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基礎の「き」

 

春の田んぼ通い。
じつは個人的に一年でいちばん好きな時期。

 

前年の稲の刈り株が白化している。
その周りで春草がひたひたとうごめいている。
世代交代、輪廻転生・・・。
終えた命が次の命へ変化していくそれを垣間見ることができるから。
そこに萌える。

 

そんな春の田んぼに5ヶ月ぶりにエンジン音が響く。
田んぼの土木工事。
もぐらの穴をふさぐ。
それからこんなマシン(画像)で畦を作り直す。
水漏れするような畦では有機栽培はおろか稲作そのものができない。
この仕事は田んぼ仕事の中の基礎の「き」。
この後、田んぼを極限までに平らにする作業が待っている。

 

水漏れしない畦、平らな田んぼ。
それができてはじめて水を張る。
凸凹がないから水深が浅くとも田んぼに島はできない。
完璧な水マルチ状態をつくる。
これで好気性の草は抑えられる。
植物の発芽条件とは水と空気と温度。
その中のひとつでも欠ければ種はあっても発芽はしない。

 

― 草の生えた田んぼをよく見ればすぐ気づくさ・・・島のところから草は生えてるから・・・。

 

今から12年前、畦傍で松下が教えてくれたことを思い出す。
田んぼの基礎を雑にするから草が生える。
稲以外の植物の進入を防ぐために田んぼという特殊環境を作った。
科学的な農薬が生まれるはるか前から成功と失敗を繰り返しながらこの特殊環境は磨かれた。
現代はそれを極限までに高められるだけの力と技、つまりエネルギーとマシンを現代人は手にした。
松下はただそれを忠実に再現しているだけ。
有機栽培というよりもきちんと稲作したら有機栽培になりました。ただそれだけのこと。

 

― 有機は手間が掛かるんでしょ〜。

 

多くの人はよくこんな風に言う。
けれど栽培期間中、皆が思うほどの手間は掛からない。
むしろその期間に手間を掛けないために田んぼに入り直接関わることのできる今、命一杯手間をかける。

 

― 田植えしちゃったらあとは稲任せだから・・・。

 

と、きっと今年も言うだろう。あと数ヶ月先に。
 

 

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2012年04月05日 [ 5486hit ]
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