意外性と即興性。

2010/10/9 13:45 投稿者:  ankome

10月3日。予定のない日曜日は久しぶり。
今月は、ほぼ休みのないスケジュールだと気づき、午後から田圃へ行った。
田圃に稲のある風景も今年最後かな。

 

定点観測しているいくつかの地点をいつものように巡る。
気温は高いが空気が乾いているから快適である。
10日遅れの彼岸花、今年の太平洋高気圧は半端じゃなかった。

 

ちょうどお祭りの季節。
前を通る時には必ず手を合わせている稲荷神社。幟を見るのはこれが初めてだった。
新幹線によって分断された参道と田圃、なによりも所得倍増が急務だった1962年に作られた。
それはようやくお米を、お腹いっぱい食べられるようになった頃のこと。
松下や僕が、生まれ育ったのはその時代だった。
豊かな時代の申し子のような世代。
その僕らは、1997年から予想のできない模索を始めた。
それから13年、田圃そのものは大きな変化はないけれど、
そこで生まれた米は、少しはモノ云える米に生長している。

 

その中にあって、22年産はタフな年だった。
歴史的な猛暑。とくに9月のそれは、強烈だった。
それでも、米は収穫できた。少なかったけれどね。
味や質をとやかく云うのは、食べる側のエゴだと思う。
「それを云っちゃあおしまいだよ・・・」米屋としてはね。
でもね、田圃に近いところで、米屋をやっていると、そう思うわけ。
だから、生まれた結果をそのまま受け入れ、受けて側が、その魅力を探す努力をする
雑器が天下の名品として見立てられることもあるのだから。

 

松下との仕事には、そこに面白さがある。
何が出るか分からない、意外性と即興性
「米にそんなモノが求められる必要はあるの?」
そう云われると困るけれど、そこが僕が面白いと感じている視点なのだからしかたがない。
だからここで何が起きているかを知りたい。見たい。捉えたい。
土のこと、空のこと、虫のこと、技のこと、人のこと、時代のこと・・・。
ポジだとかネガだとか、フォルダに仕分けする前にね。


画像上:彼岸花とヒノヒカリ。ヒノヒカリは10中旬過ぎにはアンコメにやってくる。
画像中:ドヨウオニグモ。稲につく害虫を捕食するクモ。
画像下:松下さん。22年産も終盤、今日も天気と相談しながら粛々と作業を進めている。