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3月30日号 ありのまま を、伝える。

 2008年、今年になってから田圃へ行くのは意外にも今日が初めてだった。毎年この日を迎えるにあたって「今シーズンは何をテーマにコトにあたろうか?」と悩む。それは、どんな記事を書こうかということでなく、どんな視点で写真を撮るか?の方だ。
じつは今年のテーマはもうすでに決めていた。というより一昨年、昨年とずっと実行しようと試みたができなかったこと。もちろん技量の問題も多分にあるのだけど、それ以上にどこか「格好良く見せたい」という欲が、それを妨げていたように思う。結果的にそんな欲が作り出す虚像(あるいは嘘)を切り取っていた。だから今年こそやってみたい、挑戦してみたいと思っているのだ。

 その視点とは、「ありのまま」だ。

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もとはまばらに生えていたレンゲも、数年で田圃いっぱいに繁殖した。「これ全部窒素肥料として計算に入れるんだよ・・・」。レンゲ以外にも多くの春草が繁殖している。名前を挙げれば限がないほど。「それらがすべてこの土地の稲の力になり、ご飯の味に繋がることを想像してごらん・・・」

 はじめてこの藤枝の松下の田圃へ行った時のことを今でも忘れない。もうかれこれ10年前のことだ。
その時の第一印象は、「こんなところで稲作やってんのかよ・・・」という、かなりネガティブな印象だった。
田圃の真ん中を走る高圧電線、田圃を分断して走る東海道新幹線、住宅と隣接する小さな田圃、田圃を一晩中照らす水銀灯・・・。
およそ有機農業という言葉から想像される、人里離れた清浄なイメージとは程遠い、どうひいき目に見ても劣悪としか見えなかったこの「ありのままの姿」。そこで行われる松下の有機農業を当時の私は疑ったのだった。
しかし、その疑いは何度も足を運ぶうちに消え去り、「だからこそ、ここで、ここにしかできない有機農業の有り様があるのか」という、ある種の確信めいたものを感じるようになったのだった。

 それは、表現者を目指していた学生時代に探し求めていた答えの一片だったことをすぐに思い出した。その一片を20年以上経ってから、表現とは無縁と思えた自らの仕事の延長線上で発見したことに、少し興奮したのだ。
いつしかその一片である「ありのまま」が織り成す、他にはない、ここにしかない何かをどんな風に表現すれば、この視点、この気付きをしていない人に共感してもらうか、そればかり考えるようになっていった。
しかしその答えは、もうすでに目の前にあったのだ。それはそこで栽培された米粒にすべて表現されつくされているように思えた。

 「米を食べれば、すべて解る

 たしかにそのとおりだった。それくらい松下明弘がこの場で栽培する稲には、他にはない、ここにしかない何かを感じるのに充分過ぎるほど充分なものだった。
ところが、それを食べた人がイメージし、脳裏に結んだ像は、その本当の「ありまま」とはやや異なるものだった。彼らの多くがイメージした像は、私がかつて勝手にイメージした例の「人里離れた清浄なイメージ」そのものだったのだ。

 人里離れた清浄と思える場にも、その場が織り成す「ありのまま」があり、そこにしかできない何かがあるように、それと同じ重みを持った何かが、ここ藤枝のこの光景の中にもあることを、きちんと見なくてはいけない。
誤解を恐れずに言えば、田圃の真ん中を走る高圧電線、田圃を分断して走る東海道新幹線、住宅と隣接する小さな田圃、田圃を一晩中照らす水銀灯・・・。そんなネガティブに思えるモノに囲まれつつも、はそれさえも力にして強かに生き実を結び、ここにしかない何か表現しているのだ。

 この10年、毎月田圃通いをしているうちに、そういう確信を得た。だから、どんな場所の稲も生きようとするその姿は、すばらしく見えるのだと。そしてそのありのままを、きちんと受け入れた時、そこにはそこにしか存在しない米の味が現れるのだということを。

 今シーズン、そういう「ありまま」を伝え、そして表現したいと思っている。

 

多種多様な春の草を踏みしめながら、新たに有機栽培化するとなりの田圃へ行く。そこもまた高圧電線の下。しかし松下は言う。「ここで育つ稲は高圧線に贖う力を獲得しているよ、稲は、いや植物はどんな環境でも生きようとする力を、もともと持っているんだ・・・ただ、その力を引き出すのも、邪魔をするのも人間なんだけどね・・・」。多種多様な春の草を踏みしめながら、新たに有機栽培化するとなりの田圃へ行く。そこもまた高圧電線の下。しかし松下は言う。「ここで育つ稲は高圧線に贖う力を獲得しているよ、稲は、いや植物はどんな環境でも生きようとする力を、もともと持っているんだ・・・ただ、その力を引き出すのも、邪魔をするのも人間なんだけどね・・・」。

2008年01月28日 [ 2457hit ]
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