アンコメのような商店や農家のほとんどは家族経営である。大企業のように毎年新人社員が入社し、日々新陳代謝するそれとは違い、家族経営の事業所にとっての代替わりは、20~30年に一度やってくる大イベント。経営者が若返るだけで、様々な変化が起こり、停滞していた雰囲気に変化をもたらし活性化することもあれば、慣れ親しんできたものが失われることだってある。いづれにしても生き残るために、様々に変化をもたらすことには変わりない。
コシヒカリの稲刈り直前の8月11日、静岡県の西部、遠州森町の稲作農家、堀内さんを訪ねた。堀内さんのお米はアンコメの大定番、とくに「きぬむすめ」と「にこまる」は超人気米、それらを栽培する堀内さんは欠かすことできない生産者の一人である。それほどに重要な米であるため、栽培期間中の稲の生育状況が気になり、時々訪ねている。じつは堀内さんには伝えていないが、ドライブと称しで遠州地域をクルマやバイクで走りに行く途中、チラ見程度ながら、毎月見に行っているのは、ないしょの話である・・・(笑)
じつは堀内さんのところは数年前に代替わりした。そこで、新社長と顔を合わせる度にアンコメ視点での意見や要望を伝えてきた。けっして無理強いをするつもりではないけれど、良い米をさらに良くするための提案だった。その行為を止めることは、相対的には後退しているように見えてしまうからだ。これは市場経済の節理みたいなもの、贖いようのないことと理解するほかない。互いに一人前のプロとして生き残るための欠かせないこととして提案してきたつもりだった。そして今回、うれしいことに、ようやくその目途がついた。思えば10年近く伝えてきたことだったが、代替わりもその変化のきっかけの一つだったに違いない。(先代社長の名誉のため言えば、数年前からそのための準備を先代がしていたことも今回話を聞いて知った)
これはあくまでもアンコメの経験上のこととして聞いてほしいのだが、稲作生産者が代替わりする時、米の品質や食味が3年ほど少しだけブレることがある。(もしかするとプロでないとその微妙な変化は認知できないかもしれないが・・・)生産者は先代がこれまでやってきたことを踏襲しつつも、新世代として挑戦したいことや、やらなければならないことなど様々あるだろう。それら様々なことが田んぼや稲に馴染むまでに3年、つまり3作分の時間が必要というわけだ。一年一作ゆえに3年も掛かるが、その期間を脱した後のアップグレード感は3年我慢したかいがあるものとなる。いづれにせよ、常に変化に対応し、どんな時代、どんな状況でも「あ~やっぱりこの米いいな~」と感じられる米でないといけない。今回はそんな思いをあたらめて考えた機会であった。
堀内さん親子に感謝を込めて
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画像:にこまる、収穫は10月初旬、今は身体を作っている真っ只中。