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3日目 走りっぷり カミアカリの田圃へツーリング。

  勉強会も無事終わった翌日は、藤枝松下さんの田圃訪問。カミアカリ生産者やメンバーが栽培中のカミアカリを見に行くことが恒例となっている。

 今回はその恒例行事にゲスト講師の仁瓶さんも加わった。仁瓶さんが加わるとなれば、当然移動手段は自転車。仁瓶さんは日本を代表するブーランジェ(パン職人)であると同時に、サイクリストとしての活動も並ではなく、「山岳サイクリング研究会」や「ヨコハマサイクリングクラブ」などに縁があることからも、その筋においても超一流なのです。
 じつは今回の勉強会では企画段階からこのプランがあり、本編同様に楽しみにしていた企画でした。
 
 仁瓶さんをはじめ、昨晩深夜まで飲んでいた自転車好きのメンバーは、仁瓶さん宿泊のホテルに8:00集合。すでに数人集まっていて準備体操や自転車整備に余念がない。タフなヤツばかりなのである。
 そんな中、輪行バッグを抱えて仁瓶さんが現れた。渋い色合いのT社製のクロモリ700C、
皮サドルにフラットバーハンドル。よく乗り込んでいる自転車はそれだけでオーラがある。すでに気温は30度、仁瓶さんと僕ら4人は東海道を西に向かった。
 
 古代と現代のハイウェイを同時に見ることができる宇津ノ谷峠、明治時代に作られたトンネルなどクラシックルートをトレースしながら岡部宿「柏屋」で最初の休憩。抹茶アイスと冷たい煎茶で火照った体を冷ます。そしてまた走る。
 僕が藤枝へ自転車通いする山沿いの静かな道や、田んぼ中のローカル道行くと、あっという間に松下さんの田んぼ。すでに四輪車で来た数名が炎天下、畔端で松下さんと歓談中だった。
 
 松下さんの案内で、早速今年栽培している稲を見て回る。カミアカリはもちろん、ヒノヒカリ、あさひの夢などだ。
 ここにいるメンバーは皆カミアカリファンであるから、しだいに松下さんの話しっぷりにも熱が入る。そうなると話しは、この土地の土壌と微生物のことにならざるを得ない。  
 トロトロ状の田んぼの土を手に取り、なぜこの感触の土が生まれるのか・・・。そして土壌を構成する目に見えない世界、もともとここにいる常在菌や酵母菌、乳酸菌などが複雑に絡み合いながら作り出す「草の生えにくい田んぼ」のメカニズムについてディープな世界を語っていく。
 
 それを少し離れたところで聞いていた僕は、ここ数日もこれに似た話しを聞いたことに気づいた。仁瓶さんがパンを作りながら語ったパン生地の醗酵の話しとシンクロするのだった。
 それに気づいているのは当然僕だけでなく、そこにいた皆が感じていた。だから、面白いのだ。でなければこの炎天下、いい大人が畔端でこんな長時間、話しを聞かないだろう。
 
 仁瓶さんがメモを取りながら感心した様子でその話を聞いていると、松下さんがこんな風なことを語り始めた。
 
 「仁瓶さんが昨日おっしゃっていたでしょ・・・。『完成品をイメージし、仕込みの方法を逆算するのがパン職人の仕事です・・・』と、それと同じで、僕はご飯になった時のことをイメージして栽培してるんです・・・。まあどこをどうするかなんて具体的なことじゃなくて、なんとなくこうしたほうがいいのかな・・・なんて感じですけどね」。
 
 仁瓶さんは別れ際、松下さんにこんなことを云った。
「パン業界に君みたいな人がもっといると面白いのにな・・・」
 2人は、パンと米の違いこそあれ、どちらも目に見えない微生物と仕事をしている職人に違いない。同時に彼ら職人たちの仕事は、「分かち合うもの=糧」の番人でもあることだ。炎天下これが判った時、今回の勉強会が成功したことを確信したのだった。
 
 帰りは追い風、行きとは違う最短距離を走った。寝不足の割には足が良く回っていた。と思った直後、最後の登りで足が回らなくなった。その横を美しいペダリングで追い越していく仁瓶さん。引き締まった体は年齢を感じさせない。その姿を見た時、「俺もこんな風に生きたい・・・」と、その走りっぷりから感じ取った。その刹那、あこがれのT社製クロモリ700Cは、「僕にはまだ早い」とも悟ったのだった。
 
仁瓶利夫さん、3日間に渡り素晴らしい時間をありがとうございました。
2010年07月23日 [ 3094hit ]
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