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第20回 大久保さんのカミアカリ入荷、そして知ったこと。

 10月18日、待ち待った大久保さん(茨城県久慈郡大子町)のカミアカリが入荷した。なんとカミアカリ発見育種者である藤枝の松下さんが安東米店にいる時に届いたのだ。
私自身も待ち焦がれていたが、それ以上に待ち焦がれていた松下さんにとっては、ナイスタイミング、宅配便のデリバリーバンから降ろされるやいなや、袋を開けその姿を手に取って食い入るように見たのだ。

 

 初めて見る自分以外の人間が栽培した「カミアカリ」、開発者にしか解らないその感覚を、傍から見ているだけで、そのドキドキ感がこちらにも伝わってくる。
「綺麗だ・・・」
それが松下さんの第一声だった。
第17回でもお伝えしたように、今年19年産の松下さんのカミアカリの姿は、お世辞にも綺麗とは言えなかった。というより、あの茹だるような熱い夏の藤枝の田圃と、有機農法というコントロールの用易でない微生物任せの農法、そして早生品種という組み合わせから、今まで見た目に綺麗なカミアカリなど、正直なところ見たことがなかった。その上に、あの台風9号・・・。
そういう意味でも、コシヒカリの突然変異種であるカミアカリを、コシヒカリの良食味地帯で栽培することは、誰あろう松下さん本人が最も期待していたに違いない。それが今、目の前に存在するのだ。

 低温倉庫に入れる前に一回炊く分の2合を取り、事務所に走る。新調したばかりの2台の松下電器製のIH式炊飯器で、松下さんのカミアカリと食べ比べするべく炊く準備をした。
一般的に玄米炊飯には長時間の浸水時間が必要とされるのだが、この炊飯器の場合には、浸漬時間0時間でいきなりスタートとなる。まあその代わりに、炊き上がるまでに約2時間の時間が必要となるのだが。
image 約2時間後、カミアカリの炊けたことを電子音が知らせた。恐る恐るフタを開けると、松下、大久保両者のカミアカリとも美味しそうに炊き上がっていた。その姿を見る限り、どちらも美しく、炊く前の姿ほど、その表情に違いはない。問題はその味と食感である。

 「違う!」
「この違いは・・・何?」
両者とも、あのプチプチとしたクランキーな食感こそ、巨大胚芽米たるカミアカリそのものなのだが、甘み、そして風味に違いがある。松下さんのカミアカリには、今まで感じたことのないほどの強い甘みと、良い意味での雑味感、複雑な風味があるのに対して、大久保さんのカミアカリは、「優等生・・・?」とでも表現したらよいような感覚。甘みや風味に松下カミアカリほどの野生的なパンチがない代わりに、全体におだやかで澄んだ甘さと風味。洗練された優等生的感覚なのだ。
あまりにも違う個性を持った両者のカミアカリに松下さんと私は驚いたのです。

 

 私はカミアカリドリーム設立時に、カミアカリを栽培する生産者にお渡しする栽培規定書の一部分に、ある内容を盛り込むように松下さんに進言しました。その時、その内容があまりにも抽象的で規定書の文言にはふさわしくないと一瞬躊躇したのですが、無理を言って書き込んだのでした。

 カミアカリの特徴は通常の3倍近い巨大胚芽を持つ品種であることです。その用途は玄米食及び玄米の加工品等で、この特徴を活かす上でも玄米で食べることを前提とした品種と言えます。また玄米での食味は精白米に比較して、品種の持つ食味、特性がはっきりした味として消費者に受け止められています。
その食味を構成する要素としては、栽培方法、栽培環境、天候、地域性などです。またそれらと同じくらいに、栽培者の稲作に対する意思や情熱が食味に強く影響しています。裏返せば、個々の栽培者は個々の諸条件と、それぞれの意思や情熱によって、個々の栽培者でなければ創造してない個性や風味を持った「多様な食味」の米質が作り出せると考えます。
言わばカミアカリはキャンバスであり絵の具です。個々の栽培者はこの道具を使ってそれぞれの栽培者自身にしか描くことができない絵を描くこと、カミアカリはそれを求めているのです。
このような考え方から、以下の栽培に関するルールを守れる栽培者に限り栽培の権利を育成者が契約いたします。従来の稲栽培では栽培者が品種を選んで栽培してきましたが、カミアカリは品種が栽培者を選ぶとお考えください。

 後半部分の「その食味を構成する要素としては〜」からの部分です。カミアカリに出会った時からおぼろげながらに、この米を栽培する上のコンセプトとしてこんなことを考えていました。しかし、これほどまでの違いを、実際に「多様な食味」という言葉どおりに表現されるとは思いもよらなかったのです。

 

 「これはある意味、アートだよ、いやきっとそうだ・・・」
後日松下さんともそんな話しになった。美味しい米を栽培すること、それは栽培者にとって当たり前の目的だけれど、「あなたにしかできない米とはなんですか?」という問いに対して、どれだけの栽培者がその表現を米の味の中に紡いできただろうか?
気候?風土?歴史?栽培方法?品種?人?・・・・・?
紡ぎだす要素は数多あるけれど、その素材をどんな風にデザインニングして一粒の米粒に表現するのか?あるいは表現されるのか?そんな意識を持つことがカミアカリを栽培する上で、これほどまでに重要になろうとは、このたった2種類のカミアカリを試食したことから、僕らに中で漠然としていたものが、確信に変わっていくのを実感したのだった。

●茨城奥久慈大子町大久保米カミアカリ

  • 生産地:茨城県久慈郡大子町
  • 生産者:大久保秀和
  • 栽培方法:特別栽培米 減農薬減化学肥料栽培
  • 玄米価格:1キロ¥690/5キロ¥3350/10キロ¥6600

2007年(平成19年)10月25日

■カミアカリドリーム勉強会のご案内

 カミアカリドリーム第2回勉強会を11月10日(土)にラペック静岡にて開催致します。今回は前半部で、今年4ヶ所で栽培された平成19年産のカミアカリの試食と徹底比較、徹底討論。後半部、ゲストスピーカーの公演では、松下電器産業の炊飯器開発に関わる研究者をお招きして「IH電気炊飯器の玄米炊飯」というテーマでお話しいただく予定です。
この勉強会は、巨大胚芽米カミアカリにご興味のある方、「カミアカリ三位一体宣言」の趣旨に沿う方なら、どなたでも参加可能です。お問い合わせは安東米店長坂まで、Eメールにてご連絡ください。

Acrobat Readerのダウンロード 「カミアカリ三位一体宣言」をご覧いただくためには、アドビ社のAcrobat Reader(無料)が必要です。
「カミアカリ三位一体宣言」が表示されない場合は、左のボタンを押して、別ウィンドウで表示されるアドビ社のウェブサイトからAcrobat Readerをダウンロードして下さい。

 

カミアカリドリーム第2回勉強会

  • 日時:11月10日(土)受付13:00 勉強会13:30〜17:00
  • 場所:ラペック静岡 2F第1研修室 〒420-0064 静岡市葵区本通7丁目11−9
  • 定員:40名
  • 会費:2,000円

※駐車場スペースが少ないため、出来る限り公共交通機関をご利用ください。
※参加希望またはお問い合わせは、安東米店長坂までご連絡ください。
※勉強会終了後、懇親会を予定しています。参加ご希望の方はあわせてお申し込みください。

<お問い合わせ、お申し込みご連絡先>
安東米店 長坂
〒420-0882 静岡県静岡市葵区安東2-20-24
電話:054-245-1331 ファックス:054-247-7737
 

2007年10月25日 [ 2824hit ]
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