない最大の課題でもあるのです。

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見るからに良いコンディション。曇りのない姿に一同感激。20年産では2反5畝強の作付け。大久保さんの反収は約7俵ですから収穫予定量は約20俵(1200キロ)を想定しています。収穫は9月中旬を予定しています。販売は9月下旬には準備が整う予定です。どうぞお楽しみに。

 蛇足ではありますが、大久保さん自身が無個性と感じていた19年産大久保カミアカリ。じつは春先3月頃から味にちょっとした変化が起きています。その原因は謎なのですが、甘みと香りがアップしているのです。明らかなに収穫したての頃よりもそれらは強く、試食した人の多くがその味の深さを評価しているのです。米に熟成があるとすれば、まさにその考えにくいことが起きているようなのです。
かつて50年、80年と常温長期保存されたお米の質についての文献を読んだことがあるので、お米が数年で著しい劣化をするようなことはないとの認識はあるにせよ、ある種の熟成的な現象によって味が良くなるということは、私はこれまで聞いたことがありませんでした。もし米に熟成によって勝ち取る味や風味があるとすれば、今後その味と風味、食感の変化を確かめたいと思います。まるでお酒や味噌の発酵食品のように、長期熟成による価値が現れるか否か、大久保さんのカミアカリには自身も気付いていない魅力がまだ沢山あるのかもしれません。もしかするとそれが大久保カミアカリの「らしさ」だとすれば、さらに興味は尽きることはありません。

 

2008年08月29日 [ 2616hit ]
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