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4月29日号 家畜化していない米の味。

 今日は雑誌の取材があった。滋賀から2人、東京から2人、編集者とその担当ライターのチームである。集合時間の9時には全員安東米店の事務所に揃い、依頼されていたお米のレクチャー&土鍋炊飯を披露したのである。
講座でいつもやっているクイズ形式のレクチャーがひとしきり終わった後、炊飯土鍋で飯を炊いた。炊いたお米は、やはり当店のフラッグシップ米、松下×安米プロジェクト米ヒノヒカリと、ネタを明かさないシークレット米。そしてカミアカリ(玄米)の3種である。

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撮影用に用意された茶碗と敷布の上に鎮座した「松下×安米ヒノヒカリ」。カメラマン氏の高級デジタルカメラに重いデータ量で記録されていく。ただしあの味の記憶だけはどんな高性能なカメラも、いや銀塩さえも再現できないだろう。

 最初に炊き上がったのがヒノヒカリ。うっかり消火時間が遅れてしまったが、それが功を奏して良い加減におこげのあるご飯が炊けた。それはすばらしい炊き上がりで、炊いた小生の想像超える仕上がりだった。そんなわけで当然のことながら一同口を揃えて・・・・

 「いや〜美味しいですね〜」

 次に炊き上がったのはシークレット米、じつはこのお米、当店で販売している中ではまさに優等生のお米。数値的に見ても、どこに出しても恥ずかしくないパーフェクトなお米。もちろんこちらも一同口を揃えて・・・・

 「いや〜美味しいですね〜」

 そこで小生は一同に、こんな風な質問をした。
「どちらのご飯のほうが印象的ですか?そして記憶に残りますか?」

 すると皆口を揃えて・・・・
「最初に食べた方・・・ヒノヒカリ・・・」
次にこんな質問をした。
「では、この2つの違いは何だと思いますか?」
「・・・・・」

 それについてこんな比喩を使って説明した。
家畜化してない米の味だと思うのです・・・飼いならされていない自立した植物が持つ風味と風合い・・・それが記憶に残る味なのだと思うのです・・・この意味わかりますか?」
「ジビエ?みたいなものかな・・・?」ついには仏語までひっぱり出した。

 松下がアフリカから帰国してからずっと続けてきた稲とのスタンス。育てる稲作でなく、育つ稲作。稲自身が生きようとする植物として、生命として、そのあたりまえの有り様を尊重した結果として纏うことになった米の風味と風合い。それがこの家畜化されない味なのです。
農業という人為的な仕組みの中にある、ある種の無為の感覚。一見矛盾しているけれど間違いなくあるこの記憶に残る味
それは計測機械では測ることのできない味。少なくとも今ある米の味を計測する機械では残念ながら評価対象になっていない部分の味。そう思われる世界の話しです。
しかしそのサブなのかマイナーなのか、ともかく米の味を決めるメジャー要素ではないところに、この記憶に残る味が存在することは事実のようです。

 「僕はこういう米の味の虜になってしまったんですよ・・・」

 自分が夢中になっている米の味を、目の前にいる今日初めて会う人に熱く語っていることが自分自身でわかる。でも解ってもらいたいのだ。こういう米が今ほとんどないことを。たとえ存在していても、評価されていないことを、またその持ち味が実際に最終的に食べる人のところで再現されていないことを。

 「こういう味を感じるためには田圃からお茶碗までの、この流れの中で稲を、米を、ご飯を考えなければ、最終的に食べる人が感じられないのです・・・しかも同時に」
「そのためには生産者、流通業者、消費者、この三者の個々の利害でなく、全体としての利害、一つのチームとしての意識、ちゃんとバトンを渡す関係がなくては、表現できないのです・・・僕の仕事はこの関係を作ることなのです」

 「それプロデューサーですね・・・」

 東京から来たこの雑誌のプロデューサーM氏はこう言った。自らの仕事に投影しそんな言葉が出たのであろうと思われる。
そのMさんから後日電話が入った。
「あの日、あのご飯の味に完全にコロサレましたよ!ハッハハハ!」
どんな褒め言葉より嬉しい

あまりにも美しいので、小生もカメラを引っぱり出してパチリ。ファインダー越しに見えるご飯粒は、外硬内軟。まさに炊飯の理想の姿。表面の光沢がその質感を物語っている。栽培時の仕上がりはけっして良かったとは言えなかった19年産松下×安米ヒノヒカリだったが、丁寧に浸漬し炊飯土鍋でしっかり火を入れたら、持ち味の良さが引き立ちマイナス部分をすべて払拭した。これだから土鍋は止められない。あまりにも美しいので、小生もカメラを引っぱり出してパチリ。ファインダー越しに見えるご飯粒は、外硬内軟。まさに炊飯の理想の姿。表面の光沢がその質感を物語っている。栽培時の仕上がりはけっして良かったとは言えなかった19年産松下×安米ヒノヒカリだったが、丁寧に浸漬し炊飯土鍋でしっかり火を入れたら、持ち味の良さが引き立ちマイナス部分をすべて払拭した。これだから土鍋は止められない。

2008年01月28日 [ 3180hit ]
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