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第22回 食べた!学んだ!カミアカリドリーム第2回勉強会<後半>

 後半は、今回のゲストスピーカー松下電器産業の加古さんの講演会です。

<まずは自己紹介から>

 松下電器産業 クッキング機器ビジネスユニットの加古さおりです。兵庫県の加東市に国内向けのIHジャー炊飯器の工場があり、今日は私もここから来ました。
その中で炊飯器の調理ソフトの開発を担当しているメンバーが、ライスレディと呼ばれており、私もその一人です。そのまんまなんですけど。(笑)
ライスレディが何をしているかと言うと、ごはんの美味しさを調理科学的視点で追及し、その結果を商品に落とし込み、ソフトとハードを融合させて商品開発をする、という仕事をしています。そこから生まれたのが業界初となるマイコンジャー炊飯器やIHジャー炊飯器というわけです。
炊飯器が生まれて50年、松下電器がライスレディを擁して研究をするようになって30年。それでも研究することは尽きません。
今日は、30年の研究の成果から、科学的に見たおいしいごはんの炊き方と、炊飯器の秘密についてお話したいと思います。

 

<ごはんの美味しさに関するお話し>

 炊飯とは何か?これは、今日来られているみなさんは、もうお分かりだと思います。
「硬いお米に水と熱を加えて、デンプンの構造を変化させ、消化吸収の良いご飯にする(アルファ化)すること、これはいわゆる教科書に書いてある文面ですね。
お米というのは植物の種です。自分が発芽するために栄養をためているのであって、このままでは人間の栄養にはなりません。
そこに水と熱を加えて、水分約65%のご飯という形にすることで、はじめて人間が食べられるものになります。しかし、人は栄養を得るだけでは不満足で、この変化においしさを求めているのです。

<炊飯器の炊飯についてのお話し>
我々は美味しいご飯の炊き方と、炊飯器による火力コントロールの研究を約30年間やってきました。そして結局最後にはあの言い伝え・・・「はじめチョロチョロなかパッパ、ブツブツいうころ火を引いて、ひとにぎりの藁燃やし、赤子泣くともフタとるな」とおりの火加減にすることが、美味しいご飯を炊くコツだということに落ち着き、炊飯器もそれに基づいた炊き方をしています。
じっさいの炊飯器では、「はじめチョロチョロ」を前炊きで、お米の中心まで吸水させる工程、「なかパッパ」は炊飯器のフルパワーで強火で一気に沸騰させます。その後蒸気が出てきたら、「ブツブツいうころ火を引いて」というところで少し火を引いてじっくりと沸騰維持をし、最後に「ひとにぎりの藁燃やし、赤子泣くともフタとるな」で、追い炊きを入れるわけです。
炊飯器の炊飯フローとはこのようなものです。

図1:炊飯器でごはんを炊く時の火力コントロール

 よく電気炊飯器で炊くと時間が掛かると言われます。「50分も掛けてやっぱり火力か弱いのか?ガスだったら20分で炊けるのに・・・」このような声をよく耳にします。
違うのです。マイコン式の炊飯器の場合は、はじめチョロチョロからの吸水から行っているので、研いですぐの炊飯も可能ですし、蒸らしまで自動で完了するので、「スイッチが切れたら15分蒸らす」ことも必要なく、ピピッと鳴ったらすぐ食べられるのです。
いっぽうガス炊飯器の場合は、火を入れて炊き上げるだけで20分なので、炊く前に30分から2時間の浸け置きと最後15分の蒸らしが必要です。結果として研いでから食べるまでに最低でも65分必要ですから、電気炊飯器のほうが時間が掛かるとは言えません。

 ではなぜ、ふつう2時間といわれるつけおきが電機炊飯器には必要ないのでしょうか?それは、お米は水温が高いと吸水しやすいからです。
お米がこれ以上吸水できないところまで到達するのに、水温20度では2時間掛かるのですが、水温を40度にすると約20分でほぼ同じくらい吸水するのです。炊飯器はこの原理を使って、浸水の温度を上げて炊飯時間を短縮しているのです。
しかも、ただ炊飯時間を短縮しているわけではありません。浸けている水の温度が高くなると、甘味を持つグルコース(ブドウ糖)などの糖の量が増えます。
なぜ増えるのかというと、お米は稲の種子ですから自ら発芽しようとする力を持っています。水に浸けると発芽しようとする酵素が働いて、自らのデンプンをグルコースなどの糖に分解していくのです。特に、40〜60度の発芽温度帯にしておくと、甘みが増して、炊きあがったごはんもおいしくなります。

<ナショナルが理想としている美味しいご飯とは>

 先ほどから「ごはんのおいしさ」について述べていますが、「おいしいごはん」ってどんなものなのでしょうか。私たち、ナショナルの理想としているごはんとは、「外観は粒がよく膨らんでいて張りがある・・・粒表面の組織に崩れが少ない・・・白く透明感、ツヤがある・・・食べると一粒一粒を良く感じて適度な弾力、粘りがあるけれどべたつかない、粒の中心まで柔らかい、さらに適度な甘みがある・・・」言葉で表すとこのような感じです。
一言でいうと日本人誰もが美味しいと感じるご飯です。
「こんなあいまいでいいの?」と思われることでしょう。しかしここに挙げたキーワードを聞けば、どんな人も美味しいご飯をイメージされるはずです。このように、誰もが感じるおいしさが基本で、これを前提として、硬い柔らかいなどのその人の好みを加えて調整していけるようなご飯の炊き方、炊飯器を開発しているのです。

 ここで少し、IHの説明をします。IHとは電磁誘導加熱、インダクションヒーティングの略で、コイルに電流を流すことで鍋自体が発熱するという加熱方式です。従来にない高火力と熱応答性の良さが特徴で、はじめチョロチョロ中パッパ、の火加減を自在にコントロールしてかまど炊きのような理想の炊飯ができるようになり、従来のヒーター式に比べ美味しさが格段にアップしました。

 ご飯を炊くというのは『煮る、蒸す、焼く』という3つの異なる調理を、釜の中を見ないで火加減するという、とても難しい調理方法です。おいしく炊くためには、各工程を適切な火力でコントロールするというのが重要で、炊飯器の場合は沢山のセンサー(最新機種には4つ)とIH誘導加熱を使ってきめ細かな制御をしています。そのおかげで、いつ、誰が、どんな量を炊いても同じ味の美味しいご飯が炊けるようになっているのです。

図2:おいしいご飯を炊くポイント

<合数判定について>

  では、炊飯器だと、いつ、誰が、どんな量を炊いても同じ味の美味しいご飯が炊けるのはなぜでしょう?
じつは、炊く時にお釜の中に何合お米が入っているかを計ってから炊き上げているのです。
浸水させた後、フルパワーで炊き上げている時に、沸騰してフタから蒸気が出て来るまで時間を、フタの内側にあるセンサーで感知して計ります。一定のパワーで加熱しているので、早く蒸気が出てきたら少ない量、遅く蒸気が出てきたら多い量を炊いているのがわかるのです。
マイコンがそれをもとに計算して、その後の沸騰維持のパワーを決めます。そのパワーは、沸騰し始めてから火を止めるまでの時間が、どんな合数でもほぼ一定になるように調整します。おいしく炊くためには、お釜の中の一粒一粒にどれだけ、どのように熱を入れるかが一番大事なので、一合7500粒の中の一粒のご飯と、10合75000粒の中の一粒のご飯が同じ熱量をもらって炊き上がるように調整しているのです。これが、誰がいつ、どんな量を炊いても同じ味に炊き上がるという秘訣なのです。

<硬さ炊き別けについて>

 われわれメーカーは、炊飯器という機器を通しておいしさを提案していますが、逆にお客様の声から生まれた機能もあります。硬さ炊きわけとは、まさにお客様の声から生まれてきた機能なのです。炊飯器が一般的になって以来、電話相談などで、「硬く炊きたいのですが、水はどれくらい減らせばいいですか?何ccですか・・・?」と聞かれることが増えてきました。炊飯器の普及の弊害というか、水位線が入っていないと水加減できない、という人が多くなったためにこういうご質問が出てきたのです。
メーカーとしては、「それならもっとお客様に合わせてみましょう!」と思うわけで、水の量は水位線どおりでも、火加減で硬さを調整できるようにした、というのが硬さ炊き分けなのです。
では、硬いご飯というのはどういうご飯なのか?それは食べた時に水分の少ないご飯、逆に柔らかいご飯とは、水分の多いご飯というわけです。それを火加減で炊き別けるのです。
硬めは、強い火力でガンガン沸騰させて、水分を飛ばしてしっかりと炊き上げる。柔らかめは、低い火力でゆっくりじわじわと、水をお米に含ませながら水分の多いごはんに炊き上げます。
このように水の量は同じでも、火加減で炊き上がりをコントロールして、お客様のご要望にお答えしています。
お客様のご意見から生まれた機能には、他に、新米度炊き分け、銘柄炊き分け、無洗米コースなどがあります。

炊飯量に応じた火力コントロール

<炊飯水について>

  ごはんの材料は、お米と水だけですから、おいしく炊くためにはお水も重要です。
美味しく炊くためにおすすめの水とは、PHは中性、残留成分(余分な塩素など)の少ないもの、硬度は50以下のなるべく低いものです。
これは要するに、日本の水道水の条件です。
日本の米を日本で炊くなら、あまりお水にこだわり過ぎなくても良いと思っています。浄水器を通した水道水なら上出来です。アルカリイオン製水器などでちょっとpHの高い水だと、お米の表面のデンプンを溶かしてしまいますから、べちゃついて逆効果になることもあるのです。地産地消というか、地元のお米をその土地の水で炊いて食べるのが結局いちばんおいしい。あまりこだわり過ぎなくても大丈夫です。

<玄米炊飯について>

 最近、健康志向の高まりから、毎日食べる主食で体に良いものを摂ろうと、玄米食や分づき米、胚芽米が増えています。またそれらの炊き方や水加減の質問も増えています。
玄米は果皮に食物繊維が多く含まれ、糠層にはビタミンやミネラルが含まれているので、白米に精米すると、その部分がほとんど取り除かれてしまいます。またビタミン、ミネラル以外にもポリフェノールやアミノ酸などの栄養成分が含まれています。
ただし玄米は消化率が悪いのです。白米が98%消化するのに対して玄米は90%しか消化できません。ですから、健康な人がその健康を維持するために、玄米を食べるには良いですが、調子の悪い人が玄米を食べると消化不良になりますし、胃も痛めますからあまりおすすめできません。玄米はお腹の調子の良い時に食べて、お腹の調子が悪いときはお粥さんを食べるなどして、病気の時に玄米を食べて治そうとは思わないでくださいね。

 いよいよお待ちかねの玄米炊飯のフローのお話しです。
炊飯器の玄米コースは、まず最初に60分間、約50度くらいの温度でゆっくりと吸水させます。その後フルパワーで加熱して50分間ゆっくりと沸騰維持をします。その後約15分間の蒸らしという流れで炊飯しています。玄米は硬い果皮のおかげで水を吸いにくいので、白米の48分に対して約2倍の時間を掛けて炊飯します。この火加減の中で一番難しいのは、50分間の沸騰維持です。焦がさずに、ふつふつ沸騰させ続けるという、ガスの火加減では難しいことも、炊飯器なら簡単に調整できます。ガスで炊くのが面倒くさいと思う方はぜひ炊飯器を使ってみてください!

 さきほど(勉強会前半での話題から)のお話で、炊飯器で炊くと米の特徴が出ないとか、味が丸くなるというようなご意見が出ていましたが、炊飯器の場合は吹きこぼさないように、じっくりゆっくり炊きますので、玄米の持つ雑味などもすべて吸収してしまい、粒の中まで柔らかくて粘りもあるけれど、雑味やえぐ味も残る傾向があると思います。一方、鍋で炊いた玄米は、すっきりとした味わいに仕上がっています。そこが炊飯器との炊き方の違いかなと思います。
炊飯器で玄米を炊くときの注意点としては、弱火で炊き上げるために、あまり多い量を炊くと下のほうのごはんが自分の重みで潰れてしまいますので、美味しく炊くには容量の半分くらいがお勧めです。また白米に近いあっさりとした食感の玄米になるというのが特徴です。

<玄米炊飯! 圧力鍋VSスチーム炊飯器>

  一般的に、玄米は圧力鍋で炊くとおいしいといわれます。
ここで当社の製品の電気圧力鍋(玄米コース)とスチーム炊飯器で炊いた玄米の食感の比較をしました。ではどこに違いがあるのか・・・?
炊飯器の場合、圧力をかけずに炊いた玄米はあっさりとした食感、圧力鍋で圧力をかけて炊いた玄米は、もっちりとした食感です。
さらに、炊飯器の場合は種皮の中身が膨れて皮がはじけた状態に炊き上がるので、皮の違和感がなく食べやすいと思います。いっぽう圧力鍋の場合は、周りからギュッと圧力をかけて炊き上げますから、粒の上下の皮の柔らかいところが破けて中身がはみ出したようなご飯に炊き上がります。皮の残りが大きいせいもあり、ややその皮が舌に残る感じがします。
物性を計る機械で硬さを測ると、炊飯器で炊いたもののほうが柔らかく、粒の厚さも大きいです。ただ粘りは圧力鍋のほうが強いです。そんなことから粘りの強いもちもちした食感の好きな方には圧力鍋がおすすめですね。ただしこれは好みの問題なので、できれば炊き比べて違いを感じていただきたいです。

炊飯方法による玄米の特性の違い

<最後に>

image 当社の炊飯器には、これまでご説明させていただきましたような、おいしさを実現する最新技術と研究成果が詰め込まれています。カミアカリももちろんおいしく炊き上げますので、買い替えの際には、ぜひナショナルを選んでくださいね。
炊いてみて、「うそやったやないか!」という方はいつでも電話してください!(大爆笑)
これからもナショナルIHジャー炊飯器をどうぞよろしくお願いします。

 

取材協力:松下電器産業(株) 松下ホームアプライアンス社 クッキング機器ビジネスユニット 技術グループ 調理ソフト開発チーム 加古さおり さん

2008年(平成20年)2月6日

2008年02月06日 [ 5047hit ]
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