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第4回 黄金色のカミアカリ

  「凄いだろう!この田圃!」

 陸橋の小さなトンネルを抜けた瞬間、目の前に田圃が広がった。小さな田圃ながら、すこぶるコンディションの良い田圃。この田圃こそが「カミアカリ」を栽培している田圃なのである。
 晴れ晴れとして微塵の滞りのない姿を目の前にして、愚問ながらこう質問してみた。
「僕には例年になく良い仕上がり見えるのだけど・・・?」
すると彼はこう答えてくれた。
「おう!すげーだろ!むせ返るようだろう」
「早生じゃあ久しぶりの姿だな・・・」
 6年前、私は松下さんに早生品種であるコシヒカリの栽培を段階的に縮小するように薦めた。高温登熟による品質低下と食味低下を避けるために、可能な限り早生を縮小し中生以降の品種を主力にすることを提案したのだった。こうしてヒノヒカリなど中生品種を主力と据えた現在のような栽培計画が作られたのである。
 しかしである。皮肉にもカミアカリはコシヒカリの突然変異種。そういう血統であるから正真正銘の早生品種。私としてはその開発段階から、この地で良質のカミアカリが栽培できるかどうかが気掛かりだったのです。
「生まれた場所で良質な米が出来ないわけがない・・・」という意見もあろうと思いますが、稲の立場における良質と人間の立場、食用米としての価値における良質とは、必ずしも一致するわけではないのです。  
しかし今、目の前のカミアカリは、そんな思いを一気に吹き飛ばすほどの、晴れ晴れとした光景なのです。
 デビュー初年度の今年平成18年の天候は、カミアカリにとって幸運というほかありません。初期はやや低温でじっくり育ち、縦に伸びず旺盛に分けつして横に広がり、出穂後も夜温は低く高温障害の心配もなく、毎年悩みの種のカメムシの発生もなく、おまけに台風の直撃もなし。
姓名判断の先生によると、この「カミアカリ」という名前、偶然にも画数的にもすこぶる良いとのこと。そんな強運を、なんとしても収穫までの残り2週間続いてくれることをただ祈るばかりです。
2006年09月03日 [ 3259hit ]
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