前回の更新が3月11日0時32分だったことに気づく。この日の午後だったんだな。
あの日以来、落ち着いて田んぼへ通うこともかなわなかった。
別件で一度、松下の家を訪ねたが土砂降りの雨と疲労で田んぼを眺める気持ちの余裕もなかった。
視線の先に捉えるのが精一杯だった。
今日はようやく田んぼをじっくり眺められた。大型連休の中日、みどりの日だ。
松下は晩生品種の種まきをする苗床づくりの最中だった。
攪拌機でブレンドされた山土や堆肥を均等の厚みで苗箱に敷く。
専用の機械を使っているものの細かいところはやはり手仕事、几帳面な松下ならでは。仕上がりはじつに美しい。
作業所前の苗場ではすでに早生や中生品種が若苗色であった。
今年は天候にも恵まれ遅れもなくとてもいいコンディション。
苗の出来具合もここ数年の中ではボクの目で見てもよく見える。
いい菌がいるぞ。ほらッ。
レンゲの花が満開の田んぼで去年の刈り株を引っこ抜く。
根っこについた土の一部にコロニーが白く見える。
名前はわからないが松下の田んぼにはなくてはならない菌に違いない。
これらの様々な菌類、微生物、大型の生物に至るすべてがバランスして独自の生体系がここにある。
そのはじまりがこれらの菌類に他ならない。
田んぼには様々な春草も繁茂している。
レンゲはおなじみの春草、マメ科の植物の一種。
根に共生する根粒菌が空気中の窒素を固定しアミノ酸や亜硝酸を植物に供給する。
つまりその状態のレンゲを鋤きこむことで緑肥となるわけだ。
このように意図して繁殖させた植物以外にもこの時期ならではの植物は田んぼに入り込んで花を咲かせている。
それはとても美しい。
松下と震災後にあった出来事を話しながら延々と田んぼを散策する。
以外かもしれないけれどボクにとって一年で一番好きな風景。そして時間でもある。
栽培が田んぼで始まる直前の穏やかさがじつにいい感じなんだ。
それにここに繁殖するすべての植物たちが秋に収穫されるお米の風味風合いに少なからず影響する。
それを想像するだけでワクワクするからだ。
田んぼ中で寝そべりながら虫の目線で夢想する。何とも心地いい時間だと思わないかい?
次はいつ行こうかな。田植えが始まっているかもな。でもその前にもう一度。
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画像上 レンゲの中で夢想する。
画像中 松下はたいへん几帳面な人なんだ。
画像下 白く見えるのがコロニー。