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松下4月10日号 勝負はここで決まるの巻

 田植え前、この時期の田圃の様子が好きでお花見がてら観察をしに松下くんの田圃へ行った。静岡では例年3月下旬に満開となる桜(ソメイヨシノ)も今年は今頃になってようやく満開となり藤枝市内の沿道の桜並木も今が盛りを向かえている。そんな中、松下くんはもっぱら田圃の土木作業と元肥づくりに励んでいた。一年間使った田圃の内外、畦や水廻りなどに所々破損箇所やら改造したい箇所が出るものでこの時期に集中して修理改造するのだ。今年は新たに休耕田だった田圃を借り受けたため、その田圃を松下式有機栽培でドライブするために徹底的に改造していることもあり例年に増し作業に追われている様子だった。

 「勝負はこの段階で決まるからしっかりやっとかなきゃ!」と松下くんは気合いを込めて云う。田植え前に勝負が決まるなんて不思議に聞こえるが、この段階こそ家を建てるための基礎工事に例えることができる重要な作業なのだ。かねてからこのコンテンツでも報告しているとおり無農薬の有機栽培の最大のポイントは雑草対策である。一般的には生えてくる雑草をどのように抑えるか?と考えるところだが松下くんの場合には「雑草の生えない田圃づくり」という逆転の発想を持っている。そのための技術を正確にドライブするために完璧なまでの水平な田面と水の管理が正確に行える水廻りの整備なのである。水平無比な田面を作ることと水廻りの整備を行う理由は水を入れた時に田圃全面の水深が常に一定となり空気に触れる部分とそうでない部分を作らないようにするためだ。空気に触れることで発芽する雑草を抑えようと水を入れても田面すべてが水平でなくては均一に水が入らず空気に触れてしまう部分ができる。そこから雑草が発芽してしまうのだ。水を深く入れれば済むことのように思えるが凸凹で高低差がある田圃では容易ではない。また大井川の扇状地である藤枝は水抜けがよくコントロールが難しい。それをコントロールするためにも水平な田圃は重要なのだ。また生長期に肥料成分が片寄らないことは食味や品質の管理には必要不可欠なのである。例えて云えば基礎工事が正確なら柱を立て屋根を葺く大工仕事はスムースかつ正確に行え、その後の建具仕事もまたスムースかつ正確となる。そんな家はきっと何十年経ってもびくともしない立派な家になるに違いない。立派で健康な稲を育てるにはこの基礎工事が勝負だというのはこんな理由からだ。

 基礎工事が松下式有機栽培にとって重要であることは以上述べたとおりだが、僕個人としては工事前の田圃が好きだ。去年の刈り株から生えたひ子生え、様々な生き物の残骸、分解の始まった稲わら、名もない野草、そんな数多なる太陽エネルギーの固着物達が土に転生する直前の姿がそこにある。花見も良いが今は田圃の土の正体を観察できる絶好の時なのだ。


水平無比


刈り株


たにし


ひ子生え

今回の時間はこちら
新しい田圃用の水取り入れ口を作り終えて一服。日焼け気味+お疲れ気味の松下くん。
新しい田圃用の水取り入れ口を作り終えて一服。日焼け気味+お疲れ気味の松下くん。
2005年01月27日 [ 3054hit ]
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