黄金色の田んぼで会いましょう。

2016/9/7 0:14 投稿者:  ankome

 

― 台風12号が来るから、カミアカリ今日の午後から刈るよ・・・
 
9月3日の午前中、携帯へこんなメッセージが入った。
即座に去年の手帖を見ると9月11日のページに「9:00~松下カミ収穫」とあった。
昨年より一週間以上も早い収穫に驚くも、
台風12号の影響で来週一週間、ほぼ雨模様という予報から、少し早いが刈ること決意したのだと察した。
それに数日前に「変電所横はもう刈っても良さそうだ」と言ってたことも思い出し、迷いはないのだと思った。 
翌12日の日曜日、作業を見に田んぼへ行ってみた。
最後は学校前だろうと想像したとおり、松下のコンバインが田んぼ一枚を残し止まっていた。
 
― トラブった・・・
 
変な音で気づき、その場でコンバインを止め原因を探っていた。
エンジンを止め、内部を覗くと米と藁を分別する箇所にあるゴムがちぎれ飛んでいた。
原因が分かれば応急処置は早さはピカイチ。
トラックで作業場へ行ったかと思ったら、すぐ戻ってきて工作がはじまった。
自宅から持ってきたビニールクロスであっという間に修理したのだった。
その作業中、畦傍からこちらを見ている青年がいた。
 
― おおっ、また来たか!ヤツはベトナムの子だよ。
 
松下には見知った青年らしく、手を振ってこう答えた。
細身で浅黒い肌に白いシャツと白い短パンが似合う。二十歳そこそこ、なかなかのイケメンだ。
田植えの頃から時々松下の田んぼを訪れている常連さんとのこと。
日本に来てまだ4ヶ月というのに、日常会話に困らないくらいの日本語を話す。
聞けば故郷は農家で、田んぼ仕事を手伝っていたという。
田んぼの香りが懐かしくて、こうして時々やって来るそうだ。
 
― あれはいらですか?
 
コンバインを指さし、そんな質問をするので、おおよその金額を答えると驚いた顔をした。
ベトナムの実家では牛と人の力だけで作業をするそうで、
機械を持ってる農家でも、日本製の農業機械はなど高嶺の花、
稲刈りとなれば家族総出はあたりまえ、機械で稲を刈るなど夢の世界だそうだ。
目の前で収穫作業をする松下が、すべての農作業を独りでやっていることを伝えると、興味深そうな目をするので、
松下が、日本ではちょっとは名の知れた農家なのだと話したら、また驚いた顔をした。

彼の故郷の稲はもっと背が高く、水の切れない田んぼで収穫するとのこと。
それを聞いたら実験圃場にある、背の高い東南アジア原産の品種を思い出した。
収量はけっして多くないが、肥料もあまり必要でない馬力のある稲。
しっかりと根を張り、少々の風はしなやかに受け流す。風にそよぐそ姿は優雅そのもの・・・。
そんな話を聞いたら無性にベトナムへ行きたくなった。
 
― べとなむにいくときはおしえて・・・
 
別れ際、こんなうれしい一言を残して彼は自転車で去っていった。
ひらがなは読めるけど、漢字とカタカナが難しいとも言っていたけど、ホームページ見てくれたかな?
また黄金色の田んぼで会いましょう。
hẹn gặp lại

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