全部で44俵積まれた松下くんのトラックが安東米店の倉庫に入る。松下×安米プロジェクトの主力品種ヒノヒカリが10月11日ついに入荷した。その姿を見ながらいつもと少し違うのにすぐに気がついた。「あれ?1等?」。米袋に押された品質評価検査のハンコが1等なのである。 お恥ずかしい話しながら松下くんの米はこれまで常に2等に甘んじていた。静岡という気温の高い土地柄と田圃のある藤枝周辺のお世辞にも誉められない環境、そして有機栽培という微生物任せのやや博打的栽培方法のためなのか?これまで万年2等だったのだ。そんな状況ながらも食味的には充分魅力だったから品質評価が1等でなくてもさして問題ではなかった。もっとも1等米であっても美味しくないお米は山ほどあることを考えれば見た目にこだわることは本末転倒とも云える。そんなわけでアンコメ米作りプロジェクト的視点ではこれまで等級に関しては著しく粗悪でなければ正直云ってあまり気にしていなかったというのが本当のことなのである。 ところが万年2等の松下×安米ヒノヒカリが1等というから驚いた。早速袋を開けその面を見た。そこには今まで見たこともない美しい姿があった。粒張りの良さ、晴れやかな色の良さはもちろんのこと胴割れ、背白、腹白、カメムシ被害粒などほとんどない正真正銘検査1等米の姿がそこにあったのだ。荷物を下ろしながら「今年はどうしたんだ!すげーなー!」と云うと、「おー何だかやたらよくできちゃったみたい」と松下くんも狐につままれた感じのようだ。「反収はどうっだった?」と聞くと「7俵越えなかった」との返答。僕はすかさず「よしッ!」と叫んでしまった。上限7俵、それを越えないことが高品質と良食味における黄金の境界線だからなのだ。 その日の夕食に早速試食をしてまた驚いた。全く文句のない食味だった。試食をする時、その米の良さがどこにあるのかを探すようでは美味しいとは云えない。口に入れた瞬間「あッこれいいね」と何の疑問も持たなかったお米が美味しい米だと思っている僕にとっては、この米はまさに「あッこれいいね」と感じられる米だったのだ。 じつはこの食感こそこの5年間僕が松下くんに求めていたものだった。バランスの良い食感。あえて云うなら「キレの良さ」を感じる食感である。甘みがどうの、舌触りがどうの、粘りがどうだこうだと各論的に云う必要のない調和のとれた自然な感じ。思えば5年前、ひょんなこからスタートしたアンコメ米作りプロジェクトにとって松下くんが栽培するヒノヒカリはそのルーツとも云うべき品種である。力こそあるが調和なんて無縁のあの米がついにここまで来たのかと思うと感慨無量である。 17年産松下×安米プロジェクト米ヒノヒカリ。さあ!限定45俵(2700キロ)販売スタートである。 |
松下×安米ヒノヒカリ a la carte |
松下10月11日号 ついに1等ヒノヒカリの巻
( 2005年度 )
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2005年01月27日 [ 3782hit ]