9月に入ったとたんに真夏の太陽が帰ってきた。残暑というより夏本番と表現したいくらいのギラギラ太陽である。静岡では連日30℃を越える気温を記録し、毎年最高気温が記録される天竜地域でも37℃を記録し地元ローカルニュースでは「クーラーが効かないんです」と室外機に水をかける住民の映像がテレビで紹介されていた。それにしても7、8月は雨と低温、9月は一転して猛暑。農作物の生産流通に関わるものにとってこの極端な気象の変動ぶりにはほとほと苦労させられる。日本が冷夏で米が心配だと大騒ぎしている頃、ヨーロッパでは歴史的猛暑だったという。フランスでは猛暑のおかげでブドウが何百年かぶりにすばらしい出来ばえだとか・・・・。ワイン専門店から来たダイレクトメールには「今年のボジョレヌーボーは最高の出来で・・・」なんて書いてあった。いづれにしても農作物というものは、いくら農業技術が進歩してもお天さんしだいというのは世界共通なのである。
今日は「敬老の日」世の中は3連休なんて人もいるらしく渋滞覚悟で出発したものの通いなれた国道一号線バイパスは意外にもガラ隙状態。買ったばかりの数枚のCDを聞きながら調子よく田圃へ向かった。道中車窓から眺める周辺の田圃はすでにところどころ稲刈りが終わっているところもある。例年この時期であればほとんどの田圃の稲刈りが終了しているものだが予想どうり今年は10日から2週間ほど遅れているのが見て取れる。松下くんの田圃が見えてきた。街道から屋敷林に向かう一本道の左右は山田錦と羽二重もちの田圃、ひと目見た瞬間、「いい姿に育ったねー」と声をかけた。これはお世辞ではなく本当にそう思ったからだった。前回訪問した時より葉色といい丈といい姿形がいい感じなのである。松下くんは実験栽培している稲のはざかけをしている最中だった。「おう!これなら文句なしだな!ようやく追いついたョ!」と日焼けした笑顔で迎えてくれた。予想通りこの9月の好天で遅れていた生長がいっきに追いついたという。しかしそのおかげで早生、中生、晩生の生長が団子状態なってとしまい収穫期が短い期間に集中してしまいそうだという。「今年の稲刈りはきつくなりそうだよー!」と珍しくやや弱気面。とはいいながらも一時はどうなるものかと心配しっぱなしの15年産もなんとか格好がつくことがほぼ確実となってここ数日は毎夜、月見と洒落こんで田圃で一杯やってるそうなのだ。
さて当店が栽培依頼しているヒノヒカリ生長具合がどうかというと、こちらもまたいい姿に生長していた。序盤で低温と日照不足だったため分けつが進まなかったことで収量こそ当初予定していた一反あたり7俵は無理そうだがその分品質はかなり良いようだ。稲穂の一部からひとつまみして米粒を見てみた。腹白、背白、胴割れなど皆無で、今年は皮肉なことに高温障害の「コ」の字も見受けられなかった。高温障害対策で「今日も35℃明日も・・・・」と空を見上げてはあれこれ悩むのもツライが「今日も曇り明日も・・・・」なんて曇り空を恨めしく眺めて悩むのも勘弁してほしい。それにしても稲は強い。この強さがあったればこそ人類はこの植物をパートナーとして選んだのだろう。「パートナーを信頼しろよな」と傍らの稲から声が聞こえたような気がした。
帰り道少し遠回りして知り合いの米生産者や野菜生産者に会いに広大な水田地帯をまっすぐ進んだ。
車のCDチェンジャーは奄美地方出身という女性ヴォーカルのCDを自動でチョイスした。日頃ジャズかクラシックばかりの小生が珍しくJーPOPなるジャンルの楽曲のCDを買ってみた。そのCDの何曲目かに美しいメロディとともに心に響く歌詞に暫し聞き入ってしまった。その曲の作者の意図するところは知る由もないが、黄金に実る一面の田圃の中を走りながら聞くこの歌の一説は尽きることなく受け継がれてきた生命の賛歌に聞こえたのである。地球に生命が誕生して約35億年。誰もそのすべてを見知った者はいないけれど、途切れることなく続いてきた生命の生と死を思う時、風に吹かれながら黄金の原にいる自分という存在の偶然と自らもその生命の道程の一握を担うことができたことに感謝せずにはいられない気持ちになった。
●稲刈り体験会のごあんない
「松下×安米プロジェクト」の稲刈り体験会が来る10月12日(日)に決定しました!今回の稲刈りは6月8日に行われた田植え体験会で田植えした滋賀羽二重もちの稲刈りです。作業は鎌による稲刈り、はざかけなど、すべて手作業にて行います。収穫後には日をあらためて餅つきをして腹いっぱい食おうという企画です。ご興味ある方はぜひともご参加いただきますようよろしくお願い致します。
【日時】
10月12日(日)13:00〜16:00(雨天は中止)
【参加申し込み】
10月11日(土)までに代表者の氏名、住所、電話番号、参加人数をEメール、電話、ファックス、店頭等でお申し込みください。(担当長坂)
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