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長谷の竈 製作記(4)

 

これは、2022年長野県伊那市長谷中尾集落にある再生された古民家につくったご飯炊き専用竈「長谷の竈」の製作記です。
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「蛇紋岩を入れる篭、どうやって作ります?」

小谷氏の質問に「鉄筋を溶接して作るつもりだよ」と答えると「俺、溶接できないっすよ」との返答。この時点で互いの脳裏に、ある人のことが浮かんだ。それは松下氏のことだ。藤枝の有機米生産者でカミアカリの生みの親、カミアカリ勉強会では共に活動してきたあの人だ。彼は有機で稲作をやる前は溶接工場で働いていた経験があり、その技を見込まれたほどの腕前だとか(本人曰く)・・・。たしかに自身が製作修理した農機具の溶接跡はじつ美しく見事な仕上がりは皆の知るところだ。そんな腕前を持った人材が身近にいる。小谷氏も僕も、それを使わない手はないと思うのは自然なことだった、しかし我々は口をそろえてこう言ったのだ。

「きっと言いよな『めんどくせ~な~』って・・・」(笑)

松下氏の名誉のために言うが、静岡人とくに中部の人は、本人の思いとは逆のことをわざと言う癖がある。それは小学生が好きな女の子に対して意地悪を言うのに似ていて、静岡出身の作家、村松友視氏が氏のエッセイでそのことについて静岡人特有の照れ隠し表現と評していた。つまり松下氏の「めんどくせ~な~」は「やりたい!ぜったいやりたい!やらせて!」という風に捉えるのが正しい理解なのだ。(笑)

職人仕事は与えられた仕事を、できるだけ最短距離で無駄なく正確に仕上がることが、彼らの美意識と言っていい。ゆえに彼らは僕に言うのだ。「図面くれれば材料手配して綺麗仕上げるよ・・・」と。松下氏も、ほぼ同様のことを僕に言った。僕も当初、篭に関してはそういう作りでも良いかなと思ったが、どうもしっくり行かず、気が進まずにいた。こう感じている時は答えが間違っている時なのだ。そこで小谷氏に相談した。

「鉄筋をランダムに切って、現場で溶接しながら造作していくはダメかな?」

伊豆で作った御神火竈の製作経験もある小谷氏は、僕がそう言うであろうことをあらかた想定してらしく、そのための工法をすでにイメージしていたらしい。ただその工法を松下氏に正しく理解してもらうことについては、どうやら自信がないらしく、僕から直接話をしてほしいとのことだった。(つづく)
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画像上:機械整備はお手の物。農機具からオートバイまで何でもこなす松下氏。本人曰く機械屋泣かせだとか。
画像中下:こんなやりとりの間に小谷氏は竈の本体部分の製作に取り掛かっていた。ここが竈の心臓部になるところ。

2022年05月12日 [ 277hit ]
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