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10月21日号 松下×安米ヒノヒカリは今年でラスト。
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20年産もやっぱり2等。見た目判断では毎年おなじみのこと。けっして美人じゃない。しかしいっこうに構わない。そういうことがどうでもいいと感じるくらいヤツの米には力がある。標準化とは無縁の強烈な何かが。

 まずは白米を炊いてみた。「甘い!」口に入れた瞬間に感じた。今年、平成20年産の松下の米に共通するものをあえて表現すると、「わかりやすさ・・・」かもしれない。誰にでもわかりやすいしっかりとした味、食感、それに加えいつもの強い香り。アンコメにとっては最も手抜きな炊き方、エントリーモデルと呼ばれるような最もリーズナブルなIH式電気炊飯器で炊いてもこんな印象だった。
毎日の昼、スタッフが昼食を兼ねて試食をするこの最も基本となる試食の時に「松下×安米ヒノヒカリ」はサラッとこんな印象をアンコメスタッフ全員に与えたのだった。

 じつは同時に玄米でも炊いていた。白飯と同じ作法でテイスティングする。まず香りを取る。つぎに見る。そして少量口に入れる。噛まずに口に広がる香りと、単純に舌に乗った時の味を聞く。ようやく噛む。すると口に香りや味が織り成す風味が広がるのがわかる。そして舌に感じるタッチを確かめながら鼻に抜ける香りを感じる。

 そうやって食す松下の米、とくに玄米で食べるその風味は独特である。10年前、初めて彼の米を口にした時には、それをノイズとしか感じなかったことを今でも恥ずかしく思う。
その当時の彼の米は、全くと言っていいほどに体裁の整っていなかった。言葉にすると「乱暴」、「粗野」、「未開」、およそ「洗練」とは無縁の米、その当時の私の舌には独りよがりで利己的な感じさえした。いやそのとおりだった。
しかしその独りよがりな米の奥に、何だろう?今までに感じたことのない風味を見たのだ。それがノイズだったのだ。
後にそのノイズの正体が言わば「飼いならされていない」植物が持つ風味だと解った時、その風味をこう形容した。

 「野趣

 野にあったはずのイネ科の植物を人類がパートナーとして選び、それを栽培という革命的な方法で家畜化していく過程で失われていったモノ。ことに化学肥料が農の中心になったここ数十年で完全に消えてしまったモノ。それらを例えて「野趣」と表現するなら、稲が人のために生きるのではなく、稲が稲のために生き、その生命の駆け引きの中で、自然に身についてしまうモノ。それを人間が偶然に食べた時に感じた風味。それを私は「野趣」と捉えたのだ。

 次に考えたのが、その野趣はそのままに、独りよがりでなく多くの人に自然に感じてもらえるようにするために何が必要か?そのためには洗練が必要だった。そこで以前から感じていた稲作のセオリーを再度見直すことを松下に提案したのだった。
「登熟期間は夜温の下がる9月以降に・・・」そうやって早生品種から中生品種「ヒノヒカリ」を中心に据えた栽培を松下に依頼したのだ。
作為を持って、作為とは真逆に見える「野趣」を仕込むという、どこか矛盾しているような方法でこの米、「松下×安米プロジェクト米ヒノヒカリ」は2002年最初の秋を迎えたのだった。
作戦は成功だった。誰にでも受け入れられやすい「やさしい食感」。その中にスパイスとして、あの「野趣」がある。そういう米がプロジェクト2年目にして早くも表現できたことに興奮した。
それ以降、小さな修正を繰り返しながら精度を上げることに努めた。ある年、理詰めで攻め過ぎたことで基本を見失いそうにもなったこともあった。それでも毎年毎年新しい課題が生まれそれを克服してきた。

 そしてプロジェクトが始まってから8年。2008年平成20年産が収穫できた今、一つの区切りをつけようと思っている。これまで「ヒノヒカリ」、「あさひの夢」で培ったノウハウで、2009年から新しい品種に挑戦しようと目論んでいる。
品種名はまだ公開できないが、じつはここ2年ほど実験栽培をし、その実力を確かめていたのだ。7月に行った水棲生物観察会では、シークレット米として参加者に試食してもらい、たいへん好評だった。そんな結果から2009年平成21年産からヒノヒカリに変わり、この新しい品種を主力品種に据え、新たなスタートを切ることにした。
そんなわけで、ヒノヒカリは今年でラスト。この8年の集大成と言うと大げさですが、それに相応しい仕上がりです。松下×安米プロジェクト米ファンの皆さん!ぜひご堪能してください。今年もやさしい風味の中に、あの「野趣」がしっかりありますよ。

昼は毎日こんな風にしてご飯の味を聞く。今日は「松下×安米ヒノヒカリ」。届いたばかりのその風味風合いを白米、玄米で確認する。事務所にある円卓で私を含む5人囲んで「ああだ・・・こうだ・・・」と言いながら試食していく。いつの間にか新人スタッフ2人もすっかり味を取れるようになり最近では生意気を言うまでになった。毎日こうやって食べて会話することで、味や香りが織り成す風味風合い、その抽象的な世界観を脳みその中の「ゴハン脳」というフォルダーに感じたままにどんどん放り込む。それは時として文字という光に変換されたものや、言昼は毎日こんな風にしてご飯の味を聞く。今日は「松下×安米ヒノヒカリ」。届いたばかりのその風味風合いを白米、玄米で確認する。事務所にある円卓で私を含む5人囲んで「ああだ・・・こうだ・・・」と言いながら試食していく。いつの間にか新人スタッフ2人もすっかり味を取れるようになり最近では生意気を言うまでになった。毎日こうやって食べて会話することで、味や香りが織り成す風味風合い、その抽象的な世界観を脳みその中の「ゴハン脳」というフォルダーに感じたままにどんどん放り込む。それは時として文字という光に変換されたものや、言

2008年01月28日 [ 3923hit ]
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