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松下9月4日号 ヒノヒカリ出穂と静かな彼の巻

 会津、山形視察&勉強ツアーの真っ最中、「今頃ヒノヒカリが出穂してるだろうな・・・」と松下くんが云ってたのが気になって次の日曜日、藤枝のヒノヒカリの田圃までカメラ抱えて行ってみた。残念ながら松下くんは少し離れたところで作業していたために直接会うことはできなかったが携帯電話でヒノヒカリの生育状況を聞いた。

 「まァまァだろ・・・」。いつもなら電話の向こうから「文句なし!いい感じだろ〜」なんて自信満々で云うくせに今日は妙に謙虚だった。そんな調子なのでこちらから「いい姿じゃないか!」と云うと「あの稲ほどじゃないけどな・・・まァまァだろ・・・」と返ってきた。あの稲とは会津で出会った熱塩加納村の菅井さんの稲のことである。松下くんにとってあの芸術品的稲との出会いは、そうとうのインパクトだったらしい。そこで僕は、「あの稲はあの場所とあの生産者によって紡ぎだされた最高の姿なのであって、この藤枝という場所でできる最高の稲の姿はこのヒノヒカリをはじめてとする松下くんが手掛けるすべての稲で感じられるものだよ」と指摘したのである。

 僕はいつも稲作とはコンペティションや競争ではないと信じている。その場所でその生産者ができる最高の仕事はどれもすばらしい仕事であってそれらを比べて優劣をつけることは多様性においてとってもひ弱なことだと思うからだ。そんな考えは「甘い」と思われる方もあろうが、例えば絵画においてゴッホとピカソを比較してどちらが優れているかなどと比べることが無意味なのと同じように稲作においても同じことように思うのだ。もっともゴッホやピカソレベルの稲がやたらあるわけではないのであるけれど・・・。

 稲は栽培段階においては出穂から収穫までの期間(登熟期間)の気候が米の品質や味に最も左右される。日中の気温が暑くとも夜間気温が下がれば、稲は充分にその種子にデンプンという形で良質のエネルギーを蓄積できる。もしこの期間に夜間気温が熱帯夜のような暑さが続くと稲は疲労して充分な蓄積ができない。それはようするに人間が思うところの美味しいお米はできないこととなる。そこでアンコメ米作りプロジェクトでは、静岡の夜間気温が最も暑い7月中旬から8月中旬での登熟期間を避けるように栽培スケジュールを組んでいるのだ。これは市場の動向に左右されることなく品質や美味しさを優先して栽培することができるこのプロジェクトの真骨頂なのである。こんなこと一つだけでもこのプロジェクトで栽培される米はこの静岡という土地でできる最高の作りを目指しているのである。会津でできる最高の仕事と藤枝でできる最高の仕事とは自ずから異なるもので、それぞれはそれぞれの最高を求めて互いにインスパイヤーされる関係が良いことのように思う。だから松下くんには「どうだ!スゴイだろう!」っていつものように胸を張ってもらわなきゃいけないのである。

 ヒノヒカリは晩夏の太陽に照らされて生きいきと空に向けて穂を立てている。あと1ヶ月ほどでいよいよ収穫の時を迎える。それまで充実した時間を過ごしてくれることをただ祈るのみだ。

ヒノヒカリ a la carte

今回の時間はこちら
奄美諸島付近にいる台風14号の余波か?風が雲を吹き飛ばし痛いほどの日差し。 主は近くの田圃で草刈り、携帯の向こうはいつになく静か。
奄美諸島付近にいる台風14号の余波か?風が雲を吹き飛ばし痛いほどの日差し。 主は近くの田圃で草刈り、携帯の向こうはいつになく静か。
2005年01月27日 [ 3376hit ]
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