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第15回カミアカリドリーム勉強会レポート

 

 

6月29日(日)静岡県農業技術センター三ヶ野農場で同研究センターの作物科長である宮田祐二さんのご案内で第15回目のカミアカリドリーム勉強会は行われました。
当日は好天に恵まれ、30人を超える参加者と共に稲育種の様々についてその現場でお話を伺いました。

 

 

第15回カミアカリドリーム勉強会レポート

 

産地や稲品種がお米の商品名として流布するようになってから何年経つだろうか?

 

「○○産○○ヒカリ」

 

産地や品種、栽培方法や生産者・・・。
今やお米は単なるお米であるだけでなく、そのお米が生まれた背景など、できるだけ多くの情報と一体となって我々のもとにやってくる。

情報化社会にとってそれは当然ことではあるが、ともすれば、情報の独り歩きによって物の本質とは別のところで様々に勝手な判断や評価をしているのではないだろうか?例えば米の品種について、名前は知っていても、その品種の背景やそもそも品種とは何か?というところまで考えることはほとんどないだろう。

6月29日に行った第15回カミアカリドリーム勉強会では静岡県の水稲の研究機関、静岡県農業技術センター三ヶ野農場を訪ね同研究センターの作物科長である宮田祐二さんのご案内のもと稲育種や品種のことその開発の現場を見学し、実際の品種開発の現場でそれを考えてみた。

 

例えば静岡県でも主要品種として作付されているコシヒカリ。
現在コシヒカリは北海道・青森・秋田・岩手をのぞく全国43都府県で栽培されています。
誤解を恐れず言えば、それぞれのコシヒカリは同じコシヒカリではない。
おおもとは同じでも各県の農業試験場で種籾を採取していく過程でわずかずつ変化していくのだ。

そもそも品種とは生命である以上、世代交代するうちに性質がバラけていくのは宿命。
それが生命の多様性というものだからだ。
そのバラけていくコシヒカリの中から各県の専門技術者が「中庸なコシヒカリ」選んで種籾とする。これを代々が技術者が受け継いでいくのだ。その選択が何十年と経過すると各県ごと異なるコシヒカリが意図せず生まれるというわけです。


何年か前、技術者の集まりで各県のコシヒカリを一同に集めてみたら姿形、食味までもが微妙に異なっていたとのこと。
つまり現代のコシヒカリは意図せず各地方にある地方品種になっていたというわけです。

ここで重要と思うのは人の技や眼力、さらに言えばセンス。
数多の中から「ベストな中庸」を選ぶには、稲の性質、地域の風土、米の食味、あらゆる要素に精通した上で「これぞ!」というひとつを選ぶ。限りなくオリジナルらしい中から、それぞれの地域で稲を育てる人、お米を食べる人、つまりそれぞれの地域で生きる人たちの糧のためにどうあるべきか?を考え抜いて選ばれるわけです。


あえて「センス」という抽象的な表現をしたのも、この仕事が並大抵のことではないと感じたからです。そして、たとえ選ばれたそれがオリジナルとは異なっていたとしても、きっとそれは正解なのだとも思いました。

 

こんなお話を見聞きつつ、これら技術、眼力、センスを持った人材が思いのほか少ないことにも驚かされました。三ヶ野農場では宮田さんが中心となり若手数名を鍛えているとのこと。(静岡県の水稲の未来は明るい!?)お米消費量はかつてに比べれば減ったとはいえ、毎日美味しく食べているお米、それはまさに、このような技術者たちの努力の賜物ということに気付かれました。


<Special Thanks>
静岡県農業技術センター三ヶ野農場、宮田祐二さん、スタッフの皆さん
本当にありがとうございました。

 


画像上:静岡県水稲の聖地、静岡県農業技術センター三ヶ野農場
画像中:ひと株づつ種籾を採取するための機械 宮田さん
画像下:0.1ミリづつ米粒を篩別けする手作り装置。まるで指物のよう。
 

 

2014年09月04日 [ 3452hit ]
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