暑さ寒さも彼岸まで・・・と、この季節になると誰でも一度は口にする。
けれど、今年はそうでもない。
たしかに9月に入ってからも暑い日はあったものの、総じて涼しく快適な日が続いている。
思えば8月は日照が足りず、各地で農作物の生長が遅れ気味。
お米も入荷が遅れているものがいくつかある。
それでも稲は遅れることはあっても実らぬことはほとんどない。。
細かいことを言えばいろいろあるが、食べられるものにはなるのだから、じつにありがたい穀物だ。
それが東アジアに住む我々の糧なのだ。
こんな稲と人の関係はかれこれ10000年以上になるらしい。
最初、ご先祖さんたちは野に自生しているイネ科植物の実を食べはじめた。
そのうちにその実(種)を蒔いて栽培をはじめる。農耕のはじまりである。
米を実らせた稲の中には時々いろんなバリエーションが現れる。
その中から、より食べ物としてふさわしい実を翌年種として土に蒔く。つまり純系選抜だ。
それを10000年やってきた。
一年一作だから10000回、それを東アジアいたるところでご先祖さんたちはやってきた。
今、多種多様な稲を見ることができるのも、その長い年月の賜物。
現在その技術は体系化され専門技術者や松下のような稲オタクたちが日夜続けている。
松下の実験圃場にある105種の稲コレクションの中にも次世代を担うかもしれない個性が育ちつつある。
お彼岸の日、こんなことを考えながらご先祖さんたちが見てきた10000回分の実り景色を想うと、
なんだが胸が熱くなってきた。
_
画像上:
彼岸花とあさひの夢。あさひの夢は9月末に収穫予定。今年もすこぶるいい出来だ。
画像中:
赤い芒を持つ品種。そもそもイネ科の植物の多くは芒を持っていたが、食物としては芒がないもののほうが、かさ張らず都合がよい。そこでご先祖さんは芒のない突然変異を選びそれを親とした。しかし赤い芒は美しいことで残ったのかもしれない。
画像下:
籾も葉も芒もすべて黒い稲。背景は酒米品種。