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4月25日号 この風味を作るものは何か?の巻

 2004年このコンテンツでは「この風味を作るもの」をテーマにしてレポートしようと思います。以前から松下くんの米には独特の風味があると書いてきたとおり、いわゆるエリート米にはない風味をもっています。2〜3年前までのその風味は野趣としか表現できないようなものでしたが、近年その単なる野趣はより洗練された野趣へと変貌しつつあるように思います。

最近、その野趣なる風味は松下くんの米以外にも出会えるようになりました。当店が扱っている他の産地お米の中にもまだ数は少ないものの、それに類する風味を持っているお米が存在するのです。偶然にもこれらのお米の共通点はいづれも有機農法やそれに類する栽培を行っている田圃のお米なのです。以前、このコンテンツの2002年の最後にもこんなことを書いたことがあります。とあるコーヒー専門家が語ったという本からの一説です。「あるコーヒーは栽培地の周辺にある森の匂いをまとっている。つまり、その根が吸い込んだ水の味、その木の近くになっていた果実の香り・・・コーヒーは、それを味わう人を、そのコーヒーが育った土地へ連れて行ってくれる・・・」僕が感じている野趣なる風味とはこれなのではないだろうか?と思ったのです。菌類から微生物、そして昆虫から爬虫類、鳥類に至る食物連鎖により形成される緻密な生態系が作る味。「生態系が作る風味」とでも表現できそうなのです。その環境を形成するために有利な条件とは有機農法やそれに類する栽培を行っている田圃の環境ではないだろうかと思っているのです。

では、その環境から生まれる風味の正体とは何か?僕はその答えのひとつとして例えて云うなら歪(ノイズ)みたいなものではないかと考えています。こう思ったのは、あるオーディオ専門店でアナログレコードの上質の音に出会ったことからです。店主のH氏が云った「レコード盤にしかない音、CDには入っていない音があるんですね」の言葉からだ。デジタル化された音には人には聞こえない2万ヘルツ以上の音が入っていなかったり必要のないと思われる音を歪(ノイズ)として排除している。しかしそもそも音に聞こえる聞こえない、歪か歪でないかの境はないはずである。今まで一種の歪(ノイズ)として片付けられていた部分こそ、じつは音の本質そのものであり生きいきとした実体として感じられる重要な要素だったのではないかと考えたのである。これをお米の味に置き換えるとそれこそが風味の正体なのではないだろうか?と考えたわけです。今まで歪(ノイズ)として洗練?効率化?という名のもとに片付けられてきた風味。田圃に住む菌類や旋回するツバメが起因する風味の数々。デジタルサウンドのような化学肥料で設計された味づくりにはない複雑な歪(ノイズ)交じりの風味を・・・。太古から受け継がれた有機農法という云わばアナログ農業ならではの風味を。歪(ノイズ)こそ、その正体なのではないかと。

誤解を恐れず云うが僕はけっして農薬や化学肥料を否定してはいない。これについては松下くんも同じ意見だ。ただし僕らがこの島国で百年、千年という時間軸で自立した稲作を続けようと思った時に自家調達できる有機物からなる肥料と薬に頼らない稲作のほうが収量こそ少ないものの永続性があるという点で少し有利かなと思っているからチョイスしているだけなのである。またその方法から生み出される米の味の方が化学肥料で設計された米の味よりも趣があると思っているからだ。その趣こそ歪(ノイズ)なのである。これからこのコンテンツでは「野趣なる風味」その正体を探るきっかけを作ってくれたアナログレコードに敬意を表してこの風味を作るもの達に愛しさ込めて歪=NOISY(ノイジー)と呼ぶことにする。


袋詰め


かな裁き

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肥料

今回のNOISY(ノイジー)
「肥料」である。あったかご飯にふりかけたい美味しいそうな香りを放つ松下くん独自の肥料である。 原料は米糠と魚粕に研究に研究を重ねて作った複合菌類によって発酵させたものである。今年は4月の気温が例年より高いため発酵スピードが早く、おかげで仕事がよく進むらしい。一反あたり約120〜130キロくらい田植え前のこの時期に撒くのである。寒冷な地方なら秋に行う作業であるが気温の高い静岡ならこの時期で充分に間に合う。田圃に撒かれた肥料は土中の細菌類とあいまってさらに発酵分解を始め栄養たっぷりのスープをこしらえて田植えの
「肥料」である。あったかご飯にふりかけたい美味しいそうな香りを放つ松下くん独自の肥料である。 原料は米糠と魚粕に研究に研究を重ねて作った複合菌類によって発酵させたものである。今年は4月の気温が例年より高いため発酵スピードが早く、おかげで仕事がよく進むらしい。一反あたり約120〜130キロくらい田植え前のこの時期に撒くのである。寒冷な地方なら秋に行う作業であるが気温の高い静岡ならこの時期で充分に間に合う。田圃に撒かれた肥料は土中の細菌類とあいまってさらに発酵分解を始め栄養たっぷりのスープをこしらえて田植えの
2004年01月27日 [ 3791hit ]
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