松下くんとのプロジェクト。松下×安米プロジェクトの主力品種ヒノヒカリの稲刈りが来週末と聞いてその一週間前の日曜日に藤枝の田圃へ出かけた。彼岸も過ぎ10月というのに今日は猛烈な暑さである。9月18日高野くんの田圃に行った時よりも湿度こそ低いものの気温はその日以上の暑さである。故障していた車のエアコンも修理しエアコン全開で国道1号線バイパスを行く。沿道から見える田圃はほとんど稲刈りが終わり晩生の稲が少々残るくらいである。廻りはそんな状況ながら松下くんのほとんどの田圃は例年どおりまだ稲刈り前である。 「最高の生育状況だぜ」開口一番松下くんはそう云った。確かに見てそれとわかるくらいのすばらしい出来ばえだった。全体感が明るく色の抜け具合も晴々としていて気持ちがいい。そんな風に見えるのは5枚ある葉の1枚目から4枚目までちゃんと生きている証拠だ。去年は若干刈り遅れが心配されたものの結果的には食味はすばらしかった。そんな昨年の経験から考えてみても、今年の出来は昨年に勝るものを感じている。ということは昨年を越えるさらに素晴らしい食味なのか?と期待がふくらんでしまうのは僕だけではないだろう。眼前のヒノヒカリを眺めながらニヤニヤしながらも、もう一人の僕がこうも云う。「獲らぬ狸の皮算用・・・」。あと一週間すれば結果は出る。それまでは静かに見守るほかないのである。 田圃からの帰り道、以前から楽しみにしていたチェロのコンサートに行った。静岡市内にある本格的なコンサートホール静岡音楽館AOIで開かれる「J.Sバッハ無伴奏チェロ組曲+α演奏会」である。バッハファンならずともこの無伴奏チェロ組曲を知らない人はいないほどバッハの作品の中でも有名な楽曲の一つである。僕はこの組曲が大のお気に入りで車には常に誰かしらの演奏したCDを積み大音響とともに田圃へ行くのが恒例となっている。そんなお気に入り中のお気に入りの「無伴奏チェロ組曲」を田圃帰りに生で聞けるとくればこれ以上のことはない。午後3時、第1番ト長調プレリュードが会場に響き渡った。 バッハの無伴奏チェロ組曲を聴くたびに僕の頭の中に浮かぶ光景がある。それは米の道程である。種籾からお茶碗に盛られるまでの人と自然とが調和して創りだされる米の道程が第1番ト長調プレリュードから第6番ニ長調ジーグにい至る約2時間30分に及ぶ時間の中に集約されているように思うからだ。バッハ本人は田圃をイメージして作曲しているはずはないのだが、なぜか田圃が似合う。僕の勝手な解釈であるが、そこには生命の賛歌とも感じ取れる共通する普遍性があるからなのではないだろうか。僕はこの組曲を聞くたびにそこに大いに感動するのである。 収穫を週末に控えた松下×安米ヒノヒカリは摂氏30度を超える季節外れの暑さの中、ついに第6番プレリュードを奏でるところまでやって来た。 |
ヒノヒカリ 慎重に確認 ヒノヒカリ |