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2月の雨

 寒い雨、こんな2月の雨は受験の頃を思い出します。


 このまま静岡に居て米屋になることが嫌で進学することを理由に、ここから脱出したかった。正直言えばそれが本音だった。今思えば、なんと贅沢な選択だったことか・・・。
 この言い訳を理解し援助してくれた両親に、今はとても感謝しています。
 「いつかは帰って店を継ぐ」。そういう気持ちは強かったが、あの頃はとにかくこの街を出たかった。
 新幹線に乗って東へ移動する車窓から、竜爪山とその周辺へ伸びる稜線を見た時、「あ〜やっと脱出できた・・・」という思いと、それと同じ分量の「故郷を捨てる」という思いが交錯した。それくらい、あのスカイラインに退屈していた自分と、その自分が案外センチなんだと初めて気付いた瞬間だった。
 ほとんど準備もせず挑戦したその年の受験は、補欠通知一通の成果以外、すべて惨敗だった。なんとかこの街を出て外の世界に触れ、20歳代半ばで帰ってきた時には、「ここにすべてがある・・・」。なんて生意気を言うヤツになっていた。
 今、寝起きしている部屋には、あの退屈極まりなかったはずのスカイラインが切り取られるように見える横長の窓がある。40も半ば過ぎた今の僕には、そのスカイラインが愛おしく見えるようになっている。

2010年02月11日 [ 4104hit ]
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